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開戦そして籠城戦
パートナーはユーリ
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とりあえずヒトハとも同期してアップデートをすますと、アディが反応する。
──クッキー、イツハ達から連絡よ帝国軍兵士が来てるから助けてほしいって──
──やっぱり来たか。ならアディ、イツハ達とともに誘惑で骨抜きにしてやってくれ。カイマ達みたいに養分にするんじゃなくて、適度に精……じゃなくてエナジーを抜いて生かして返すんだぞ──
──なんで養分にしちゃダメなのよ──
──いいから。ちゃんとこのくらい程度で生かして返すんだぞ──
ブツブツ言うアディに同期でイメージを伝え、世界樹の森に戻ってもらう。
ヒトハはそれを見送ると、オレに王国で何があったのか同期して伝える。
※ ※ ※ ※ ※
オレ達がヤラン・レーヤクとの交渉してからの約一日、王国ではそれなりに変化があったようだ。
交渉の使節団だと思ったら大規模な軍隊が来ていると知り、昨夜からエルザ王女以下、六つの貴族家と大臣による緊急会議がおこなわれていた。
実際には人質として王国にいるユーリも、ユグドラシル樹立国の大使として会議に参加する。
昨夜のうちにユーリと永遠契約をしたヒトハは[デンワツタ]を通り王宮内で待機し、なんと自力で[デンワツタ][カメラツタ][モニター]を解析し使えるようになっていた。
──アップデートの必要なかったかな──
──いいえお父様、他の[術]を識ることができましたし、覚えた[術]の精度も上がりましたわ。さすがですね──
わぁい、娘に褒められたーー。なんかすっごく嬉しいーー。って、浮かれている時じゃない、続き続き。
──会議は、戦局をみながら帝国との交渉をどうするかというのが議題で、最初は情報の少なさで進まなかったが、アンナからの衝撃の情報[王国に呼ばれて来た]が届いてから一気にヒートアップしたという。
ハッタリだと言う者、女王に本当かと詰め寄る者、ギルドの内通ではないかと言う者、貴族の誰かが内通していると言う者、大臣の誰かと言う者……。
なんの証拠も無いから疑心暗鬼となり、空気が悪くなり沈黙が続く頃、エルザ女王による「新事実が分かるまで休憩」の言葉で会議はいったん終了した。
会議中、ユーリはずっと黙っていた。憶測で話すことは悪手だと知っているからだ。
自室に戻ろうとすると、親衛隊でもある美聖女戦士のひとりに呼び止められ、エルザ女王のところへ案内されると、そこで予想外の頼まれごとをする。なんと女王代行をしてほしいというのだ。
──なに言い出したんだエルザは?! 意図が解らない──
それに対してユーリは当然断わる。王族の者でもましてや王国の者でもない自分がなるわけにはいかないという、至極まともな理由だった。
対してエルザ女王の理由は、大臣では力不足だし、六つの貴族では誰がなってもまとまらない、ユーリは建国の祖のひとりでもあるから、十分資格がある、それゆえなってほしいというのだ。
──いやいやいや、こじつけだろそれ。百年前の功績を持ち出されても皆んな納得しないだろうに──
ユーリも同じ理由で再度断る──と思ったが、なんと引き受けた。
──ヒトハ、本当に引き受けたのか? ──
──ええお父様。さすがに女王代行にはなりませんでしたが、王国の危機を乗り越えるまでの期間限定で相談役を引き受けました──
──なんでか聞いてるか──
──いえ、ですがユーリ様のことですから何か深慮があるとは思います──
それが前日の夜のこととなると、この一日でどうなったかもっと知りたい。
ユーリに直接会って話を聞きたいから、ヒトハに取り次ぎを頼み、王宮のユーリの部屋に移動した。
※ ※ ※ ※ ※
「大変な一日だったなクッキー、モニターで観てたよ」
モニターとデンワツタ越しに久しぶりにあったユーリは、寝間着姿でベッドに腰掛けていた。
「ヒトハに聞いたぞ、相談役になったんだって」
「ああ。思うところあってな」
「それを訊きたい。どういうつもりなんだ」
「あー……まあ先々の事を考えたら、マシな手だと思ったからだな」
「だから具体的にだな」
──お父様、ユーリ様の深慮は多岐にわたります。すべてを説明するわけにはいかないのです──
ヒトハが庇うような言い方をするのでカチンときた。
「ヒトハは黙ってろ、オレはユーリと話してるんだ」
──いいえ黙りません。永遠契約をした以上、ユーリ様は私のパートナーです──
「オレは父親なんだろうが」
──今はユーリ様のパートナーです──
……永遠契約の意味が解った。信頼度とか親密度みたいなのの優先度が変わるんだ。親よりパートナーの方が上になるんだ。
「ヒトハ、私が説明するから少し黙っていなさい」
──はい──
やっぱりユーリの言うことは素直にきくんだな。
「クッキー、ヒトハの言うとおり先のことは多岐に渡る。だから余計なことを言って流れを変えたくないからヒトハには伝えてない。エルザの申し出にはもちろん思惑がある、だからそれを踏まえてこちらの目的を達成するため相談役を引き受けた。なので今は何も訊かないでほしい」
