悪役令嬢ですが、ヒロインに助けを求められています!

しーしび

文字の大きさ
上 下
1 / 13

序章

しおりを挟む
「お、お願いしまずぅうう!!! たすげて…だすげてぐださいぃいい! 」

美しい煌めきを放つハニーピンクの髪が床に広がり、その少女は顔を床につきそうなほど下げて、何かを懇願しています。
体は小刻みに震えていました。

「お願いぃいいい! 私、本当に恋愛とかゲームとかどうでもいいぃからぁあああ」

少女は枯れそうな程、声を張り上げ号泣しているのですが、話が見えません。
鈴の音の様に美しいはずの彼女の声は、必死さで可愛げを失っていて同じ人の声とは思えませんでした。

「ヴェェエエ…うぇ…っロニカぁざまぁああああ! 」

少女は嗚咽しながら私の名前を叫ぶ為、私は反射的に渋い顔をしてしまいました。
貴族社会で生まれた以上、自分の名前を様々な所で囁かられるのは仕方ない事ですが、こんな呼ばれ方は初めてでしたので対処しきれません。

「わたし、何もしたくないぃいい! 何もしてないのに…怖いよぉおお! なんで、好感度が上がるのぉおお! 」

彼女は顔を上げて叫び続けます。
私はさらにギョッとして彼女を見ました。
彼女の話している内容も理解できませんが、涙やその他の液体でぐちゃぐちゃになっている顔は悲惨なものだったからです。
大きく美しい水色の瞳は、これでもかという程大きく開き切って、少ない白目は充血の域を超えそうなほど赤みを強くする一方です。
愛らしいぷっくりとした唇も、大きく開かれ下品と言うよりは必死に何かを吐き出そうとしている意思は見えるものの、歪んでしまっていて──、正直、恐かったです。

「恐いんでずぅうう! 攻略対象が、キラキラしすぎて、ベタベタしてきて、怖いよぉおお!! 」

恐いのは私です。
勢いそのまま彼女は縋る様に私のスカートにしがみついてきました。

「えっ、ちょっと…」

彼女から溢れ出ている液体が服についてしまうどうこうよりもその勢いの方が恐怖に思え、私は一歩下がりかけました。
が、このか細い体のどこにそんな力があるのかと言う程、彼女は力強く私のスカートを抱え込んで放そうとしないので、動けば私が倒れてしまいそうです。
私は完全に身動きの取れない状況になっていました。

「おねがぃいいいい! だずげてぇええ!! 」

いよいよ余裕が無くなったのか、彼女は身分が上の私への敬意を忘れています。
敬語を使わないから無礼だとは思いません。
ただ、彼女はそれだけ必死なのだと伝わってくるのみです。

どうしたものか…

私は頭を悩ませました。
最近、この少女に私は頭を悩まされていたのです。
少し嫌悪感が無かったとは言い切れません。
でも、この状況は一体どうなっているのでしょか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は天然

西楓
恋愛
死んだと思ったら乙女ゲームの悪役令嬢に転生⁉︎転生したがゲームの存在を知らず天然に振る舞う悪役令嬢に対し、ゲームだと知っているヒロインは…

痩せすぎ貧乳令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 とあるお屋敷へ呼ばれて行くと、そこには細い細い風に飛ばされそうなお嬢様がいた。 お嬢様の悩みは…。。。 さぁ、お嬢様。 私のゴッドハンドで世界を変えますよ? ********************** 転生侍女シリーズ第三弾。 『おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 『醜いと蔑まれている令嬢の侍女になりましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます』 の続編です。 続編ですが、これだけでも楽しんでいただけます。 前作も読んでいただけるともっと嬉しいです!

悪役令嬢に転生したようですが、前世の記憶が戻り意識がはっきりしたのでセオリー通りに行こうと思います

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に転生したのでとりあえずセオリー通り悪役ルートは回避する方向で。あとはなるようになれ、なお話。 ご都合主義の書きたいところだけ書き殴ったやつ。 小説家になろう様にも投稿しています。

乙女ゲームの断罪シーンの夢を見たのでとりあえず王子を平手打ちしたら夢じゃなかった

恋愛
気が付くとそこは知らないパーティー会場だった。 そこへ入場してきたのは"ビッターバター"王国の王子と、エスコートされた男爵令嬢。 ビッターバターという変な国名を聞いてここがゲームと同じ世界の夢だと気付く。 夢ならいいんじゃない?と王子の顔を平手打ちしようと思った令嬢のお話。  四話構成です。 ※ラテ令嬢の独り言がかなり多いです! お気に入り登録していただけると嬉しいです。 暇つぶしにでもなれば……! 思いつきと勢いで書いたものなので名前が適当&名無しなのでご了承下さい。 一度でもふっと笑ってもらえたら嬉しいです。

乙女ゲームの敵役の妹兼悪役令嬢に転生したので、今日もお兄様に媚を売ります。

下菊みこと
恋愛
自分だけ生き残ろうとしてた割にフラグクラッシャーになる子のお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

えっ、これってバッドエンドですか!?

黄昏くれの
恋愛
ここはプラッツェン王立学園。 卒業パーティというめでたい日に突然王子による婚約破棄が宣言される。 あれ、なんだかこれ見覚えがあるような。もしかしてオレ、乙女ゲームの攻略対象の一人になってる!? しかし悪役令嬢も後ろで庇われている少女もなんだが様子がおかしくて・・・? よくある転生、婚約破棄モノ、単発です。

悪役令嬢はモブ化した

F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。 しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す! 領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。 「……なんなのこれは。意味がわからないわ」 乙女ゲームのシナリオはこわい。 *注*誰にも前世の記憶はありません。 ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。 性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。 作者の趣味100%でダンジョンが出ました。

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

処理中です...