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オーケストラピットかよー

不敗の魔術師

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火竜の息吹ファイヤブレス
火竜の息吹ファイヤブレス
火竜の息吹ファイヤブレス

 ヤラン・レーヤクは連続して火炎魔法を放つが、その度に分厚い草の壁を創るのでまるで届かない。
 その間にスキル[品種改良]をつかって草を改良する。

ええっと、葉蘭型の葉を細胞壁を硬く厚くして、水分を多めに含むようにして、垂直に真っ直ぐヒトの大きさまで成長させると。

火竜の息吹ファイヤブレス」「火竜の息吹ファイヤブレス」「火竜の息く吹ファイヤブレス」「火竜の息吹ファイヤブレス」「火竜の息吹ファイヤブレス」「火竜の息吹ファイヤブレスゥゥゥゥ」

 厚みのある盾の草が無数に並ぶので、なかなか燃えない。ヤラン・レーヤクはだんだんヤケクソみたいになってきたな。

──アンナ、コイツ強いのか? ──

面倒くさくなってきたので、イツハに厚盾草を任せて、アンナ達と会話をする。

──エニスタが詳しいから代わります──
──代わりました、エニスタです。ヤラン・レーヤクはリュキアニア王国最強の魔術師で不敗の名をほしいままにしています。帝国との戦争では王国は敗北ましたが、彼自身は敗走していないときいております──

──エニスタさんからみてコイツの実力はどうなの? ──

──私は戦士なので魔法はそれほど詳しくありませんが中級火炎系攻撃魔法の火竜の息吹ファイヤブレスをあれほど放てるのは、かなりの実力だと思います──

──そうなんだ。で、このあとどうしたらいいと思う──

──魔力が尽きるまで耐えて、勝てないことを思い知ってもらいましょう。それから交渉してみたらどうでしょうか──

まあそんなとこかな。横綱相撲ってとこか。

──お父様、もう攻撃が止まってますよ──

イツハに教えてもらって、攻撃が止まっていることに気がついた。
 厚盾草を左右に分けてヤラン・レーヤクを見ると、肩で息をして今にも倒れそうになっている。

「こ、こんな馬鹿な……リュキアニア最強の魔術師であるこの私が……不敗の魔術師と呼ばれたこのワタシが……」

 その二つ名はやめておけ。

「ヤラン・レーヤクさん、あらためてお伝えします。私の森に立ち入ることもましてや駐屯することも許しません、お引取りを」

「そ、そんなわけには……」

「譲歩して、今いる場所に駐屯するなら水を分けて差し上げましょう。それで如何です」

 これを聞いてアンナが咎める。

──ちょっとクチキ殿、駐屯を認めるんですか──

──落とし所をつくってあげないと向こうも意地になるからな。場所的には何もできない所だから大丈夫──

 帝国軍がいるところは中途半端なところで、カーキ=ツバタ王国に行くには戻って旧街道を使わなくてはならない。
 旧街道は整備されていないから、あれだけの大軍となると行軍はかなり大変だろう。とりあえず足留めにはなる。

 休んで少しは回復したのか、ヤラン・レーヤクはなにやらブツブツ呟いたあと、話しかけてきた。

「ここで引き下がるわけにはいかぬのだよ、このやり取りはもう本隊に見られている。ワタシは帝国との戦争でかなり戦果をあげてしまったので、属国となった今は肩身が狭いのだ。それなりの功をあげないと戻れぬのだよ」

「……個人的事情は分かりました。ですが今は私情ではなく大義で行なうときでは」

「大義ならあるとも。得体のしれない森の怪物で兵士が倒された。不敗の魔術師である私は敵を討ち、帝国軍の駐屯地を確保するというな」

「貴殿の実力ではそれは無理かと」

「ふ、ふん、今までのは小手調べだ。私の真の実力を思い知るがいい」

 ヤラン・レーヤクは懐から小瓶を取り出すと中の液体を飲み干す。

──あれは何? ──

──魔力回復薬マジックポーションですね。なるほど火竜の息吹を連発出来たわけだ──

なんだ、魔力回復薬を飲みながらやってたのか。厚盾草で見えてなかったから気がつかなかったよ。

 回復を待ってからまた攻撃を防ぎきってやるかと考えていたら、酔っぱらい状態の兵士二人が切りかかってきた。

 おお、もう花粉が抜けたのかと思ったが、どう見てもまだ酔っぱらい状態だ。だが剣をかまえてオレに挑んでくる。
 厚盾草コウジュンソウで防ごうとしたが切り裂かれる。火に強いが刃物に弱かったか。
 ならばと触手ツタ二本を身体から生やして剣撃を受けながら対応をする。

──どうなっているんだ一体──

このバグにはエニスタが答えてくれた。

──おそらく身体玩具操作マニビュレイトの呪文で操られているのでしょう。魔術師は何かしらの呪文、おそらく上級攻撃魔法を詠唱していますから、その間の援護であやつられているとみました──

 それを聞いてさすがにカチンときた。

「ヤラン・レーヤク、貴方はお味方をなんだと思っている──のです。彼らの意志を無視するなんて、人として恥ずかしくないのか──ですか」

 詠唱に集中しているのかヤラン・レーヤクは返事をしない。ならばと直線攻撃をしようと触手ツタをヤラン・レーヤクに向けるが、驚いたことに兵士たちは体を張ってそれを防ぐ。

「ヤラン・レーヤク、この人たちに何をした──んです」

 詠唱が終わったらしく、ようやくこちらの問いにこたえた。

「くくく、ソイツらこのワタシをいかなることがあっても命懸けで護るようにしてあるのよ。そしてそしてそしてぇぇぇ、クソアマ精霊よ、黒焦げにしてくれるわぁぁぁ、このワタシの最強呪文でなぁ、火竜群包囲集中咆哮バーニングロゥアァァァズ

 呪文とともに、オレの周りに半球状態で魔法陣が取り囲み、そこから一斉に火炎柱が放出される。

「クゥアッハハハ、ザマアミロ、クソアマ精霊、消し炭になるがよいわぁ」

ヤラン・レーヤクの高笑いが草原に響きわたった。
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