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第一話 ある老人の死
ミドウ番 その6
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深夜二時の逮捕劇から二時間、まもなく朝を迎えるだろうという頃、マキは調書を書き終え仮眠室で横になっていた。
鑑識係が危険表示バリケードテープを張って、現場保存して調べに来たので、クロとミツも署に戻ってくる。
寝不足の三人から事情を聞いて、カドマとタマのふたりが容疑者達の事情聴取をすることとなった。
※ ※ ※ ※ ※
「三人とも運転免許証を持っていたので、照会したところ微罪の前科がありました。現住所はそれぞれ神奈川と石川と山口です」
「そんな遠くからわざわざ来たのか」
カドマの報告を聞いてクロが呆れると同時に理由を訊ねる。
「ネットのせいですよ。聞いて驚いたんですが、窃盗グループを募集するサイトがあるそうです。集合の日時と場所それに必要人数だけ表示されて、来られる者で強盗をするというやり方です」
「そんなサイトが。カドマすぐにミツに──」
「もうやらせてます。ですがもう閉鎖されてました。愛知県警に送るための報告書をミツに作らせてます」
「さすがだな。で、連中からは他に何を得られた」
「目立たない格好で指定された場所に行き、仕切り人に会って口頭でターゲットの店と目標を聞き、役割分担して窃盗、成功したら目の前で報酬を分け与え解散という流れなんてすが、今回は三人とも顔見知りだったので、仕切り人抜きでやったそうです」
「ということは、窃盗サイトと繋がりのありそうな仕切り人はいないということか」
「今のところは。偽証している可能性もあるので、もう少し調べてみます」
「頼む」
※ ※ ※ ※ ※
その頃、仮眠をとったマキはTMS事務所に着き、ミドウに詰問していた。
「ミドウさん、昨夜は何処にいたんです」
いつも通りの白いスーツ姿、さすがにジャケットはポールハンガーに帽子とともにかけてあるが、ベストスラックス姿で事務所のソファに寝ていたミドウは、眠そうにこたえる。
「深夜徘徊」
「どこでです、現場ででしょう、あの時灯りを点けて助けてくれんでしょう」
「どこの現場か知らないけど、マキちゃんに会うのは昨日ぶりだよ」
「じゃあ何処にいたんです」
「修文大学辺りの日光川の土手」
予想外の場所を言われ一瞬言葉を失うが、はぐらかされてるとすぐ気づき、詰問のボルテージが上がる。
「なんでそんなすぐバレるウソを言うんです、偽証罪で逮捕しますよ」
「ホントだってば。最近ムーンウォークの練習してるんだよ。あそこでやると女子大生や女子高生が応援してくれるんで、やる気が出るんだ」
「真夜中にやったら怪しまれて悲鳴しか出ないでしょうが」
「だーって昼間だと勉強のジャマになっちゃうし」
「なら事務所でいいでしょ。正直に言ってください」
「ホントだってば。裏とってみなよ」
もう会話は終わりだよばかりに背を向けて寝ようとするミドウに、マキは叩き起こしてやりたい衝動にかられるが、なんとか耐えた。
「わかりました。裏を取ってきますね」
乱暴に事務所から出ていくとその足で修文大学に向かい、おそらく有るであろう防犯カメラをお願いして見せてもらうつもりだった。
※ ※ ※ ※ ※
果たしてあったのだが、名刺を出してもなかなか警察だと信じてもらえない、いつもの手間取るやり取りをして三十分ほどしてようやく信じてもらい見せてもらうことになる。
「ええ、昨日というか今日の午前二時あたりで──外周の録画を──えっ」
警備員と教師とともに画像を確認すると、たしかに白いスーツ姿の人物が日光川沿いで歩いているのが映っていた。
「ホントにいた。なんで……」
マキが信じられないという顔をしていると、警備員が呟く。
「この人ですか。最近ちょくちょく見かけますよ、変な格好をしているから何しているか訊いたことあります」
「どんな人でしたか」
警備員の話した人物像はミドウの特徴そのものだった。
「この白スーツの人、誰なんですか。学生達でも話題になってるんですけど」
教師の問いに、なんと答えればよいか迷ってしまったが、ちょっとした事件の関係で確認に来ただけですと当たり障りなく答え、御礼を言ってその場をあとにした。
「うっそでしょ。本当に日光川にいたなんて。どう考えても現場には一時間くらいかかるし……じゃあ誰が助けてくれたのよ」
マキは混乱しながら署に戻り、クロに報告した。
クロは苦い顔をしたが、そっちはもういいから取り調べを手伝うようにいう。
「あ、その前に裏が取れたことミドウに言っとけよ」
「ええ~、わかりました~」
しぶしぶ出ていくマキが見えなくなったあと、クロは呟く。
「だんだんカドがとれてきたな。ミドウのいい加減さに影響されたか」
最初の頃のガチガチ緊張したマキを思い出し、クロは少し思い出し笑いをした。
※ ※ ※ ※ ※
「裏取れましたぁ……」
不貞腐れて報告するマキに、デスクでノートパソコンをいじってたミドウがにやにやする。
「あってたろ。それじゃ練習の成果をみせてやる」
ミドウは立ち上がると動きやすい場所に移り、マキの目の前でムーンウォークを披露する。その動きは滑らかでたしかに練習したなと思う完成度だ。
しかしマキにとってはバカにされてるとしか思えなかった。
