タイムパラドックス

kinmokusei

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シーズン銀河

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あれ、、、?


見慣れない天井にあたしは少し戸惑いながら起き上がる。


(ここどこ?)


見渡す限り黒一色。


家具も机も今寝ていたベッドも。


あたしはベッドから出て扉の方に行く。


しかし、扉には鍵がかけられているようで押しても引いても開かなかった。


そしてぼんやりした頭で何が起きたかを考える。


(そうだ、、、!)


あたし秋時に会ったんだ!


そして捕まって、、、。


みんなは大丈夫かな?


あたしはベッドの上に座り込み、考え込む。


すると。


ガチャリ。


扉の鍵が開けられた。


「アース!!久しぶりね?」


サターンだった。


「会えて嬉しい!また仲良くしましょうね?」


明るいサターンになんだか拍子抜けしてしまった。






「ね?アース?」


無邪気な笑顔に、あたしは一瞬かたまり、引きつった笑顔を返した。


すると、サターンは。


「なぁに?ずいぶん嫌そうねぇ?」


いきなり声色が変わった。


「えっ。いや、別にそう言うわけじゃなくて、、、。」


サターンの表情から笑顔が消えていく。


「じゃあまたあたしを封印する気なのかしら?ざけんじゃないわよ!!」


まさしく鬼の形相だった。


「せっかく助けてあげたのに!!あなたまたあたし以外に好きな人作ったみたいね?オータムはダメよ?あたしの人形なんだから!そしてアース?あなたもそう。歯向かうならオータムを殺すわよ?」


そう言ってまたコロッと表情が笑顔に変わった。


「あたしの言う通りにしていればいいのよ?ね?アース?」


あたしはサターンの態度を見て子供だと思った。


「返事は?」


「え、えぇ。分かったわ。」


あたしはそう答えるしかなかった。





「じゃあまた来るわね!アース!」


サターンが帰るのと同時に秋時がレンスの実を持って現れた。


「オータム?変なこと考えるんじゃないわよ!!」


サターンは本当にコロコロ表情が変わる。


「はっ!」


秋時はそう答えるが、サターンは笑いながら言う。


あたしに見せつけるかのように。


「婚約してるんだから敬語はやめてって言ってるでしょう?部屋で待ってるわ。」


「分かったよ。」


サターンは微笑みながら自分の部屋?に帰って行った。




そして2人になって。


「レンスの実だ。食え!」


見たところメロン味だ。


「ごめんなさい。あたし、メロンはアレルギーがあって食べられないの。」


あたしは済まなそうに言う。


そしたら。


「これをかけろ。餃子味になる。」


秋時はあたしに胡椒のようなものを渡した。





餃子、、、?


「おい?どうした?」


あたしが肩を震わせていると、秋時は不思議そうに聞く。


「ふっ、ふふふ。」


「なんだ?気でも触れたか?」


その言葉にあたしは大笑いをした。


秋時はあっけにとられている。


「何がそんなにおかしい?」


「だって!この緊張感の中で餃子を食べるなんて、ふふふ。可笑しくて!」


あたしは笑いが止まらない。


秋時は恥ずかしいのかムッとして言った。


「食わねーならいいんだぞ!!」


「いや、食べるわよ。ありがとう、秋時。」


あたしは屈託のない笑顔を秋時に向ける。


そのあたしを見て秋時は目を逸らした。


少し顔が赤い。


(きっと恥ずかしいのね?)


