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ユーリの応え
魔術と精霊術
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「なので、協力を申し出ても色よい返事がもらえないかもしれません」
「ふむ。それは困ったな」
マジークの言葉に、さほど困った様子もなくこたえる。
「で?」
「で? とは?」
「駆け引きして値を吊り上げる時間が無駄だぞ。対応が遅れれば国内がまとまらず、結果的に帝国軍が有利になるだけだ。それは魔術師教会としても困るだろう。取り引きの材料はなにが目的だ」
ユーリは焦ることなく、損得勘定を提示することで相手に話しやすい方向にもっていく。
「なるほど。大賢者ユーリ様相手に駆け引きなどするものではないですな。
では、精霊術の[デンワツタ]を教えてもらいたい。それが条件です」
「[デンワツタ]を? あれは精霊術だぞ」
「ユーリ様ならおわかりでしょう、魔術の起源を」
──なるほどな──
ユーリは精霊術と魔術の関係を思い出した。
異世界ミスマにおいて、自然を司る精霊の最高峰は[世界樹]である。この下に風火水土の4大精霊が存在し、その下に細々とした精霊がいる。
魔術というのは自然現象を己のチカラで起こす術。風魔法も火魔法も水魔法も土魔法も自分のマナを起源に思うように自然現象を操ることだ。ゆえに精霊術と魔術は近い存在といえる。
[デンワツタ]も元をただせば樹木を操る術だ。だから樹木系の操作魔術を使えるものならば応用できると言いたいのだろう。
──しかしそうなると……[デンワツタ]は今まで見たことがない。おそらくクッキーの独創精霊術だろう。つまりクッキーに断りをいれなくてはならない──
「……すまないが少し時間をくれ。私の一存では返答できないから問い合わせてみる」
「わかりました。許可をいただけたならこのコに教えてください」
マジークはずっと傍らに立っていた親衛隊少女に顔を向ける。
「このコとは? 知り合いなのか」
「娘です」
親衛隊少女は礼をすると自己紹介をはじめる。
「エリス・ウィザド・ポールズです。よろしくお願いいたします」
それではとマジークは戻っていき、貴族達も帰ってしまった。会議は中途半端なかたちで終わることになる。
※ ※ ※ ※ ※
エリスには呼ぶまで通常業務をするように指示すると、ゾフィとともに書類の決済と各部門からの報告を受け指示を出す。
それらが終わってようやくあてがわれた自室に戻ると、ヒトハを呼び出す。
「ヒトハ、クッキーとアンナはどうなってる」
「同期しましょうか」
「ああ」
デンワツタを利用して互いの情報を交換する。
「……何をしてるんだアイツは……」
ヒトハから得た情報だと攻防戦ではなく決闘をしている。
「帝国側からの申し入れで、傭兵達と順次決闘をしているとのことです。お父様も時間稼ぎになるから受けたそうで」
「まあ時間稼ぎはありがたいが……。帝国側からの申し入れというのが気になるな。なんの得にもならないだろうに……」
「なので今すぐお父様から許可を頂くのは難しいかと」
「ふむ。それは困るな。これは早さが肝なのに」
「あの、ユーリ様。よろしければ私の精霊術として教えるのはいかがでしょうか」
「うん? どういうことだ」
「私はユーリ様と永遠契約していますので、私の術をユーリ様の一存で自由にできます。それならばお父様の許可を得なくても大丈夫だと」
「ヒトハとしては問題にならないのか」
「ええ。それとお父様の独創精霊術は進化しています。お父様風に言うと最初のものがレベル1とするなら今のはレベル5くらいの質になってます。なのでレベル1くらいの術を渡せば大丈夫かと」
「ふむ……。わかった、そうしよう。もし問題になるのなら私が責を負おう」
「そんなことをしなくても」
「私はヒトハの契約者だからな。一心同体というやつだ」
この言葉と想いにヒトハは歓喜し、この方と永遠に供したいと望んだ。
※ ※ ※ ※ ※
ユーリはゾフィとともにエリスを呼び、自室の樹液モニター経由でヒトハを紹介する。そしてヒトハが図解説明で[デンワツタ]の仕組みを教える。
ヒトハの説明が解りやすいのかエリスが理解力が強いのか、それともその両方なのか。
[デンワツタ]の仕組みを理解したエリスはヒトハの生やしたツタを樹木操作魔術で試作するとたった数回で完成させたのだ。
「すごいな」
ユーリが感心するとゾフィが口添えをする。
「エリスは特別なのです。彼女は男女の双子で産まれるはずだったのですが、男の方は死産でした。そのせいでしょうかエリスには2つの魂がやどっているのです」
「2つの魂? つまり2人分のマナを持っているということか」
「そうです。そのせいか魔術師として1級品であるとともに美聖女戦士もできるのです。単純な攻撃力なら私やアンナ様に匹敵するほどです」
この小柄な少女がゾフィに匹敵するほどの攻撃力の持ち主だと。
はにかんで内気そうに照れてるエリスをまじまじとユーリは見る。
「おっと。ゆっくり話したいところだが、今はその術をマジークに伝えに行ってくれ。了承したならすぐに作業に取りかかるようにもな」
「はい。ではユーリ様、ゾフィ隊長、失礼します」
