悪役令嬢ですが、ヒロインに助けを求められています!

しーしび

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プリンシパさんは最初の方から順に説明をして下さいました。

「登校初日です…私は少し浮かれていました。貴族社会はすごくキラキラしていて夢みたいで…ボケッとしてたら…門で殿下にぶつかったのです」
「まぁ! 」

彼女の言う様に『ヒロイン』はこの世界の主役なのかもしれません。
貴族になってすぐ王太子と出会うだなんて、運が良すぎです。
私なんて、この4年間に殿下と遭遇したのは数えれるぐらいです。
それにそんな早くに殿下とは出会っていたのですね…

「ですけど…女学校の門と殿方の学校の門は別ですわよ? 」

私は首を傾げました。
殿下が女学校の方の門にいるだなんてありえませんし…

「っ間違えたんですよ! 」

プリンシパさんは自分を戒める様に膝を叩きました。
結構な勢いでしたけど大丈夫ですか?

あ、やっぱり、痛かったのですね。
プリンシパさんは叩いたところを痛そうに摩ってます。

「その時は乙女ゲームの事なんて記憶がなくてっ」

痛みに耐えたプリンシパさんは勢いよく顔を上げました。
それぐらいの痛みでよかったです。

「殿下の顔を見た瞬間にブワッてきて、ブワッときたらあのキラキラした顔面が目の前にあって、フリーズしました……」

プリンシパさんはその時を思い出したのか身震いをしました。
運命の出会いの一シーンのはずなのに幽霊にでも出会ったかの様に顔は青ざめています。

「一瞬で自分があの乙女ゲームの世界に転生したって…、2次元で楽しんでいた世界が目の前にあって…しかも溺愛系ヒーロー…‥‥…現実では絶対に関わりたくない。一途さが恐い…」

今まで転生したのには気付いていたのに、乙女ゲームには気づけなかった様です。
それにしても、彼女は恋愛に何かトラウマでもあるのでしょうか?
先程、一途じゃないのが嫌と言いませんでした?

一応、殿下はこの国きっての美形ですよ。
男性らしいのに中性的で美しい容姿は性別を問わず虜にしてしまいます。
その点はプリンシパさんに似ていますね。
殿下は天空の神に加護を受けていて、その神の容姿にそっくりの白銀の髪と紫の瞳を持ち、高い鼻筋に形のいい唇に強さと優しさをたたえた目は神々しさの塊の様です。
背も高く、美しく長い肢体が洗礼された動きを見せるたびに彼をより優美な存在だと認めざるをえません。

えぇ、そうですよ。
私だって殿下の容姿に心をときめかせた一人です。
でもそれを認めたらダメなのです。
常に冷静でいるには感情を抑えないと。
だから、それにずっと気づかないフリをしていました。

……だから余計に、殿下の様に誰もを虜にする美しい容姿のプリンシパさんに嫉妬したのかもしれません。
それに殿下は婚約者はいませんしね。
私は有力候補と噂された程度に過ぎませんもの──

「固まった私に笑いかけられて、余計にゾッとしました。あのゲームの光景が全て私に降りかかってくるのかと恐ろしくて……。鳥肌ものです…」

私なんて笑いかけられたのは愛想笑い程度です。
社交辞令の挨拶に、取ってつけた笑顔、愛想笑いさえ出来ない私が言うことではありませんよね。
でも緊張で笑顔が強張って余計に笑えないのです。

「『大丈夫かい? 』って手を差し伸べられたら、もうゲームの画像と全く同じで、恐くて腰が抜けました…」

甘さで腰が抜けたの間違いではないのですか?
だって、あの顔で微笑まれたら──
貴方に向けられた笑顔を見ただけで私は──

「でも逃げなきゃって思って、そのまま『申し訳ありませんでした』って叫びながら這いずりながら逃げました」

それは『ヒロイン』と言うよりも、令嬢…女性としてどうなのでしょうか?
殿下に対しては謝ったのでギリギリセーフ、と言うことにしておきます。
新学年初日の朝に不審者が門の前で四つん這いでいたって聞きましたけど、貴方だったのですね。

「正直、尿意さえも感じていたので………。危なかったです」

そんな事を真顔で話さないでほしいです。
反応に困ります。聞きたくないですし、想像させないで下さい。
悲惨どころの騒ぎではありませんよ。
とにかく、大事に至らなくてよかったです。

「あのまま医務室に運ばれていたら、完全に殿下のルートが始まりますからね。先生が不在で殿下が治療をしてくれてーーー」

ほっとした様にピリンシパさんは言いますけど、医務室に誰もいないだなんてありえます?
殿下だけでなく貴族の子息令嬢が通っている学校ですよ?
そんな不手際許されるとは思いませんけど。
でも、安心しているプリンシパさんにそれを言うと焦り出しそうなのでやめておきます。

「そこでわちゃわちゃなってアクシデントで殿下と一緒に倒れちゃうなんてイベントが起こるのです。あぁ、ならなくてよかった…。それで慌てて恥じらいながら逃げるヒロインに殿下が興味を持つってのが始まりですからね。セーフです」

プリンシパさんは胸の前で拳を握って自慢げに話していますけど、セーフですか?
貴方、慌てて逃げたのではないでしたっけ?
尿意を我慢しながら──って、恥じらう様に見えなくないと思いますけど?

「授業中は令嬢ばかりだから安心でした。でも、放課後興味本位で図書館に向かってしまったのです。そこは宰相の子息であるミケールさんとの出会いの場所なのですが…」
「まさか、出会いたくないのにわざわざ出会いに向かったのですか? 」
「…はい」

怒られている子供の様に小さな声でプリンシパさんは返事をしました。
少し軽率すぎませんか?
私のそんな思いが分かったのか、彼女は首を竦めました。

「だって、本当にゲームの世界か確かめたくて…」

上目遣いで私を見てくるのですが、その表情が捨てられた子犬の様で、それ以上彼女を責める気になりませんでした。
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