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私はヴェロニカ・ディ・オグリオゥスと申します。
この国の公爵家の娘として生まれ、完璧な淑女になる為幼い頃から教育されました。
それも、私がこの国の王太子、ステファノ・ディオ・デヴィネのお妃候補の筆頭だからです。
「常に完璧でないといけない」
父からよく言われた言葉です。
確かに貴族たる者隙を見せてはいけない。
これは常識ですね。
その為か、私は家の名と教育のおかげで、自分で言うのは何ですが、同じ年頃の方からも一目置かれております。
まぁ、距離を置かれていたのは、幼い頃から表情は乏しい事が関わっている様ですが…
それでも、13歳になり女学校に入学してからもその状況は変わりませんでした。
最終学年目前の3年が終わる頃、つまり私が15歳の時には王太子妃は私に確定したと言う話が持ち上がる様になりました。
王妃様のお茶会に私が頻繁に呼ばれる様になったのです。
ですが、私はステファノ王子とは社交辞令程度の会話しかしたことがありませんし、王妃様は親切な方ですが特別親しいわけではないので、特に実感はありません。
それでも周りはそう言って私を持ち上げて下さるので、ありがたいな思いながら過ごしてきました。
私も自分が王太子妃になるのだと心のどかで確信していたのかもしれません…
「お願いぃいいい! もう嫌だぁああ! 」
私の足元でずっと叫び続けているこの女性は、ラウラ・プリンシパさん。
プリンシパ伯爵家の隠し子らしく、最終学年の4年の初めに入学してきた平民上がりの令嬢です。
柔らかそうなハニーピンクの髪をなびかせ、色白の肌にほんのりと赤みを帯びた頬とぷっくりとした唇、愛らしく丸い目や魅力的な水色の瞳、そして華奢な体つき、全てが愛くるしさの象徴の様な子でした。
それに笑顔の絶えない彼女に男性だけでなく女性までもが虜になりそうで、私も温かい気持ちで彼女を眺めていました。
また、貴族社会にまだ慣れない様子が、庇護欲をそそられ瞬く間に注目の人物になったのです。
そんな彼女の魅力は万能な様で、どんな方も虜にしてしまっています。
噂で聞くだけですが、宰相、騎士団長、魔道士長や国内屈指の商家の御子息など、身分だけでなく、容姿や才能でも評判のいい殿方も彼女に夢中の様です。
女学校は殿方が騎士や文官などを目指して通われる学校も同じ敷地内に併設されいますので、殿方との交流があってもおかしくありません。
おかしくはないのですが、そんな頻繁に噂を耳にする程の機会はないはずなのです。
まるで、あえて会っているかの様に思えます。
彼女については様々な噂を耳にしますが、いつしかその中に殿下の名前も入る様になりました。
先ほども申した通り、私は殿下の妻になることは決められた未来だと信じておりました。
そこに恋愛感情などなくても揺るがないのだと、謙遜しながらも私は確定しているのだと思い込んでいたのです。
そんな私が、殿下とプリンシパさんの噂を聞いて何も思わずにはいられません。
殿下だけでなく様々な殿方との噂を撒き散らしている彼女を嫌悪しておりました。
そして、殿下との耳にする様になって2ヶ月、私は完全にプリンシパさんを嫌いになっていました。
何よりも、この目で何度か殿方と逢引している姿を目にしたのです。
殿下もこの方の前では──
とにかく、今では彼女を下品な方だと軽蔑しています。
どうにかして懲らしめてやろうかとい気持ちが沸き起こりつつあったのです。
なのに、プリンシパさんは私に助けを求めてきます。
まるで生まれたての小鹿の様に足をガクガクと震わして驚愕の表情を浮かべ、あの愛らしさの微塵も感じられない必死すぎる姿です。
この私の嫌悪の感情から彼女を振り払ってもいいのですが、この必死な形相の方があの庇護欲の塊の生き物だと思うと、ここで去ってしまうのは些か良心が痛むのです。
本当にどうすればいいのか私は混乱してしまいました。
憎らしい気持ちと哀れむ気持ちが入り混ざりながら、必死が恐いとも思い整理がつきません。
でもプリンシパさんから流れ落ちる液体は止まりそうにないので、どうにかこれを止めて差し上げるべきかと思ってしまいました。
「…どうしたのですか? 」
そう思った私はつい、そんな言葉を彼女にかけてしまいました。
「ヴェロニカざま………、う、うわぁーーーーん! 」
途端に彼女は更に表情を更に歪めて泣き始めました。
がっしりと私自身を掴んで泣き喚きます。
やっぱり恐いです。
いくら人気の少ない廊下といえど、人目がないとは言えません。
チラリとこちらを伺う人間がいるのは感じられます。
「とにかく座れるところへ…」
私は何となプリンシパさんを宥めながら、近くのベンチに誘導します。
「うぅ…やさじぃ……、ヴェロニカざまがいい…私、攻略するならあなたがいい……安心ずるよぉ………」
嗚咽しながらプリンシパさんは何とか落ち着きを取り戻し始めました。
その頃には私の服についていた彼女から出てきた液体はガビガビに乾いています。
ドレスの裾にもシワが沢山です。
これは洗ってもらわないとですね。
ハンカチもお渡ししていますが、それは返さなくて結構です。
え?家宝にする?