部屋を出て駆けていくエリスを見送ったあと、ユーリはゾフィと打ち合わせにはいった。
「ふむ。それは困ったな」
マジークの言葉に、さほど困った様子もなくこたえる。
「で?」
「で? とは?」
「駆け引きして値を吊り上げる時間が無駄だぞ。対応が遅れれば国内がまとまらず、結果的に帝国軍が有利になるだけだ。それは魔術師教会としても困るだろう。取り引きの材料はなにが目的だ」
ユーリは焦ることなく、損得勘定を提示することで相手に話しやすい方向にもっていく。
「なるほど。大賢者ユーリ様相手に駆け引きなどするものではないですな。
では、精霊術の[デンワツタ]を教えてもらいたい。それが条件です」
「[デンワツタ]を? あれは精霊術だぞ」
「ユーリ様ならおわかりでしょう、魔術の起源を」
──なるほどな──
ユーリは精霊術と魔術の関係を思い出した。
異世界ミスマにおいて、自然を司る精霊の最高峰は[世界樹]である。この下に風火水土の4大精霊が存在し、その下に細々とした精霊がいる。
魔術というのは自然現象を己のチカラで起こす術。風魔法も火魔法も水魔法も土魔法も自分のマナを起源に思うように自然現象を操ることだ。ゆえに精霊術と魔術は近い存在といえる。
[デンワツタ]も元をただせば樹木を操る術だ。だから樹木系の操作魔術を使えるものならば応用できると言いたいのだろう。
──しかしそうなると……[デンワツタ]は今まで見たことがない。おそらくクッキーの独創精霊術だろう。つまりクッキーに断りをいれなくてはならない──
「……すまないが少し時間をくれ。私の一存では返答できないから問い合わせてみる」
「わかりました。許可をいただけたならこのコに教えてください」
マジークはずっと傍らに立っていた親衛隊少女に顔を向ける。
「このコとは? 知り合いなのか」
「娘です」
親衛隊少女は礼をすると自己紹介をはじめる。
「エリス・ウィザド・ポールズです。よろしくお願いいたします」
それではとマジークは戻っていき、貴族達も帰ってしまった。会議は中途半端なかたちで終わることになる。
※ ※ ※ ※ ※
エリスには呼ぶまで通常業務をするように指示すると、ゾフィとともに書類の決済と各部門からの報告を受け指示を出す。
それらが終わってようやくあてがわれた自室に戻ると、ヒトハを呼び出す。
「ヒトハ、クッキーとアンナはどうなってる」
「同期しましょうか」
「ああ」
デンワツタを利用して互いの情報を交換する。
「……何をしてるんだアイツは……」
ヒトハから得た情報だと攻防戦ではなく決闘をしている。
「帝国側からの申し入れで、傭兵達と順次決闘をしているとのことです。お父様も時間稼ぎになるから受けたそうで」
「まあ時間稼ぎはありがたいが……。帝国側からの申し入れというのが気になるな。なんの得にもならないだろうに……」
「なので今すぐお父様から許可を頂くのは難しいかと」
「ふむ。それは困るな。これは早さが肝なのに」
「あの、ユーリ様。よろしければ私の精霊術として教えるのはいかがでしょうか」
「うん? どういうことだ」
「私はユーリ様と永遠契約していますので、私の術をユーリ様の一存で自由にできます。それならばお父様の許可を得なくても大丈夫だと」
「ヒトハとしては問題にならないのか」
「ええ。それとお父様の独創精霊術は進化しています。お父様風に言うと最初のものがレベル1とするなら今のはレベル5くらいの質になってます。なのでレベル1くらいの術を渡せば大丈夫かと」
「ふむ……。わかった、そうしよう。もし問題になるのなら私が責を負おう」
「そんなことをしなくても」
「私はヒトハの契約者だからな。一心同体というやつだ」
この言葉と想いにヒトハは歓喜し、この方と永遠に供したいと望んだ。
※ ※ ※ ※ ※
ユーリはゾフィとともにエリスを呼び、自室の樹液モニター経由でヒトハを紹介する。そしてヒトハが図解説明で[デンワツタ]の仕組みを教える。
ヒトハの説明が解りやすいのかエリスが理解力が強いのか、それともその両方なのか。
[デンワツタ]の仕組みを理解したエリスはヒトハの生やしたツタを樹木操作魔術で試作するとたった数回で完成させたのだ。
「すごいな」
ユーリが感心するとゾフィが口添えをする。
「エリスは特別なのです。彼女は男女の双子で産まれるはずだったのですが、男の方は死産でした。そのせいでしょうかエリスには2つの魂がやどっているのです」
「2つの魂? つまり2人分のマナを持っているということか」
「そうです。そのせいか魔術師として1級品であるとともに美聖女戦士もできるのです。単純な攻撃力なら私やアンナ様に匹敵するほどです」
この小柄な少女がゾフィに匹敵するほどの攻撃力の持ち主だと。
はにかんで内気そうに照れてるエリスをまじまじとユーリは見る。
「おっと。ゆっくり話したいところだが、今はその術をマジークに伝えに行ってくれ。了承したならすぐに作業に取りかかるようにもな」
「はい。ではユーリ様、ゾフィ隊長、失礼します」
部屋を出て駆けていくエリスを見送ったあと、ユーリはゾフィと打ち合わせにはいった。
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