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ユーリの試練
謎の部族
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商隊が[世界樹の森]を通るようになってからずいぶんといろんなヒト族や亜人に会ったが、男性型世界樹製躯体に憑依したオレを認識することはあっても、精霊体のオレを感じるヤツはほぼいなかった。
なのにノマドの連中はオレを感じていた、それどころか分かっていたようだった。
──どうする、ダメモトでまた近づくか……。いや、目的を違えるな、あくまでも様子見だ。気づかれずに調べなくては──
二キロメートル離れたところから[超高性能マイクツタ]と[超高性能カメラツタ]を生やして連中に狙いを定める。これなら精霊力を感じることないだろう。
──アンナ、見えるか? [はじまりの村]にいるノマドを映している──
ヨツジにある樹液モニターに映してデンワツタで話しかける。
「ええ、映ってはいますが遠くてよくわかりません」
──もう少し倍率を上げてみるか──
[超高性能カメラツタ]を改良しようとしたときだった。
ビュオッ!!
[超高性能カメラツタ]と[超高性能マイクツタ]が壊されたのだ。何がおきた!?
見れば矢が刺さっていて枯らされていた。帝国軍の矢よりデカくまるで銛のような矢が。まさかとおもい飛んできた方を見ると、数人のノマドがこちらに向かって走ってくる。ウソだろ?! なんで分かるんだよ。
──イツハ、アディのところまで行って、ヨツジに来るように言ってくれ──
イツハを逃したあと、枯らした原因を調べなければと矢を触手ツタで取りこっちに投げる。それを繰り返しながらオレも逃げた。
※ ※ ※ ※ ※
「クチキ様、いったいなにが起きたのです」
矢を[世界樹の森]の北端まで持ってくると、ヨツジに行き、アンナの質問に答える。
「そんな……、ノマドは精霊が視えるのですか」
──分からない。あんなの初めてなんだ。アンナ達はノマドのこと知らないか──
会話しやすいように電話ツタをシンシアとヨセフの分を増やしてある。三人とも首を振るだけだった。
「ノマドのことは[はじまりの村]の者が詳しいと思いますから、彼等と合流するまではなんとも……」
──他には心当たりないかな──
この質問に、ヨセフがひょっとしたらという感じでこたえてくれた。
「モーリ様はどうでしょうか。旅商人のあの方なら何か知ってるかもしれません」
──あ──
モーリのことをすっかり忘れていた。
その場でモーリのいる筈の大使館代わりの大型馬車のデンワツタに呼び出しをすると、食い気味にでて喰らいつくように話しだす。
「ク、クッキーさん、今までどうしてたんです、帝国軍の進退は分からないし、外を見れば北の方に煙が立っているし、今日一日気が気じゃなかったですよ」
──すまないモーリ、いろいろあったんだよ。あとで説明するから今はこっちの話を聞いてくれ──
今朝方[はじまりの村]がノマドに襲われ焼かれたこと、村民が脱出して王国に向かっていること、アンナが責任者となりヨツジを拠点に救援活動をしていることを伝えると、モーリは本当ですかと驚く。
「本当よモーリ、いま私たちはヨツジにいるわ。今は貴方の知識が必要なの、知っていることがあったら教えて」
「は、わかりました王女様。──っと、旅に出るとき北回りの場合はまず[はじまりの村]に立ち寄ります、そこで商いをするとともに北の情勢を知ること、そしてノマドに旅の警護を依頼するためです」
「警護を依頼って、どういうことなの」
「ノマドを遊牧民連合国家と称していますが、実際は多くの民族や部族の集団でひとつにまとまってません。ギルドがひとつひとつと契約するのが面倒なので北の大草原にいる連中をそう言ってるだけです。
その中のひとつ[タオヤ族]は東南部をナワバリにしてギルドとも契約しており、[狩り]もしますが[取引]もやる比較的話しやすい連中で、次の目的地である鉱山街まで他部族から警護してもらうのが常でした」
「じゃあその[タオヤ族]というのが襲ってきたというの」
「そんな連中ではないはずですが……」
──モーリ、オレが見た連中を樹液モニターに映すから見てくれ──
記憶の中の映像を出すと、モーリが険しい顔つきになる。
「知らない部族です。誰だこの連中」
「[タオヤ族]ではないの」
「違います、何処の部族だろう。連中はナワバリからほぼ出ないはずなのに……なぜなら諍いが起きるからです」
「もし出て来たら」
「間違いなく殺し合いです。負けた方は全滅させられるか奴隷として生かされるかでしょうな」
モーリの話しから察するに、この未知の部族は何処からかやって来て、おそらく[タオヤ族]を全滅させ[はじまりの村]を襲ったということか。
「クチキ様、村に向かっている救援隊と連絡をとれませんか」
──わかった。出来るようになったら合図する──
夜営している救援隊のところまで来ると、[スピーカーツタ]と[マイクツタ]を生やす。ちなみに全然反応無し。やっぱりノマドが変なのかな。
──アンナ、いいぞ──
「衛兵長、衛兵長、起きて。アンナです、アンナ……カーキツバタです」
なのにノマドの連中はオレを感じていた、それどころか分かっていたようだった。
──どうする、ダメモトでまた近づくか……。いや、目的を違えるな、あくまでも様子見だ。気づかれずに調べなくては──
二キロメートル離れたところから[超高性能マイクツタ]と[超高性能カメラツタ]を生やして連中に狙いを定める。これなら精霊力を感じることないだろう。
──アンナ、見えるか? [はじまりの村]にいるノマドを映している──
ヨツジにある樹液モニターに映してデンワツタで話しかける。
「ええ、映ってはいますが遠くてよくわかりません」
──もう少し倍率を上げてみるか──
[超高性能カメラツタ]を改良しようとしたときだった。
ビュオッ!!
