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開戦そして籠城戦
ユーリってどんなヤツ
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ヒトハはアディをモデルにして性格をつくられている。
そのアディはオレのアニマ(女性格)を元にしている。だからヒトハはオレの性格を受け継いでいる。
ユーリと永遠契約したヒトハは、ユーリの性格の影響を受けている。
つまり、ヒトハはオレとユーリの考えが理解できる存在のはずだ。
ここ最近のヒトハの言動から考えるに、優先順位はユーリ、アディ、オレの順番らしい。
結婚相手、実母、実父の順か……、お父さんて寂しいなぁ。世のお父さん達もそうなんだろうか?
いかん、思考が脱線しかけた。
今、ヒトハに訊たいことは、ユーリが何を考えているか、だ。
──ヒトハ、ユーリはどういうつもりなんだ──
──わかりません。本当に聞いてないんです──
──どうして? ──
──余計な道筋をつくらないためだと──
それはたしか昨夜も聞いたな。つまりユーリは何手先、いや、何十手、何百手先まで読んでいるということなのだろうか。
──どうする、ここは孫子の兵法だな、[彼を知り己を知れば百戦危うからず]だ。ユーリはどんなヤツだ。キレイだ。……いやそうだけどそうじゃなくて、長い金髪とか白い素肌とかしなやかな肢体とか、形の良い乳房とか、よくしまったお尻とか、スラリとした手足とかじゃなくて、ツンとすました顔をしていながら意外と照れ屋でそこがまた可愛いとかじゃなくて……──
──あ、あの、お父様──
──なんだ、いま考え事をしてるんだが──
──いえあの、思考が洩れてます……──
──え、そうなの? 口をつぐんでいるんだが──
──お父様の精霊界の中なので、それは意味がないかと──
──あ、そうか。というか、そうだな。落ち着こう──
思考を閉じて考え続ける。
ユーリと出会ったのはそろそろ五年ほど前になるか。旅の途中でひと休みとか言ってしばらく[世界樹の森]に住んでいた。けど、真の目的は生き別れの姉妹ケーナを探していることだった。
カイマ事件の中でケーナは生きていて地下世界にいるということを知り、ユーリはそこに向かう決心をしている。
だが、地下世界は未知の世界。いくらユーリでも準備不足で向かうことは躊躇った。
そこでオレがカーキ=ツバタ王国の美聖女戦士が使用している神器ビキニアーマーを入手して、ユーリのために精霊仕様のビキニアーマーを開発しているのだ。
地下世界への入口は、[世界樹の森]より東のカーキ=ツバタ王国の東、の、天竜川くらいの幅のあるフライング大河をさらに越えて、歩いて三日ほどの先にある[大地の嘲笑い]という山脈のふもとにある洞窟だ。
正直、遠すぎて今のオレでは入口近くまでのサポートができない。だから大河の手前にあるカーキ=ツバタ王国に拠点をつくる必要があって、友好関係を保とうとしたんだが……。
──まさか戦争に巻き込まれるとはなぁ。これを片付けないと、おちおち大河越えの支配地拡大ができやしない。ああ、だからユーリは王国を守るという行動にでたのか、やっと理解した。しかしさすがだね、大賢者なんて二つ名を持つだけのことはあるよ。
いいオンナだよなぁ、知的美人ってやつかな。見てるだけでウットリしちゃうよなぁ。普段は狩りをしているだけあって動きも俊敏だし、カイマと戦った時も強くて戦乙女と見間違うかと思ったし、ああそういや口移しで世界樹の実を渡してくれたっけ。いい思い出だなぁ──
──お父様、お父様、また思考が洩れてますってば──
なんとなく慌てたヒトハに、また嗜められてしまった。
※ ※ ※ ※ ※
密談が終わったのか、シンシアが慌てて馬車から出るとヨセフさんと衛兵隊長に、すぐ帰国するよう伝える。
続いてアンナが出てきたので、デンワツタを前に持ってきて話をする。
「アンナ、何かあったのかい」
「クチキ様、申し訳ありませんが今は話せません。何もお役に立てず帰る無礼をどうぞお許しください」
アンナも話せないのか。
しかしシンシアとアンナのこの慌て様から察するに、よほどの事が起きたに違いない。
「わかった。話せるようになったら教えてくれ」
「では失礼します。ご武運をお祈りしてます」
用意ができた馬車に乗り、アンナ一行は一路カーキ=ツバタへと向かう。
見送ったあと、王国へ回線をつなぎユーリにどういうことかと訊ねる。
だがどういうわけか、真っ赤な顔をして睨まれてしまい、何も話すことはないと一方的に回線を切られてしまった。どうしたんだろう?
※ ※ ※ ※ ※
「ユーリ様、大丈夫ですか」
「大丈夫な訳ないだろう、まったく。時と場合を考えてもらいたいな」
真っ赤になった顔を手で扇ぎながらユーリは怒っているような、恥ずかしくて照れているような困った顔をしていた。
「アンナと王国について深刻で真面目な話をしている最中に、あんな恥ずかしい事を言い出しおって」
「申し訳ありません。お父様との会話を伝えるように心を繋いでましたのに、まさかあんな事を言い続けるとは」
「おかげでアンナに悟られぬよう、顔に出さないのに苦労してしまったわ」
ぷりぷりと頬を膨らませながら文句を言うユーリだったが、ヒトハは何となく嬉しそうだなと感じていた。
そのアディはオレのアニマ(女性格)を元にしている。だからヒトハはオレの性格を受け継いでいる。
ユーリと永遠契約したヒトハは、ユーリの性格の影響を受けている。
つまり、ヒトハはオレとユーリの考えが理解できる存在のはずだ。
ここ最近のヒトハの言動から考えるに、優先順位はユーリ、アディ、オレの順番らしい。
結婚相手、実母、実父の順か……、お父さんて寂しいなぁ。世のお父さん達もそうなんだろうか?
