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開戦そして籠城戦
決闘(ルール決定)
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嘆き悲しむアイン・トーカーに、ペッターのアドバイスを伝えると、泣きじゃくってくしゃくしゃの顔を上げ笑顔になる。
「ほ、本当にザンテツ・ケンジーは生き返るのか」
「ああ。ザンテツとかいう鍛冶屋に頼めばなんとかなるらしいぞ」
「あ、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう」
「いや、そんなに感謝しなくていいから。お約束しづらくなるし……」
「お約束?」
大事そうにザンテツ・ケンジーを鞘に納めたのを確かめたあと、アディにバトンタッチ。
触手ツタがオレの背後から現れると、アイン・トーカーに巻きつき持ち上げ振りかぶって思いっきり投げる。人間ロケット2発目だ。
──ペッター、起きてたんだな──
──ああ。クッキーが世界樹製駆体四号を動かした時にな。試作BAも順調のようでなによりだ──
──いちおう戦闘データは菌糸コンピューターに記録してある。それより北が、[はじまりの村]がノマドに襲われているんだ、助けに行きたい──
──どういう状況なんだ──
ことの始まりと経過それとさっきまで対応した策を話すと、ペッターはしばらく黙って何事か考えたあと、別にいいだろと素っ気ない返事をしてきた。
──おいおい、いくら他人に興味無いからってそれはないだろ──
──勘違いするな、もうやるべきことはやってるから、アンナ王女が[ヨツジ]に着くまでやることはないと言ってるんだ。なぜか王女代行になってるエルフなら対応できるさ。今は目の前の厄介事を片づけな──
目の前の厄介事って……。意識を男性型世界樹製躯体四号に戻すと、簡易闘技場には帝国軍陣地から続く長蛇の列ができていた。
「おわぁ、なんだなんだ」
「やっと気づいたか。世界樹の精霊よ、決闘を申し込む」
話しかけてきたのは列の先頭に立っている、白黒メッシュの頭に彫りの深い顔、上半身裸に左胸にプロテクター、下半身は革製ズボンにブーツ姿の、いかにも拳闘士という中年男だった。
「ちょっと待て。決闘はともかく後ろの列はなんだ」
「ふん、最強兵決定戦で負けた連中よ。おまえを倒して一発逆転を狙ってるあさましい奴らだ」
「お前もか」
「ち、ちがーう、オレ様は様子見の腕試しをして相手の力量を確かめたから、もう一度参戦するところだっただけだ」
……それを負けたというのではないだろうか。
「と、とにかく世界樹の精霊よ、決闘を申し込む。いざ、勝負」
勝負ったって、この先あれだけの数、目算で百人くらいか。そのたびにルールを説明するのが面倒だ。一気に片付けるか。
──クッキー──
──なんだペッター──
──そいつ等全員ひとりづつ相手してやれよ、そうすれば貴重なデータが手に入るぞ──
──そりゃ……──
急いで現状を再確認する。
帝国軍はすでに世界樹の森と敵対してしまった。エルザ女王の思惑通りにな。腹が立つが、何故かユーリが女王代行になってしまっているので、オレとしてはどうしても王国を守らなければという考えでいる。
王国の領地でもある[はじまりの村]が北の遊牧民族ノマドに襲われているが、本来なら知ったこっちゃない。だがユーリが女王代行である以上、報せない訳にはいかなかった……。
うん、ペッターの言うとおりお人好しもここまでだな。帝国軍がいなければ北の方を助けてやってもいいが、エルザ女王のおかげでこちらを対応しなくてはならない。ノマドの方は王国に任せよう。ユーリから頼まれたら助けてやるか。
さし当たってこちらとしては、まんまと敵対関係となってしまった帝国軍から得られるモノをもらおうじゃないか。経験値、いいね、沢山いただこうじゃないか。
──ペッター、腹は決まった。連中を相手してやるよ──
──なるべく相手のチカラ、引き出してやれよ──
自作の男性型世界樹製躯体とBAに自信があるのか余裕たっぷりの発言だ。でも戦うのオレなんだよな。
「よし、決闘を受けてやる。だがちょっと待ってくれ、用意があるから」
「なんだ、命乞いか」
なんかこいつ等自信過剰が多いな。無視して決闘待ちの列の横に等間隔でスピーカーツタを生やし、手元にマイクツタを生やす。
「あー、あー、聞こえるか決闘待ちの奴ら」
足元から声がしたので全員が身構える、ちょっと面白い。
「怖がらなくていい。世界樹の精霊、クチキだ。これから決闘する気のある連中に伝えておく、最強兵決定戦の話しはきいた。だからそれと同じルールでやる。互いに名乗ってから始め、負けを認めるか戦闘不能で決着。それでやるぞ」
列のあちこちでざわついたが、もう無視だ。さっさとやるか。
「待たせたな。じゃあやろうか、世界樹の精霊クチキだ」
「ふん、散々焦らしおって。では相手してやろう。我が名はノーケン、撲殺拳闘士のホクトウ・ノーケンだ。お前など指先ひとつで倒してやる」
