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オーケストラピットかよー
御対面
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全方位魔法陣の中には味方の兵士達もいたのに、かまうことなく攻撃したヤラン・レーヤクに心底腹が立った。
魔法陣が消え、火炎柱により焼け野原となった風景を見ておそらくヤラン・レーヤクはさぞかし満足しているだろうな。だがしかしだ。
──イツハ、大丈夫か──
世界樹の森から南部方面担当のイツハと、この辺りの草木は繋がっている。痛みは無いだろうが、精霊力に影響がある。
──大丈夫ですよお父様、一緒に辺り一帯の草木を避難させましたから──
──よし、ならば反撃させてもらおうか──
交渉云々はあとまわしだ、個人的にヤラン・レーヤクが許せない、お仕置きさせてもらおうか。
「触手ツタ」
油断しているヤラン・レーヤクを地中からウマごと無数の触手ツタで絡め取る。
「な、なんだと、これはどういう…うっ」
呪文詠唱をさせないために口を触手ツタで塞ぐ。完全に沈黙させたことを確認してウマは開放して走り去らせる。
「ふ、ふぐっ、ふぐぅ」
ウマがいなくなったことで宙づり状態となったヤラン・レーヤクの前に、避難していた地中より全身から精霊力を放出しつつ威厳ある演出をして出てくる。
「ふぐっ、ふぐっ、ふぐぅ!!」
「ご自慢の火炎攻撃も、地面の中までは届かなかったようですね。ご安心なさい、お仲間の兵士たちも助けてありますよ」
触手ツタを複数つかって全身をサヤのように包み、一緒に地中に避難。暴れると困るからヨッパライ草の花粉を[品種改良]で麻酔薬にして眠らせる。
ヤラン・レーヤクが二つ同時に魔法を使えたらバレてしまったが、どうやら最強呪文詠唱に集中して効果は切れていたらしい。彼らを地上に出してサヤから顔を出す。
「さて、」
正直、怒りのままに八つ裂きにしてやりたかったが、感情にまかせるわけにはいかない。
──アンナ、コイツ等を本陣まで連れていくぞ──
──どうするつもりなんですか──
──ヤラン・レーヤクには交渉を決裂させた責任を取ってもらう。コイツのせいで世界樹を怒らせた、だから駐屯は許さないと伝えるつもりだ──
ヤラン・レーヤクを宙づりに、兵士達はサヤに入れたまま引きずって歩き始める。美女が怪力なのはファンタジーのお約束だもんな。
とはいえ、これだけの荷物を持って歩くとさすがに時間がかかる。到着する頃には日が傾きはじめていた。
そして帝国軍は盾と無数の弓矢を構えて出迎えてくれた。
兵士達をサヤから取り出し、気つけ薬を嗅がせて起こす。
「こ、ここは……」
「帝国軍のところです。御身体の方は大丈夫ですか」
何が起きたか分からずに、しばらくボゥっとしてから目に光が宿ってくる。
「あ、あいつは、ヤランの野郎はどこだ」
「あの野郎、おれ達を操りやがって」
ふらふらしながらも立ち上がったので、帝国軍はどよめく。
「ヤラン・レーヤクは捕獲しています。お渡ししてもいいですが、その前に責任者を呼んでいただけますか」
「それは……」
オレをまじまじと見たあと、要求をきいてくれた。
「……仕方無い、ここまでして助けてもらった借りは返さねばな」
精霊を下に見ているとはいえ、これだけ大勢の前で騙し討ちすれば評判が落ちる、面子を大事にする兵士としてはそうするしかないだろうな。
彼らが軍勢の中に消えていったあと、帝国軍を観察する。が、向こうも珍しいのかどいつもこいつももジロジロと見てくる。それにしてもガヤつくな。精霊がそんなに珍しいのだろうか。なんか目つきもイヤらしいし。
※ ※ ※ ※ ※
しばらくして豪華というか気品のある鎧に包まれた金色短髪の若者が供を連れてやって来た。
オレの目を通してアンナ達にも映像を送る。
──誰だか分かるかい──
これにはシンシアが答える。
──白銀の鎧に水竜の刻印、ガリアニア領国のものです。ということは、ルシア・ガリニア・ファスティトカロン領主ではないでしょうか──
金髪若者が俺の前に立つと、ため息をつきながらのたまう。
「あー、私は精霊に会うのが初めてなのだが、みなそのような格好なのか」
格好? 白い布がそんなに変な……
言われて気がついた、真っ裸じゃないか、なんでだ?!