それは重すぎるのでやめて下さい。
「あの、それで何を助けて欲しいと?」
私は状況を整理しようと彼女に問いかけました。
プリンシパさんはおずおずと話し始めてくれました。
この国の公爵家の娘として生まれ、完璧な淑女になる為幼い頃から教育されました。
それも、私がこの国の王太子、ステファノ・ディオ・デヴィネのお妃候補の筆頭だからです。
「常に完璧でないといけない」
父からよく言われた言葉です。
確かに貴族たる者隙を見せてはいけない。
これは常識ですね。
その為か、私は家の名と教育のおかげで、自分で言うのは何ですが、同じ年頃の方からも一目置かれております。
まぁ、距離を置かれていたのは、幼い頃から表情は乏しい事が関わっている様ですが…
それでも、13歳になり女学校に入学してからもその状況は変わりませんでした。
最終学年目前の3年が終わる頃、つまり私が15歳の時には王太子妃は私に確定したと言う話が持ち上がる様になりました。
王妃様のお茶会に私が頻繁に呼ばれる様になったのです。
ですが、私はステファノ王子とは社交辞令程度の会話しかしたことがありませんし、王妃様は親切な方ですが特別親しいわけではないので、特に実感はありません。
それでも周りはそう言って私を持ち上げて下さるので、ありがたいな思いながら過ごしてきました。
私も自分が王太子妃になるのだと心のどかで確信していたのかもしれません…
「お願いぃいいい! もう嫌だぁああ! 」
私の足元でずっと叫び続けているこの女性は、ラウラ・プリンシパさん。
プリンシパ伯爵家の隠し子らしく、最終学年の4年の初めに入学してきた平民上がりの令嬢です。
柔らかそうなハニーピンクの髪をなびかせ、色白の肌にほんのりと赤みを帯びた頬とぷっくりとした唇、愛らしく丸い目や魅力的な水色の瞳、そして華奢な体つき、全てが愛くるしさの象徴の様な子でした。
それに笑顔の絶えない彼女に男性だけでなく女性までもが虜になりそうで、私も温かい気持ちで彼女を眺めていました。
また、貴族社会にまだ慣れない様子が、庇護欲をそそられ瞬く間に注目の人物になったのです。
そんな彼女の魅力は万能な様で、どんな方も虜にしてしまっています。
噂で聞くだけですが、宰相、騎士団長、魔道士長や国内屈指の商家の御子息など、身分だけでなく、容姿や才能でも評判のいい殿方も彼女に夢中の様です。
女学校は殿方が騎士や文官などを目指して通われる学校も同じ敷地内に併設されいますので、殿方との交流があってもおかしくありません。
おかしくはないのですが、そんな頻繁に噂を耳にする程の機会はないはずなのです。
まるで、あえて会っているかの様に思えます。
彼女については様々な噂を耳にしますが、いつしかその中に殿下の名前も入る様になりました。
先ほども申した通り、私は殿下の妻になることは決められた未来だと信じておりました。
そこに恋愛感情などなくても揺るがないのだと、謙遜しながらも私は確定しているのだと思い込んでいたのです。
そんな私が、殿下とプリンシパさんの噂を聞いて何も思わずにはいられません。
殿下だけでなく様々な殿方との噂を撒き散らしている彼女を嫌悪しておりました。
そして、殿下との耳にする様になって2ヶ月、私は完全にプリンシパさんを嫌いになっていました。
何よりも、この目で何度か殿方と逢引している姿を目にしたのです。
殿下もこの方の前では──
とにかく、今では彼女を下品な方だと軽蔑しています。
どうにかして懲らしめてやろうかとい気持ちが沸き起こりつつあったのです。
なのに、プリンシパさんは私に助けを求めてきます。
まるで生まれたての小鹿の様に足をガクガクと震わして驚愕の表情を浮かべ、あの愛らしさの微塵も感じられない必死すぎる姿です。
この私の嫌悪の感情から彼女を振り払ってもいいのですが、この必死な形相の方があの庇護欲の塊の生き物だと思うと、ここで去ってしまうのは些か良心が痛むのです。
本当にどうすればいいのか私は混乱してしまいました。
憎らしい気持ちと哀れむ気持ちが入り混ざりながら、必死が恐いとも思い整理がつきません。
でもプリンシパさんから流れ落ちる液体は止まりそうにないので、どうにかこれを止めて差し上げるべきかと思ってしまいました。
「…どうしたのですか? 」
そう思った私はつい、そんな言葉を彼女にかけてしまいました。
「ヴェロニカざま………、う、うわぁーーーーん! 」
途端に彼女は更に表情を更に歪めて泣き始めました。
がっしりと私自身を掴んで泣き喚きます。
やっぱり恐いです。
いくら人気の少ない廊下といえど、人目がないとは言えません。
チラリとこちらを伺う人間がいるのは感じられます。
「とにかく座れるところへ…」
私は何となプリンシパさんを宥めながら、近くのベンチに誘導します。
「うぅ…やさじぃ……、ヴェロニカざまがいい…私、攻略するならあなたがいい……安心ずるよぉ………」
嗚咽しながらプリンシパさんは何とか落ち着きを取り戻し始めました。
その頃には私の服についていた彼女から出てきた液体はガビガビに乾いています。
ドレスの裾にもシワが沢山です。
これは洗ってもらわないとですね。
ハンカチもお渡ししていますが、それは返さなくて結構です。
え?家宝にする?
それは重すぎるのでやめて下さい。
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