「……わかったよ。ユーリを信じる。けど、今日何があったかは話せるだろ、それは教えてほしい」
──クッキー、イツハ達から連絡よ帝国軍兵士が来てるから助けてほしいって──
──やっぱり来たか。ならアディ、イツハ達とともに誘惑で骨抜きにしてやってくれ。カイマ達みたいに養分にするんじゃなくて、適度に精……じゃなくてエナジーを抜いて生かして返すんだぞ──
──なんで養分にしちゃダメなのよ──
──いいから。ちゃんとこのくらい程度で生かして返すんだぞ──
ブツブツ言うアディに同期でイメージを伝え、世界樹の森に戻ってもらう。
ヒトハはそれを見送ると、オレに王国で何があったのか同期して伝える。
※ ※ ※ ※ ※
オレ達がヤラン・レーヤクとの交渉してからの約一日、王国ではそれなりに変化があったようだ。
交渉の使節団だと思ったら大規模な軍隊が来ていると知り、昨夜からエルザ王女以下、六つの貴族家と大臣による緊急会議がおこなわれていた。
実際には人質として王国にいるユーリも、ユグドラシル樹立国の大使として会議に参加する。
昨夜のうちにユーリと永遠契約をしたヒトハは[デンワツタ]を通り王宮内で待機し、なんと自力で[デンワツタ][カメラツタ][モニター]を解析し使えるようになっていた。
──アップデートの必要なかったかな──
──いいえお父様、他の[術]を識ることができましたし、覚えた[術]の精度も上がりましたわ。さすがですね──
わぁい、娘に褒められたーー。なんかすっごく嬉しいーー。って、浮かれている時じゃない、続き続き。
──会議は、戦局をみながら帝国との交渉をどうするかというのが議題で、最初は情報の少なさで進まなかったが、アンナからの衝撃の情報[王国に呼ばれて来た]が届いてから一気にヒートアップしたという。
ハッタリだと言う者、女王に本当かと詰め寄る者、ギルドの内通ではないかと言う者、貴族の誰かが内通していると言う者、大臣の誰かと言う者……。
なんの証拠も無いから疑心暗鬼となり、空気が悪くなり沈黙が続く頃、エルザ女王による「新事実が分かるまで休憩」の言葉で会議はいったん終了した。
会議中、ユーリはずっと黙っていた。憶測で話すことは悪手だと知っているからだ。
自室に戻ろうとすると、親衛隊でもある美聖女戦士のひとりに呼び止められ、エルザ女王のところへ案内されると、そこで予想外の頼まれごとをする。なんと女王代行をしてほしいというのだ。
──なに言い出したんだエルザは?! 意図が解らない──
それに対してユーリは当然断わる。王族の者でもましてや王国の者でもない自分がなるわけにはいかないという、至極まともな理由だった。
対してエルザ女王の理由は、大臣では力不足だし、六つの貴族では誰がなってもまとまらない、ユーリは建国の祖のひとりでもあるから、十分資格がある、それゆえなってほしいというのだ。
──いやいやいや、こじつけだろそれ。百年前の功績を持ち出されても皆んな納得しないだろうに──
ユーリも同じ理由で再度断る──と思ったが、なんと引き受けた。
──ヒトハ、本当に引き受けたのか? ──
──ええお父様。さすがに女王代行にはなりませんでしたが、王国の危機を乗り越えるまでの期間限定で相談役を引き受けました──
──なんでか聞いてるか──
──いえ、ですがユーリ様のことですから何か深慮があるとは思います──
それが前日の夜のこととなると、この一日でどうなったかもっと知りたい。
ユーリに直接会って話を聞きたいから、ヒトハに取り次ぎを頼み、王宮のユーリの部屋に移動した。
※ ※ ※ ※ ※
「大変な一日だったなクッキー、モニターで観てたよ」
モニターとデンワツタ越しに久しぶりにあったユーリは、寝間着姿でベッドに腰掛けていた。
「ヒトハに聞いたぞ、相談役になったんだって」
「ああ。思うところあってな」
「それを訊きたい。どういうつもりなんだ」
「あー……まあ先々の事を考えたら、マシな手だと思ったからだな」
「だから具体的にだな」
──お父様、ユーリ様の深慮は多岐にわたります。すべてを説明するわけにはいかないのです──
ヒトハが庇うような言い方をするのでカチンときた。
「ヒトハは黙ってろ、オレはユーリと話してるんだ」
──いいえ黙りません。永遠契約をした以上、ユーリ様は私のパートナーです──
「オレは父親なんだろうが」
──今はユーリ様のパートナーです──
……永遠契約の意味が解った。信頼度とか親密度みたいなのの優先度が変わるんだ。親よりパートナーの方が上になるんだ。
「ヒトハ、私が説明するから少し黙っていなさい」
──はい──
やっぱりユーリの言うことは素直にきくんだな。
「クッキー、ヒトハの言うとおり先のことは多岐に渡る。だから余計なことを言って流れを変えたくないからヒトハには伝えてない。エルザの申し出にはもちろん思惑がある、だからそれを踏まえてこちらの目的を達成するため相談役を引き受けた。なので今は何も訊かないでほしい」
「……わかったよ。ユーリを信じる。けど、今日何があったかは話せるだろ、それは教えてほしい」
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