あ?! 火炎攻撃のせいか。そのあと地中に潜ったから跡形も無い状態なのか。
でもなんで気がつかなかった? あー、壱号機躯体だからか。初期型の躯体は触覚がまだ装備されてなかったよ。ヤバい、が、ここであたふたしたら見くびられる。
「まあそうですね、衣服はヒトの手で作られたものですから」
兵士達を包んでいたサヤをバラして身体にまとわせビキニ姿にしてみたが、まだ露出が多いな。なのでツタによるワンピースドレスにしてみた。
「普段はこのような姿なのですが、あなた方のお仲間を助けるために仕方なく外していました」
「そうか……それは気遣いに感謝する」
よし、自分の羞恥心より人命救助が大事という印象をつけたぞ、たぶん。
「あらためまして、世界樹の森の主、クチキ・ユグドラシル・シゲコです。御用件はこちらの無礼者に伺いました。駐屯の件は許可しません、お引取りを」
魔法陣が消え、火炎柱により焼け野原となった風景を見ておそらくヤラン・レーヤクはさぞかし満足しているだろうな。だがしかしだ。
──イツハ、大丈夫か──
世界樹の森から南部方面担当のイツハと、この辺りの草木は繋がっている。痛みは無いだろうが、精霊力に影響がある。
──大丈夫ですよお父様、一緒に辺り一帯の草木を避難させましたから──
──よし、ならば反撃させてもらおうか──
交渉云々はあとまわしだ、個人的にヤラン・レーヤクが許せない、お仕置きさせてもらおうか。
「触手ツタ」
油断しているヤラン・レーヤクを地中からウマごと無数の触手ツタで絡め取る。
「な、なんだと、これはどういう…うっ」
呪文詠唱をさせないために口を触手ツタで塞ぐ。完全に沈黙させたことを確認してウマは開放して走り去らせる。
「ふ、ふぐっ、ふぐぅ」
ウマがいなくなったことで宙づり状態となったヤラン・レーヤクの前に、避難していた地中より全身から精霊力を放出しつつ威厳ある演出をして出てくる。
「ふぐっ、ふぐっ、ふぐぅ!!」
「ご自慢の火炎攻撃も、地面の中までは届かなかったようですね。ご安心なさい、お仲間の兵士たちも助けてありますよ」
触手ツタを複数つかって全身をサヤのように包み、一緒に地中に避難。暴れると困るからヨッパライ草の花粉を[品種改良]で麻酔薬にして眠らせる。
ヤラン・レーヤクが二つ同時に魔法を使えたらバレてしまったが、どうやら最強呪文詠唱に集中して効果は切れていたらしい。彼らを地上に出してサヤから顔を出す。
「さて、」
正直、怒りのままに八つ裂きにしてやりたかったが、感情にまかせるわけにはいかない。
──アンナ、コイツ等を本陣まで連れていくぞ──
──どうするつもりなんですか──
──ヤラン・レーヤクには交渉を決裂させた責任を取ってもらう。コイツのせいで世界樹を怒らせた、だから駐屯は許さないと伝えるつもりだ──
ヤラン・レーヤクを宙づりに、兵士達はサヤに入れたまま引きずって歩き始める。美女が怪力なのはファンタジーのお約束だもんな。
とはいえ、これだけの荷物を持って歩くとさすがに時間がかかる。到着する頃には日が傾きはじめていた。
そして帝国軍は盾と無数の弓矢を構えて出迎えてくれた。
兵士達をサヤから取り出し、気つけ薬を嗅がせて起こす。
「こ、ここは……」
「帝国軍のところです。御身体の方は大丈夫ですか」
何が起きたか分からずに、しばらくボゥっとしてから目に光が宿ってくる。
「あ、あいつは、ヤランの野郎はどこだ」
「あの野郎、おれ達を操りやがって」
ふらふらしながらも立ち上がったので、帝国軍はどよめく。
「ヤラン・レーヤクは捕獲しています。お渡ししてもいいですが、その前に責任者を呼んでいただけますか」
「それは……」
オレをまじまじと見たあと、要求をきいてくれた。
「……仕方無い、ここまでして助けてもらった借りは返さねばな」
精霊を下に見ているとはいえ、これだけ大勢の前で騙し討ちすれば評判が落ちる、面子を大事にする兵士としてはそうするしかないだろうな。
彼らが軍勢の中に消えていったあと、帝国軍を観察する。が、向こうも珍しいのかどいつもこいつももジロジロと見てくる。それにしてもガヤつくな。精霊がそんなに珍しいのだろうか。なんか目つきもイヤらしいし。
※ ※ ※ ※ ※
しばらくして豪華というか気品のある鎧に包まれた金色短髪の若者が供を連れてやって来た。
オレの目を通してアンナ達にも映像を送る。
──誰だか分かるかい──
これにはシンシアが答える。
──白銀の鎧に水竜の刻印、ガリアニア領国のものです。ということは、ルシア・ガリニア・ファスティトカロン領主ではないでしょうか──
金髪若者が俺の前に立つと、ため息をつきながらのたまう。
「あー、私は精霊に会うのが初めてなのだが、みなそのような格好なのか」
格好? 白い布がそんなに変な……
言われて気がついた、真っ裸じゃないか、なんでだ?!
あ?! 火炎攻撃のせいか。そのあと地中に潜ったから跡形も無い状態なのか。
でもなんで気がつかなかった? あー、壱号機躯体だからか。初期型の躯体は触覚がまだ装備されてなかったよ。ヤバい、が、ここであたふたしたら見くびられる。
「まあそうですね、衣服はヒトの手で作られたものですから」
兵士達を包んでいたサヤをバラして身体にまとわせビキニ姿にしてみたが、まだ露出が多いな。なのでツタによるワンピースドレスにしてみた。
「普段はこのような姿なのですが、あなた方のお仲間を助けるために仕方なく外していました」
「そうか……それは気遣いに感謝する」
よし、自分の羞恥心より人命救助が大事という印象をつけたぞ、たぶん。
「あらためまして、世界樹の森の主、クチキ・ユグドラシル・シゲコです。御用件はこちらの無礼者に伺いました。駐屯の件は許可しません、お引取りを」
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