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ユーリの試練
ノマドとの接触
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──どうだペッター、異常ありそうか──
日が暮れたので強制的に決闘を終了。待たされ過ぎた連中が順番を無視して押しかけてきたが、そこは上級ドライアド達の出番。
昨夜活躍できなかったフタハ、ナノハ、ヤツハとその妹達である下級ドライアド達が誘惑でお相手して骨抜きにする。これでとりあえず三日目が終了した。
男性型世界樹製躯体四号は触手ツタでやさしく持ち帰り、世界樹の森の地下工房の作業台に寝かせペッターが点検をはじめるところだった。
「うーん、見たところは大丈夫そうだが……」
試作BAを外した駆体をまじまじと見て点検するペッター、こういう時のアイツは格好良くみえる。誰であれ真剣モードのヤツはカッコいいよな。
「細かいところをいうと間接部分の摩耗が多いな。今までは日常生活に支障無いから気にしてなかったが、やはり非日常運動である格闘や戦闘だと負担が大きいか」
──となると、戦闘時には精霊力装備をして間接部分に潤滑油みたいなほどこしをした方がいいってことか──
「そうだな。駆体はそれでいいとして、BAの使い心地はどうだった」
──精霊力を具体化して道具として使えるのは良かったな。いちばん使いやすい[精霊力剣][精霊力青龍刀][精霊力盾]と[精霊力装備]は[祝福呪文]で具現化できるよう登録したよ──
「異常はなかったか」
──とくには……強いていえば具現化にちょっと滞る感じがあったけど、気になるほどじゃなかったかな──
「ふん、ならいいか。で、駆体は使うのか」
夜間防衛線はアディ達に任せるとして、いまオレがやることはヨツジに行ってアンナ王女との連携をとることだ。駆体で行くのは得策じゃない。
──使わないから置いてく。他の駆体はまだ使えないのか──
「身体の方は両方ともできてるんだが、頭の部分がな。視覚、聴覚、触覚の精度をあげるのに手間どってる。正直新たに造ったものを取り付けたほうが早いかもな」
──なんでそうしないの──
「途中でそうわかったんだよ、伐り倒した世界樹にも限りがあるだろ、ちゃんと節約してやってるんだよ」
かるくキレはじめたので、そうそうに退散してヨツジへと向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
ヨツジに着くとアンナ王女一行はもう到着していた。旧街道東側の駐屯地と連絡済みらしく衛兵達がキビキビと動き回っている。
西側に造った森の一角に電話ツタと樹液モニターを生やし、樹液モニターに映ってアンナ達にコンタクトをとる。気がついた衛兵のひとりが連絡してアンナとようやく連絡がとれた。
「クチキ様、お待ちしておりました」
「すまないアンナ、帝国が決闘をしてきて相手してたもんで」
「はい? すいません、なにを仰っているのか……」
「気にしないでくれ。それよりどうなっているんだ」
「日が落ちる前に到着しまして、街道駐屯部隊に事情を話して王国に早馬を走らせました。それとともに街道経由で[はじまりの村]にも応援部隊を走らせ、ここは防衛部隊を編成、今は簡易で柵を作らせているところです」
「すごいな。さすが王女というところか」
「いえ、全体の作戦はシンシアが考えてくれました。私はそれを衛兵に伝えただけてすわ。それより現地がどうなっているか知りたいのです。昼間はずっと煙が見えていましたが、夜になって見えなくなってしまったので……。どうなったか御存知ありませんか」
真っ先にここに来たので王国のことも[はじまりの村]のことも分かってない。どちらにしようか迷ったが、人命救助を優先して[はじまりの村]の方に様子を見ることにした。
※ ※ ※ ※ ※
救援隊についているフタハと交代したイツハのところに着くと、どうなったかを同期して教えてもらう。オレからだと情報量多過になってしまうが、イツハからなら問題ない。映像だけならね。
ふんふん、[はじまりの村]に向けて救援隊が通りやすい道をならしていたが、現在は夜営中か。この辺りは野獣はいるけど魔獣はいないから守らなくても大丈夫だろう。
イツハの精霊力を補助してピンポイントで支配範囲というか支配道をつくり[はじまりの村]まで一気にすすむ。現地はいったい何がどうなってるんだろうか。
※ ※ ※ ※ ※
やって来ると村から少し外れたところに数頭のウマと、夜営用のテントがいくつか立てられ、十数人ほとの男が火を囲んで騒いでいた。どうやら宴の最中らしい。
──あれがノマドってやつかな──
ほぼ全員が何かしらの毛皮を着込んでいて、赤黒い肌にギラギラとした獣のような顔つきをしており、それが大きな焚火に照らされたせいでさらに凶暴そうに見える。北◯の拳に出てきた牙一族みたいな奴らだな。
精霊体だからバレないだろうと円陣に近づくと、全員が動きを止めて辺りをじろじろうかがう。どうした? まさか……まさか気づかれたのか。
数人が武器を持ちこちらを向く、間違いない気づいてる。慌てて二キロメートルくらい戻る。
