タイムパラドックス

kinmokusei

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おじいちゃんとおばあちゃんの不思議

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「それにしてもおかしいんだよなー。」

あたしはプルートに会いに行くということでうわの空だった。


「おい!聞いてるか?」

何にも答えないあたしを秋時が睨んでる。

「へ?」

「へ?っじゃねーよ!おかしいって言ってんの!」


(何言ってるんだろう?)


「おかしいのは今に始まったことじゃないじゃない。」

「ちげーよ!プルートの言う通りだとすれば、5年ごとの自分に計8人会えばいいんはずだろ?ということは計算では一番最年長で55歳の自分だ。でも会ったのは80くらいのじいさんだった。」


あっ!


「そう言われてみると、、、そうだね。あたしも会ったの70くらいのおばあちゃんだった。」


「プルートに聞かなきゃな?」

「う、うん。」





しかし。


「あれ?時の棟がない?!」


この前あったはずの時の棟はなくなっていた。


「どういうことだよ?場所は間違えてねーぞ?」

「そんなこと言われたって、、、。」

あたしは正体がバレなかった安堵感とプルートに聞きたいことを聞けなかった焦燥感とが入り混じった感覚だった。


「とにかく、ないものはないよ。とりあえず未来の自分を探そう?」

「あぁ。そうだな。」



「あーあ。今日は空振りだったな?ってか時間動いてねーけどな。」

時間的には夜。

「助かるのは冷蔵庫の中が空っぽにならないことだよ。腹時計でしか時間分からないからな。」

「なんか時差ぼけしてるよね。」

秋時は苦笑いをした。





今日も未来の自分探し。

秋時の妹さんの自転車を借りてちょっとだけ遠くに来た。

「何か手掛かりがあればなぁ。」

プルートに聞けない今、あたしたちは手当たりしだいに探すしかない。

「おい!見ろよ。」

「えっ?見つかったの?」

「違う。ここから先には行けなくなってる。」

よく見ると青白く光っている壁がある。

そこから下は崖になっていた。


「ガソリンスタンドからここまで約5キロくらいだ。中心がガソリンスタンドだとすると5キロ以上遠くには行けないことになる。」

「う、うん。落ちたら帰って来られなそうな崖ね?」

「あぁ。」


しかし。

ガソリンスタンドを中心に5キロ圏内。

絵の謎も、自分が成長した謎も、実際会った未来の自分の謎も分からない今プルートだけが頼りだったのに。

自分の正体がバレると思って手掛かりを聞けなかったことを後悔し始めていた。

まさか時の棟がなくなってしまうとは思わなかったからだけど。

誰もいない街を自転車で走り回わる。


「いねーなぁ。」

「うん。」

夕方4時で止まっている時間は進む気配がない。


「ごめんね、、、。」

あたしは秋時に謝った。

「なんだよ、急に。」

秋時は不思議そうな顔をしたけど。

「あたしがプルートに会えた時もっとよく聞いてたら良かったのに。」


あたしは落ち込んで笑うことも出来なかった。


「今更言っても仕方ねーよ。大丈夫だから。安心しろ。必ず見つける。」


「でも。謎が、、、。」


「見つけられたら謎も解けるはずだよ。」


優しい秋時。

あたしは胸が熱くなった。






捜索範囲が決まったことはよかったけど。


「まさか海外までは行けないもんなぁ。一つ収穫あったな。」


あたしが落ち込んでることに気がついているようで、秋時は優しく言った。


「うん。」


涙が出そうなのを必死でこらえるあたし。


そんなあたしを見て。

「泣きたいか?不安か?安心しろよ。絶対元の世界に帰れるから。」

優しく言う秋時。


あたしはたまらなくなって泣き出した。


「ごめん、、、!!ごめんね、、、秋時、、、。あたしが、、、あたしが悪いの、、、。プルートにもっと聞いてれば、、、こんなことにはならなかった、、、。」


そんなあたしを秋時は優しく見つめて。


「気にすんなって言っただろ?大丈夫だから!な?泣き止めよ。」

「うん。」


あたしはうなづいたけど、少しの間泣いていた。


その間、秋時は優しくあたしの頭を撫でてくれた。


あたしは思う。

秋時はあたしの正体を知ったら、恋愛対象としては見なくても優しさは変わらないんじゃないだろうか?


恋愛対象として見てもらえないのは悲しいけど十分なんじゃないだろうか?


優しい秋時のためにあたしは何もしていない。

自分のことばかり考えて何もしていないのだ。


秋時はいつだってあたしのことを考えてくれていた。


泣き止むと同時に、あたしはもっと秋時のことを考えようと強く思っていた。


泣き腫らした瞳で秋時を見る。

秋時は爽やかな笑顔を見せてくれる。

「泣き止んだか?」

「うん!」


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