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文字通り東奔西走かよー
ウルトラダッシュで西へ
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──王宮に近い城壁に、王室御用達の魔導師と魔術師数人により、限定対魔術結界を一部だけ外してもらい、生け垣からのツタを一本伸ばして中に入れる。
「これを女王陛下の執務室まで伸ばし、そこで会話できるように加工します」
説明責任を果たしながら、できるだけ信用されるようにする。
なにせ最高責任者に直通電話を作るんだからな。
王宮近衛隊長と親衛隊にも見守られながら、疑われないように作業を続ける。
──無事に執務室まで伸ばすと、昔ながらの受話機と本体のあるデザイン(なるだけ高級感を出してみた)に加工して机の上に置いた。
「あとあと回線が増えるかもしれませんが、とりあえずモーリ大使のところと、オレ…じゃなくて私のところに繋げるようにしました。受話機を取り、ここのボタンを押すと、相手側に呼び出し音が鳴り、向こうも受話器を取ると話ができるようになります」
もうお昼を過ぎているから後援部隊も着いている頃だろう。使い方を見せるために、まずはオレがモーリのどころにかけてみせる。
数回の呼び出し音のあと、モーリがでる。
「はいはいこちらモーリでございます」
「モーリ、こちらはクチキだ。たった今、王宮に取り付けたよ」
このままモーリと話すつもりだったが、急に相手が代わった。
「クチキ様? アンナです、本当に王宮と繋がったのね。お母様に代わって」
事情を説明してエルザ女王に受話器を渡すと、さして怖気づくこともなく、それを耳にあてる。
「アンナですか」
「お母様、本当にお母様の声だ。すごい、こちらはもう森なんですよ。こんなに離れているのにお母様の声が聴こえるなんて」
大興奮するアンナに、落ち着くように諭すエルザ女王はそのまま話し込みそうだったが、意外にもすぐにオレに代わってほしいと言ってきた。
「代わりました。どうかされましたか」
「あの、ですね、そちらのアディさんとゾフィ達がただいま闘っている最中なんですよ。止めてもらえませんか」
──想定すべき事態だった。
アディとゾフィを会わせれば、モメるのは想像できたじゃないか。
「いま、どのようになっていますか」
「大使館の前で、襲ってくる森のツタをゾフィ達が剣で斬りむすんでいるところです」
「マリオネット、じゃなかったヒトの形じゃないんですね」
「ええ。テレビっていうんですの? アディさんはその中にいます」
「……わかりました。すぐに止めに行きます」
その場に居るヒト達に向こうの状況を話し、今すぐ森に戻る事を伝える。
「間に合うんですの」
「城壁の外に出れば何とかなります。では失礼」
案内の衛兵を伴い、ユーリの居る部屋へと向う。
「どうしたクッキー、そんなに慌てて」
「森でアディとゾフィがモメてるらしい、すぐに戻らないといけないから挨拶しにきた」
「ああ、──当然の結果か。しばらく会えなくなるな」
そう言うとユーリはオレに抱きついてくる。そして耳元で囁く。
「エルザにデンワは取り付けたか」
「ああ。とりあえずモーリとしか話せないようにしてある」
「ふむ。ならばつもる話は後でだな」
「城壁の外に出たら、マリオネットを生け垣に隠して意識だけ森に戻る。じゃないと一日かかるからな」
「意識だけなら」
「ひと呼吸する間もなく行けるよ」
「わかった。じゃあ連絡を待ってるからな」
軽くキスをしたあと、衛兵とともに城壁外に出る。
移動方法がバレないように一旦走って街道を進むが、見えないところまで来たら街路樹の上に跳び乗り、マリオネットを隠して意識体で森に戻る。
光と電気の速さはおよそ同じだという。
意識体という精神エネルギーは、ある意味電気信号に似ているから、オレの移動速度は光並みなのだろう。すぐにアディのところまでやって来た。
「このっ、この、しぶといわね、さっさと負けを認めなさいよ」
森の草木というか主にツタを夢中で操り奮闘しているアディは、かなりの興奮状態だった。
「アディ、落ち着いて。何をやってるんだ」
精霊体のまま、精霊空間でアディを羽交い締めにする。
「止めないでよクッキー、今日こそ決着をつけてやるんだから」
カメラツタを使って外を見ると、剣を構えたゾフィと知らない二人が互いに背を合わせ、四方八方から来るツタを斬り落としていた。
「やめないかっ!!」
「いやよっ!!」
「アディ!!」
羽交い締めを離して腰のあたりを両腕で掴むと、そのままバックドロップをかける。
「ぷぎゃっ」
見事に弧を描いてアディが後ろにひっくり返る。
ようやく大人しくなったので森の支配権を奪い取り、ツタの攻撃を止めた。
スピーカーツタを使い、ゾフィに話しかける。
「ゾフィさん、オレだ、クッキーだ。いまアディを抑えた、そちらもひいてくれ」
闘志むき出しで肩で息する三人はまだ状況をつかめていないようだった。
オレはモーリのところにあるテレビから、三人に事情を話してくれと、馬車に避難していたアンナとモーリに伝えた。