──イツハ、なんなんだあれは。精霊の気配がわかるのか──
──わかんない、わかんないけど、気づかれてたと思うぅ──
日が暮れたので強制的に決闘を終了。待たされ過ぎた連中が順番を無視して押しかけてきたが、そこは上級ドライアド達の出番。
昨夜活躍できなかったフタハ、ナノハ、ヤツハとその妹達である下級ドライアド達が誘惑でお相手して骨抜きにする。これでとりあえず三日目が終了した。
男性型世界樹製躯体四号は触手ツタでやさしく持ち帰り、世界樹の森の地下工房の作業台に寝かせペッターが点検をはじめるところだった。
「うーん、見たところは大丈夫そうだが……」
試作BAを外した駆体をまじまじと見て点検するペッター、こういう時のアイツは格好良くみえる。誰であれ真剣モードのヤツはカッコいいよな。
「細かいところをいうと間接部分の摩耗が多いな。今までは日常生活に支障無いから気にしてなかったが、やはり非日常運動である格闘や戦闘だと負担が大きいか」
──となると、戦闘時には精霊力装備をして間接部分に潤滑油みたいなほどこしをした方がいいってことか──
「そうだな。駆体はそれでいいとして、BAの使い心地はどうだった」
──精霊力を具体化して道具として使えるのは良かったな。いちばん使いやすい[精霊力剣][精霊力青龍刀][精霊力盾]と[精霊力装備]は[祝福呪文]で具現化できるよう登録したよ──
「異常はなかったか」
──とくには……強いていえば具現化にちょっと滞る感じがあったけど、気になるほどじゃなかったかな──
「ふん、ならいいか。で、駆体は使うのか」
夜間防衛線はアディ達に任せるとして、いまオレがやることはヨツジに行ってアンナ王女との連携をとることだ。駆体で行くのは得策じゃない。
──使わないから置いてく。他の駆体はまだ使えないのか──
「身体の方は両方ともできてるんだが、頭の部分がな。視覚、聴覚、触覚の精度をあげるのに手間どってる。正直新たに造ったものを取り付けたほうが早いかもな」
──なんでそうしないの──
「途中でそうわかったんだよ、伐り倒した世界樹にも限りがあるだろ、ちゃんと節約してやってるんだよ」
かるくキレはじめたので、そうそうに退散してヨツジへと向かうことにした。
※ ※ ※ ※ ※
ヨツジに着くとアンナ王女一行はもう到着していた。旧街道東側の駐屯地と連絡済みらしく衛兵達がキビキビと動き回っている。
西側に造った森の一角に電話ツタと樹液モニターを生やし、樹液モニターに映ってアンナ達にコンタクトをとる。気がついた衛兵のひとりが連絡してアンナとようやく連絡がとれた。
「クチキ様、お待ちしておりました」
「すまないアンナ、帝国が決闘をしてきて相手してたもんで」
「はい? すいません、なにを仰っているのか……」
「気にしないでくれ。それよりどうなっているんだ」
「日が落ちる前に到着しまして、街道駐屯部隊に事情を話して王国に早馬を走らせました。それとともに街道経由で[はじまりの村]にも応援部隊を走らせ、ここは防衛部隊を編成、今は簡易で柵を作らせているところです」
「すごいな。さすが王女というところか」
「いえ、全体の作戦はシンシアが考えてくれました。私はそれを衛兵に伝えただけてすわ。それより現地がどうなっているか知りたいのです。昼間はずっと煙が見えていましたが、夜になって見えなくなってしまったので……。どうなったか御存知ありませんか」
真っ先にここに来たので王国のことも[はじまりの村]のことも分かってない。どちらにしようか迷ったが、人命救助を優先して[はじまりの村]の方に様子を見ることにした。
※ ※ ※ ※ ※
救援隊についているフタハと交代したイツハのところに着くと、どうなったかを同期して教えてもらう。オレからだと情報量多過になってしまうが、イツハからなら問題ない。映像だけならね。
ふんふん、[はじまりの村]に向けて救援隊が通りやすい道をならしていたが、現在は夜営中か。この辺りは野獣はいるけど魔獣はいないから守らなくても大丈夫だろう。
イツハの精霊力を補助してピンポイントで支配範囲というか支配道をつくり[はじまりの村]まで一気にすすむ。現地はいったい何がどうなってるんだろうか。
※ ※ ※ ※ ※
やって来ると村から少し外れたところに数頭のウマと、夜営用のテントがいくつか立てられ、十数人ほとの男が火を囲んで騒いでいた。どうやら宴の最中らしい。
──あれがノマドってやつかな──
ほぼ全員が何かしらの毛皮を着込んでいて、赤黒い肌にギラギラとした獣のような顔つきをしており、それが大きな焚火に照らされたせいでさらに凶暴そうに見える。北◯の拳に出てきた牙一族みたいな奴らだな。
精霊体だからバレないだろうと円陣に近づくと、全員が動きを止めて辺りをじろじろうかがう。どうした? まさか……まさか気づかれたのか。
数人が武器を持ちこちらを向く、間違いない気づいてる。慌てて二キロメートルくらい戻る。
──イツハ、なんなんだあれは。精霊の気配がわかるのか──
──わかんない、わかんないけど、気づかれてたと思うぅ──
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