あたしは気にも止めなかったが、秋時の心は今まで張り詰めていた緊張の糸があたしの言葉によって解けたというのを後から知ることとなる。







「ここシーズン銀河よね?ふふっ、、、」


あたしは餃子味のレンスの実を食べ、笑いながら聞いた。


「いい加減笑うのやめねーと怒るぞ?」


そう言う秋時も少し笑っている。


「秋時だって笑っているじゃない?」


「うるせーな!奈津のせいだろ?」


結局またこらえきれなくなって、2人で大笑いした。


「秋時もセンスがないのよ。連れ去って初めての食べ物が餃子って何よ?」


「るせー。餃子うまいし、好き嫌いないじゃないか!しかも始めはメロン味だっただろ?それをお前が食えねーとかいうから仕方なく餃子になったんだよ!」


「嘘ね!あらかじめ餃子だったんでしょう?そうじゃないなら味を変える粉持って来ないわよ?」


「るせー。いいだろうがよ。もう。」


秋時はきまりが悪そうに苦笑いした。






ひとしきり笑った後でぎこちない沈黙となった。


窓のないこの部屋では、シーズン銀河がどのようなところかも分からない。


「ねぇ?シーズン銀河ってどんなところ?」


あたしは疑問にも思っていたし、沈黙が重くて秋時に聞いてみた。


「どう、、、って。お前、自分の立場分かっているのか?」


「え?立場って、、、?」


秋時はさっきまで笑っていたのに、今は笑っていない。


「お前はサターンの人形だ。生きるも死ぬもサターンが決めることなんだ。俺たちのようにな。シーズン銀河はそういうところだ。」


少し悲しげにみえたのは、気のせいかな?


「サターンのことが好きなのね?美鈴さんが好きなように。」


あたしがそういうと秋時の顔色が変わった。





「なぜ怒らない?」


「え、、、?」


「俺がやったことだ。なぜ笑って俺と話す?」


秋時は少し苛立ちをあらわにする。


「仕方ないよ。美鈴さんが好きだったんでしょう?あたしは平気!」


あたしは笑って言った。


「なんでそうなんだよ?普通なら怒るだろ?責めるだろ?なんで、、、?なんでそうなんだお前は!」


「秋時が好きだからだよ。好きな人には幸せになってほしいでしょ?」


あたしはまた笑う。


「好き、、、、?だと?」


「そうよ?秋時が好き。この気持ちはどうしようもないの!秋時が幸せならいいの!」


秋時はあたしから目を逸らした。


(俺は幸せか?サターンは美鈴ではない。昔のシーズン銀河はいいところだったはずだ。スプリングもサマーもウィンターも俺を責めない。どうして?奈津まで俺を責めない?)


「もういい!!」


俺は声を荒げた。






「秋時?なんで怒るの?」


秋時はあたしに背を向けていて、どんな表情でいるか分からない。


「お前のせいだ。何故俺の心をみだす?俺のことを誰も責めないんだよ。シーズン銀河はもっと豊かなところだった。美鈴はいつも笑っていた。なのに、、、。」


「なーんだ。そんなことか。サターンだっていつまでもこれでいいとは思わないよ。きっと大丈夫だよ。」


あたしはフッと笑った。


「お前は甘いな。サターンは美鈴とは、、、違う。俺はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。」


いつも強気な秋時が、、、後悔している?


「大丈夫!あたしがなんとかする!」


いい案があるわけではない。


ただの気やすめだけど。


秋時の状態を見ていたら自然と言葉が出ていた。







「サターンをまた封印するのか?同じ手はもう効かないんだよ!サターンは警戒してるし、俺はサターンと、、、」


秋時が肩を震わせながら言おうとしたことが何となくわかった。


「封印はしないよ?大丈夫だから。」


あたしは優しく言った。


「じゃあどうするんだよ?奈津は甘い。甘すぎる。サターンは邪悪で力が強くて、勝ち目はないんだよ!」


「別に勝とうとしてる訳じゃないよ?」


「えっ?」


「太陽神に頼むの。太陽系のプルートよりも偉い神、サン。これは極秘だからね。太陽系のみんなの神。サターンもその中の1人。サンにとってはサターンだって子供のようなものよ?」


「勝とうとするのとはちがうのか?」


秋時の瞳に光がやどる。


「うん。話し合うの。」


あたしは優しく笑った。


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