斬り落とされたツタを動けるツタで拾い集め、周辺の植物を極力さげさせる。
アンナが外に出て、もう安心だと伝えると、ようやく三人は緊張を解いてくれた。
「これを女王陛下の執務室まで伸ばし、そこで会話できるように加工します」
説明責任を果たしながら、できるだけ信用されるようにする。
なにせ最高責任者に直通電話を作るんだからな。
王宮近衛隊長と親衛隊にも見守られながら、疑われないように作業を続ける。
──無事に執務室まで伸ばすと、昔ながらの受話機と本体のあるデザイン(なるだけ高級感を出してみた)に加工して机の上に置いた。
「あとあと回線が増えるかもしれませんが、とりあえずモーリ大使のところと、オレ…じゃなくて私のところに繋げるようにしました。受話機を取り、ここのボタンを押すと、相手側に呼び出し音が鳴り、向こうも受話器を取ると話ができるようになります」
もうお昼を過ぎているから後援部隊も着いている頃だろう。使い方を見せるために、まずはオレがモーリのどころにかけてみせる。
数回の呼び出し音のあと、モーリがでる。
「はいはいこちらモーリでございます」
「モーリ、こちらはクチキだ。たった今、王宮に取り付けたよ」
このままモーリと話すつもりだったが、急に相手が代わった。
「クチキ様? アンナです、本当に王宮と繋がったのね。お母様に代わって」
事情を説明してエルザ女王に受話器を渡すと、さして怖気づくこともなく、それを耳にあてる。
「アンナですか」
「お母様、本当にお母様の声だ。すごい、こちらはもう森なんですよ。こんなに離れているのにお母様の声が聴こえるなんて」
大興奮するアンナに、落ち着くように諭すエルザ女王はそのまま話し込みそうだったが、意外にもすぐにオレに代わってほしいと言ってきた。
「代わりました。どうかされましたか」
「あの、ですね、そちらのアディさんとゾフィ達がただいま闘っている最中なんですよ。止めてもらえませんか」
──想定すべき事態だった。
アディとゾフィを会わせれば、モメるのは想像できたじゃないか。
「いま、どのようになっていますか」
「大使館の前で、襲ってくる森のツタをゾフィ達が剣で斬りむすんでいるところです」
「マリオネット、じゃなかったヒトの形じゃないんですね」
「ええ。テレビっていうんですの? アディさんはその中にいます」
「……わかりました。すぐに止めに行きます」
その場に居るヒト達に向こうの状況を話し、今すぐ森に戻る事を伝える。
「間に合うんですの」
「城壁の外に出れば何とかなります。では失礼」
案内の衛兵を伴い、ユーリの居る部屋へと向う。
「どうしたクッキー、そんなに慌てて」
「森でアディとゾフィがモメてるらしい、すぐに戻らないといけないから挨拶しにきた」
「ああ、──当然の結果か。しばらく会えなくなるな」
そう言うとユーリはオレに抱きついてくる。そして耳元で囁く。
「エルザにデンワは取り付けたか」
「ああ。とりあえずモーリとしか話せないようにしてある」
「ふむ。ならばつもる話は後でだな」
「城壁の外に出たら、マリオネットを生け垣に隠して意識だけ森に戻る。じゃないと一日かかるからな」
「意識だけなら」
「ひと呼吸する間もなく行けるよ」
「わかった。じゃあ連絡を待ってるからな」
軽くキスをしたあと、衛兵とともに城壁外に出る。
移動方法がバレないように一旦走って街道を進むが、見えないところまで来たら街路樹の上に跳び乗り、マリオネットを隠して意識体で森に戻る。
光と電気の速さはおよそ同じだという。
意識体という精神エネルギーは、ある意味電気信号に似ているから、オレの移動速度は光並みなのだろう。すぐにアディのところまでやって来た。
「このっ、この、しぶといわね、さっさと負けを認めなさいよ」
森の草木というか主にツタを夢中で操り奮闘しているアディは、かなりの興奮状態だった。
「アディ、落ち着いて。何をやってるんだ」
精霊体のまま、精霊空間でアディを羽交い締めにする。
「止めないでよクッキー、今日こそ決着をつけてやるんだから」
カメラツタを使って外を見ると、剣を構えたゾフィと知らない二人が互いに背を合わせ、四方八方から来るツタを斬り落としていた。
「やめないかっ!!」
「いやよっ!!」
「アディ!!」
羽交い締めを離して腰のあたりを両腕で掴むと、そのままバックドロップをかける。
「ぷぎゃっ」
見事に弧を描いてアディが後ろにひっくり返る。
ようやく大人しくなったので森の支配権を奪い取り、ツタの攻撃を止めた。
スピーカーツタを使い、ゾフィに話しかける。
「ゾフィさん、オレだ、クッキーだ。いまアディを抑えた、そちらもひいてくれ」
闘志むき出しで肩で息する三人はまだ状況をつかめていないようだった。
オレはモーリのところにあるテレビから、三人に事情を話してくれと、馬車に避難していたアンナとモーリに伝えた。
斬り落とされたツタを動けるツタで拾い集め、周辺の植物を極力さげさせる。
アンナが外に出て、もう安心だと伝えると、ようやく三人は緊張を解いてくれた。
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