[超高性能カメラツタ]と[超高性能マイクツタ]が壊されたのだ。何がおきた!?
見れば矢が刺さっていて枯らされていた。帝国軍の矢よりデカくまるで銛のような矢が。まさかとおもい飛んできた方を見ると、数人のノマドがこちらに向かって走ってくる。ウソだろ?! なんで分かるんだよ。
──イツハ、アディのところまで行って、ヨツジに来るように言ってくれ──
イツハを逃したあと、枯らした原因を調べなければと矢を触手ツタで取りこっちに投げる。それを繰り返しながらオレも逃げた。
※ ※ ※ ※ ※
「クチキ様、いったいなにが起きたのです」
矢を[世界樹の森]の北端まで持ってくると、ヨツジに行き、アンナの質問に答える。
「そんな……、ノマドは精霊が視えるのですか」
──分からない。あんなの初めてなんだ。アンナ達はノマドのこと知らないか──
会話しやすいように電話ツタをシンシアとヨセフの分を増やしてある。三人とも首を振るだけだった。
「ノマドのことは[はじまりの村]の者が詳しいと思いますから、彼等と合流するまではなんとも……」
──他には心当たりないかな──
この質問に、ヨセフがひょっとしたらという感じでこたえてくれた。
「モーリ様はどうでしょうか。旅商人のあの方なら何か知ってるかもしれません」
──あ──
モーリのことをすっかり忘れていた。
その場でモーリのいる筈の大使館代わりの大型馬車のデンワツタに呼び出しをすると、食い気味にでて喰らいつくように話しだす。
「ク、クッキーさん、今までどうしてたんです、帝国軍の進退は分からないし、外を見れば北の方に煙が立っているし、今日一日気が気じゃなかったですよ」
──すまないモーリ、いろいろあったんだよ。あとで説明するから今はこっちの話を聞いてくれ──
今朝方[はじまりの村]がノマドに襲われ焼かれたこと、村民が脱出して王国に向かっていること、アンナが責任者となりヨツジを拠点に救援活動をしていることを伝えると、モーリは本当ですかと驚く。
「本当よモーリ、いま私たちはヨツジにいるわ。今は貴方の知識が必要なの、知っていることがあったら教えて」
「は、わかりました王女様。──っと、旅に出るとき北回りの場合はまず[はじまりの村]に立ち寄ります、そこで商いをするとともに北の情勢を知ること、そしてノマドに旅の警護を依頼するためです」
「警護を依頼って、どういうことなの」
「ノマドを遊牧民連合国家と称していますが、実際は多くの民族や部族の集団でひとつにまとまってません。ギルドがひとつひとつと契約するのが面倒なので北の大草原にいる連中をそう言ってるだけです。
その中のひとつ[タオヤ族]は東南部をナワバリにしてギルドとも契約しており、[狩り]もしますが[取引]もやる比較的話しやすい連中で、次の目的地である鉱山街まで他部族から警護してもらうのが常でした」
「じゃあその[タオヤ族]というのが襲ってきたというの」
「そんな連中ではないはずですが……」
──モーリ、オレが見た連中を樹液モニターに映すから見てくれ──
記憶の中の映像を出すと、モーリが険しい顔つきになる。
「知らない部族です。誰だこの連中」
「[タオヤ族]ではないの」
「違います、何処の部族だろう。連中はナワバリからほぼ出ないはずなのに……なぜなら諍いが起きるからです」
「もし出て来たら」
「間違いなく殺し合いです。負けた方は全滅させられるか奴隷として生かされるかでしょうな」
モーリの話しから察するに、この未知の部族は何処からかやって来て、おそらく[タオヤ族]を全滅させ[はじまりの村]を襲ったということか。
「クチキ様、村に向かっている救援隊と連絡をとれませんか」
──わかった。出来るようになったら合図する──
夜営している救援隊のところまで来ると、[スピーカーツタ]と[マイクツタ]を生やす。ちなみに全然反応無し。やっぱりノマドが変なのかな。
──アンナ、いいぞ──
「衛兵長、衛兵長、起きて。アンナです、アンナ……カーキツバタです」
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