(くっそう、絶対にトリックがあるはずなのにぃ。絶対に暴いてやるから)
動き終えドヤ顔したミドウに、心が全然こもってない拍手をしてやったマキであった。
鑑識係が危険表示バリケードテープを張って、現場保存して調べに来たので、クロとミツも署に戻ってくる。
寝不足の三人から事情を聞いて、カドマとタマのふたりが容疑者達の事情聴取をすることとなった。
※ ※ ※ ※ ※
「三人とも運転免許証を持っていたので、照会したところ微罪の前科がありました。現住所はそれぞれ神奈川と石川と山口です」
「そんな遠くからわざわざ来たのか」
カドマの報告を聞いてクロが呆れると同時に理由を訊ねる。
「ネットのせいですよ。聞いて驚いたんですが、窃盗グループを募集するサイトがあるそうです。集合の日時と場所それに必要人数だけ表示されて、来られる者で強盗をするというやり方です」
「そんなサイトが。カドマすぐにミツに──」
「もうやらせてます。ですがもう閉鎖されてました。愛知県警に送るための報告書をミツに作らせてます」
「さすがだな。で、連中からは他に何を得られた」
「目立たない格好で指定された場所に行き、仕切り人に会って口頭でターゲットの店と目標を聞き、役割分担して窃盗、成功したら目の前で報酬を分け与え解散という流れなんてすが、今回は三人とも顔見知りだったので、仕切り人抜きでやったそうです」
「ということは、窃盗サイトと繋がりのありそうな仕切り人はいないということか」
「今のところは。偽証している可能性もあるので、もう少し調べてみます」
「頼む」
※ ※ ※ ※ ※
その頃、仮眠をとったマキはTMS事務所に着き、ミドウに詰問していた。
「ミドウさん、昨夜は何処にいたんです」
いつも通りの白いスーツ姿、さすがにジャケットはポールハンガーに帽子とともにかけてあるが、ベストスラックス姿で事務所のソファに寝ていたミドウは、眠そうにこたえる。
「深夜徘徊」
「どこでです、現場ででしょう、あの時灯りを点けて助けてくれんでしょう」
「どこの現場か知らないけど、マキちゃんに会うのは昨日ぶりだよ」
「じゃあ何処にいたんです」
「修文大学辺りの日光川の土手」
予想外の場所を言われ一瞬言葉を失うが、はぐらかされてるとすぐ気づき、詰問のボルテージが上がる。
「なんでそんなすぐバレるウソを言うんです、偽証罪で逮捕しますよ」
「ホントだってば。最近ムーンウォークの練習してるんだよ。あそこでやると女子大生や女子高生が応援してくれるんで、やる気が出るんだ」
「真夜中にやったら怪しまれて悲鳴しか出ないでしょうが」
「だーって昼間だと勉強のジャマになっちゃうし」
「なら事務所でいいでしょ。正直に言ってください」
「ホントだってば。裏とってみなよ」
もう会話は終わりだよばかりに背を向けて寝ようとするミドウに、マキは叩き起こしてやりたい衝動にかられるが、なんとか耐えた。
「わかりました。裏を取ってきますね」
乱暴に事務所から出ていくとその足で修文大学に向かい、おそらく有るであろう防犯カメラをお願いして見せてもらうつもりだった。
※ ※ ※ ※ ※
果たしてあったのだが、名刺を出してもなかなか警察だと信じてもらえない、いつもの手間取るやり取りをして三十分ほどしてようやく信じてもらい見せてもらうことになる。
「ええ、昨日というか今日の午前二時あたりで──外周の録画を──えっ」
警備員と教師とともに画像を確認すると、たしかに白いスーツ姿の人物が日光川沿いで歩いているのが映っていた。
「ホントにいた。なんで……」
マキが信じられないという顔をしていると、警備員が呟く。
「この人ですか。最近ちょくちょく見かけますよ、変な格好をしているから何しているか訊いたことあります」
「どんな人でしたか」
警備員の話した人物像はミドウの特徴そのものだった。
「この白スーツの人、誰なんですか。学生達でも話題になってるんですけど」
教師の問いに、なんと答えればよいか迷ってしまったが、ちょっとした事件の関係で確認に来ただけですと当たり障りなく答え、御礼を言ってその場をあとにした。
「うっそでしょ。本当に日光川にいたなんて。どう考えても現場には一時間くらいかかるし……じゃあ誰が助けてくれたのよ」
マキは混乱しながら署に戻り、クロに報告した。
クロは苦い顔をしたが、そっちはもういいから取り調べを手伝うようにいう。
「あ、その前に裏が取れたことミドウに言っとけよ」
「ええ~、わかりました~」
しぶしぶ出ていくマキが見えなくなったあと、クロは呟く。
「だんだんカドがとれてきたな。ミドウのいい加減さに影響されたか」
最初の頃のガチガチ緊張したマキを思い出し、クロは少し思い出し笑いをした。
※ ※ ※ ※ ※
「裏取れましたぁ……」
不貞腐れて報告するマキに、デスクでノートパソコンをいじってたミドウがにやにやする。
「あってたろ。それじゃ練習の成果をみせてやる」
ミドウは立ち上がると動きやすい場所に移り、マキの目の前でムーンウォークを披露する。その動きは滑らかでたしかに練習したなと思う完成度だ。
しかしマキにとってはバカにされてるとしか思えなかった。
(くっそう、絶対にトリックがあるはずなのにぃ。絶対に暴いてやるから)
動き終えドヤ顔したミドウに、心が全然こもってない拍手をしてやったマキであった。
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