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オーケストラピットかよー

これが世界樹の森です

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 それなら問題なさそうだなとは思うが、念のために契約は破棄できるのかを訊いてみる。

「うん。契約は簡易契約ラバーズ正式契約エンゲージ永遠契約マリッジの三段階があるけど、どれも当人同士の意志で破棄できるよ」

永遠契約の意味が無いな。

ともかくそれなら大丈夫だろうと、やってもいいとヒトハに伝えると森に戻ろうとすると

「ねえクッキー、マリオネットって必要じゃない。そうでしょ、いるでしょ、でもクッキー忙しいよね、じゃああたしが持ってってあげる」

などと早口で言うが早いか、アディは四号機躯体に憑依して森に向かって歩き始める。

ヨセフさんから逃げたのがバレバレな行為だが、マリオネットが必要なのも事実なので、しょうがないなと思いながらもまかせることにした。

※ ※ ※ ※ ※

「ということで、アディにはマリオネットを持ってきてもらってます」

 森に戻り、テレビ越しにヨセフさんに説明すると、表情には表さなかったが、不満げな空気がにじみ出ていた。

「マリオネットは誰でも使えるんですか」

好奇心旺盛なアンナから質問されて、正直に答える。

「誰でもという訳ではないです。素材が世界樹なので、私とバディであるアディ、試してはないけど上級ドライアド達ならできるとおもいます」

「他にもドライアドがいるんですか」

「そうです。そうですね、帝国のことをもう少し訊きたいのですが、こちらの森のことを説明しましょう」

 記録係をかって出たモーリが紙を新しいのに換えたタイミングで話しはじめる。

「世界樹の森は、私が影響支配している範囲を言います。
 マナと魔素は御存知ですよね。大気中にある魔素を植物や動物が取り入れてマナとなります。
 自然の法則で生えている草木があります。
そこに上級ドライアドが指示している下級ドライアドが支配して、魔素を上級ドライアドに送り、それを私に送ります。
 私はそれを精霊力ソウルに変換して放出し、元の草木に戻します。この範囲が私の森ということです」

「具体的にはどのくらいの範囲なんです」

「西側はピザトラ砂漠という砂海があるのでほぼ無いですが、東の方は半径十キロメートルほどの半円くらいの大きさです。
 それと街道をとおして王国を囲んでいる生け垣ですね」

 正直に言ったのに、ひかれてしまった。

「それはつまり、クチキ様がその気になれば王国に危害を加えられるということか」

アンナではなく、エニスタに質問にされる。

「──正直に言いますと、できます。でもせいぜいつる草を伸ばす程度ですけどね」

 本当は本気でやれば東西二キロ半、南北四キロの王国を囲んでいる生け垣をひと晩で枯らすことができる。
 そうすれば地盤が崩れて物理的に王国を崩壊することが出来るが、今は黙っておこう。

「そして精霊力を受けた草木が私の支配下になるということです」

「支配下にされるとどうなるんですか」

今度はアンナからだ。

「成長の調整ができます。なので、今回の対応が成功した場合、王国、正確には王族の管理地となる新街道より東の方の草木を、豊かな畑にすることが可能です」

この言葉にアンナは少しホッとしたようだ。
 エルザ女王なら無表情だが、アンナはまだまだ感情が顔に出てしまうな。

 フライング大河の東にある広大な草原は、カーキ=ツバタ王国のものであって、そうでないという不思議な理由は、ユーリからの情報で解った。

 王国の貴族は六家あるのだが、それらはもともと草原で住んでいた村の村長たちだ。
 国王とはいえクワハラは他所者だ。あの土地は我々のものだと全員に主張されては、受け入れるしかなかった。
 だからクワハラ王家の支配地は城壁内すべてと、大河より西の痩せた土地しかない。

 その痩せた土地をオレの支配地にすれば土地改良があっという間にすみ、王家の財産が増え、六家に対抗できるという訳だ。

 どうやら王国もそれなりにゴタゴタがあるらしいが、それには触れないでおこう。面倒事を増やしたくない。

「クチキ様、質問があります」

礼儀正しく質問してきたのはシンシアだった。

「なにか」

「先程から上級とか下級とか仰っしゃられてますが、ドライアドには階級があるのですか」

「あー、いわゆる身分による階級はありません。成長の差ですね。アディももともと下級でしたが、担当樹木が百年以上たっているので高位樹木精霊ハイドライアドになってます」

「そうですか。さしでましいですが、呼び方を変えられてはどうでしょうか」

「といいますと」

「対応中にその話題がでて精霊にも階級があると思われると上下関係を強調されるかもしれません。細かいことですが念のためにどうでしょうか」

「お気遣い感謝します。それの判断はアディのものなので、あとで訊いてみます。とりあえず森のことは以上としておきます、質問があればまたお答えします」

 アンナ達は頷くと、シンシアがふたたび帝国について話しはじめる。今度はその成り立ちと現帝王の人となりについてだった。

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