また危なっかしい名前のやつが……。
お前はもう……死んでくれんかな……。
「ほ、本当にザンテツ・ケンジーは生き返るのか」
「ああ。ザンテツとかいう鍛冶屋に頼めばなんとかなるらしいぞ」
「あ、ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう」
「いや、そんなに感謝しなくていいから。お約束しづらくなるし……」
「お約束?」
大事そうにザンテツ・ケンジーを鞘に納めたのを確かめたあと、アディにバトンタッチ。
触手ツタがオレの背後から現れると、アイン・トーカーに巻きつき持ち上げ振りかぶって思いっきり投げる。人間ロケット2発目だ。
──ペッター、起きてたんだな──
──ああ。クッキーが世界樹製駆体四号を動かした時にな。試作BAも順調のようでなによりだ──
──いちおう戦闘データは菌糸コンピューターに記録してある。それより北が、[はじまりの村]がノマドに襲われているんだ、助けに行きたい──
──どういう状況なんだ──
ことの始まりと経過それとさっきまで対応した策を話すと、ペッターはしばらく黙って何事か考えたあと、別にいいだろと素っ気ない返事をしてきた。
──おいおい、いくら他人に興味無いからってそれはないだろ──
──勘違いするな、もうやるべきことはやってるから、アンナ王女が[ヨツジ]に着くまでやることはないと言ってるんだ。なぜか王女代行になってるエルフなら対応できるさ。今は目の前の厄介事を片づけな──
目の前の厄介事って……。意識を男性型世界樹製躯体四号に戻すと、簡易闘技場には帝国軍陣地から続く長蛇の列ができていた。
「おわぁ、なんだなんだ」
「やっと気づいたか。世界樹の精霊よ、決闘を申し込む」
話しかけてきたのは列の先頭に立っている、白黒メッシュの頭に彫りの深い顔、上半身裸に左胸にプロテクター、下半身は革製ズボンにブーツ姿の、いかにも拳闘士という中年男だった。
「ちょっと待て。決闘はともかく後ろの列はなんだ」
「ふん、最強兵決定戦で負けた連中よ。おまえを倒して一発逆転を狙ってるあさましい奴らだ」
「お前もか」
「ち、ちがーう、オレ様は様子見の腕試しをして相手の力量を確かめたから、もう一度参戦するところだっただけだ」
……それを負けたというのではないだろうか。
「と、とにかく世界樹の精霊よ、決闘を申し込む。いざ、勝負」
勝負ったって、この先あれだけの数、目算で百人くらいか。そのたびにルールを説明するのが面倒だ。一気に片付けるか。
──クッキー──
──なんだペッター──
──そいつ等全員ひとりづつ相手してやれよ、そうすれば貴重なデータが手に入るぞ──
──そりゃ……──
急いで現状を再確認する。
帝国軍はすでに世界樹の森と敵対してしまった。エルザ女王の思惑通りにな。腹が立つが、何故かユーリが女王代行になってしまっているので、オレとしてはどうしても王国を守らなければという考えでいる。
王国の領地でもある[はじまりの村]が北の遊牧民族ノマドに襲われているが、本来なら知ったこっちゃない。だがユーリが女王代行である以上、報せない訳にはいかなかった……。
うん、ペッターの言うとおりお人好しもここまでだな。帝国軍がいなければ北の方を助けてやってもいいが、エルザ女王のおかげでこちらを対応しなくてはならない。ノマドの方は王国に任せよう。ユーリから頼まれたら助けてやるか。
さし当たってこちらとしては、まんまと敵対関係となってしまった帝国軍から得られるモノをもらおうじゃないか。経験値、いいね、沢山いただこうじゃないか。
──ペッター、腹は決まった。連中を相手してやるよ──
──なるべく相手のチカラ、引き出してやれよ──
自作の男性型世界樹製躯体とBAに自信があるのか余裕たっぷりの発言だ。でも戦うのオレなんだよな。
「よし、決闘を受けてやる。だがちょっと待ってくれ、用意があるから」
「なんだ、命乞いか」
なんかこいつ等自信過剰が多いな。無視して決闘待ちの列の横に等間隔でスピーカーツタを生やし、手元にマイクツタを生やす。
「あー、あー、聞こえるか決闘待ちの奴ら」
足元から声がしたので全員が身構える、ちょっと面白い。
「怖がらなくていい。世界樹の精霊、クチキだ。これから決闘する気のある連中に伝えておく、最強兵決定戦の話しはきいた。だからそれと同じルールでやる。互いに名乗ってから始め、負けを認めるか戦闘不能で決着。それでやるぞ」
列のあちこちでざわついたが、もう無視だ。さっさとやるか。
「待たせたな。じゃあやろうか、世界樹の精霊クチキだ」
「ふん、散々焦らしおって。では相手してやろう。我が名はノーケン、撲殺拳闘士のホクトウ・ノーケンだ。お前など指先ひとつで倒してやる」
また危なっかしい名前のやつが……。
お前はもう……死んでくれんかな……。
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