いかん、思考が脱線しかけた。
今、ヒトハに訊たいことは、ユーリが何を考えているか、だ。
──ヒトハ、ユーリはどういうつもりなんだ──
──わかりません。本当に聞いてないんです──
──どうして? ──
──余計な道筋をつくらないためだと──
それはたしか昨夜も聞いたな。つまりユーリは何手先、いや、何十手、何百手先まで読んでいるということなのだろうか。
──どうする、ここは孫子の兵法だな、[彼を知り己を知れば百戦危うからず]だ。ユーリはどんなヤツだ。キレイだ。……いやそうだけどそうじゃなくて、長い金髪とか白い素肌とかしなやかな肢体とか、形の良い乳房とか、よくしまったお尻とか、スラリとした手足とかじゃなくて、ツンとすました顔をしていながら意外と照れ屋でそこがまた可愛いとかじゃなくて……──
──あ、あの、お父様──
──なんだ、いま考え事をしてるんだが──
──いえあの、思考が洩れてます……──
──え、そうなの? 口をつぐんでいるんだが──
──お父様の精霊界の中なので、それは意味がないかと──
──あ、そうか。というか、そうだな。落ち着こう──
思考を閉じて考え続ける。
ユーリと出会ったのはそろそろ五年ほど前になるか。旅の途中でひと休みとか言ってしばらく[世界樹の森]に住んでいた。けど、真の目的は生き別れの姉妹ケーナを探していることだった。
カイマ事件の中でケーナは生きていて地下世界にいるということを知り、ユーリはそこに向かう決心をしている。
だが、地下世界は未知の世界。いくらユーリでも準備不足で向かうことは躊躇った。
そこでオレがカーキ=ツバタ王国の美聖女戦士が使用している神器ビキニアーマーを入手して、ユーリのために精霊仕様のビキニアーマーを開発しているのだ。
地下世界への入口は、[世界樹の森]より東のカーキ=ツバタ王国の東、の、天竜川くらいの幅のあるフライング大河をさらに越えて、歩いて三日ほどの先にある[大地の嘲笑い]という山脈のふもとにある洞窟だ。
正直、遠すぎて今のオレでは入口近くまでのサポートができない。だから大河の手前にあるカーキ=ツバタ王国に拠点をつくる必要があって、友好関係を保とうとしたんだが……。
──まさか戦争に巻き込まれるとはなぁ。これを片付けないと、おちおち大河越えの支配地拡大ができやしない。ああ、だからユーリは王国を守るという行動にでたのか、やっと理解した。しかしさすがだね、大賢者なんて二つ名を持つだけのことはあるよ。
いいオンナだよなぁ、知的美人ってやつかな。見てるだけでウットリしちゃうよなぁ。普段は狩りをしているだけあって動きも俊敏だし、カイマと戦った時も強くて戦乙女と見間違うかと思ったし、ああそういや口移しで世界樹の実を渡してくれたっけ。いい思い出だなぁ──
──お父様、お父様、また思考が洩れてますってば──
なんとなく慌てたヒトハに、また嗜められてしまった。
※ ※ ※ ※ ※
密談が終わったのか、シンシアが慌てて馬車から出るとヨセフさんと衛兵隊長に、すぐ帰国するよう伝える。
続いてアンナが出てきたので、デンワツタを前に持ってきて話をする。
「アンナ、何かあったのかい」
「クチキ様、申し訳ありませんが今は話せません。何もお役に立てず帰る無礼をどうぞお許しください」
アンナも話せないのか。
しかしシンシアとアンナのこの慌て様から察するに、よほどの事が起きたに違いない。
「わかった。話せるようになったら教えてくれ」
「では失礼します。ご武運をお祈りしてます」
用意ができた馬車に乗り、アンナ一行は一路カーキ=ツバタへと向かう。
見送ったあと、王国へ回線をつなぎユーリにどういうことかと訊ねる。
だがどういうわけか、真っ赤な顔をして睨まれてしまい、何も話すことはないと一方的に回線を切られてしまった。どうしたんだろう?
※ ※ ※ ※ ※
「ユーリ様、大丈夫ですか」
「大丈夫な訳ないだろう、まったく。時と場合を考えてもらいたいな」
真っ赤になった顔を手で扇ぎながらユーリは怒っているような、恥ずかしくて照れているような困った顔をしていた。
「アンナと王国について深刻で真面目な話をしている最中に、あんな恥ずかしい事を言い出しおって」
「申し訳ありません。お父様との会話を伝えるように心を繋いでましたのに、まさかあんな事を言い続けるとは」
「おかげでアンナに悟られぬよう、顔に出さないのに苦労してしまったわ」
ぷりぷりと頬を膨らませながら文句を言うユーリだったが、ヒトハは何となく嬉しそうだなと感じていた。
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