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文字通り東奔西走かよー
出かける前に
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デンワツタの便利さをよーく知ってもらえた上で、モーリにこれをカーキ=ツバタに設置していいか聞くと、
「ぜひ、ぜひ、お願いします。これがあれば王国の指示を仰ぎやすくなります」
興奮気味に了解をもらえた。
本当になら、精霊体時のオレと連絡してべんりさをアピールする予定だったが、いきなり王国にいるユーリと連絡してデモンストレーションをしてしまった。ま、結果オーライだ。
「しかしあと三日か。どうしたものか」
今からカーキ=ツバタに向うとして、今のオレなら朝までに着くだろう。それから根回しを頼んだユーリと合流して女王を説得してデンワツタを設置、それから戻って、迎え入れの用意か。
「間に合うかな」
悩んでいると、ユーリから通信が入った。モーリのところにあるデンワツタでなくオレに直接だ。
「どうしたユーリ」
「さっき言い忘れたが、援助隊はすでにそちらに向かっている。今日のお昼に出立したから、明日の朝か昼あたりに着くだろう。後援のプランはもうできているらしい」
「それは助かるな。デンワツタの話はしたかい」
「まだだ、さすがに言えないからな」
「やはりオレが行って説明と許可が必要か、わかったありがとう」
モーリからすれば、突然ひとり言を言いはじめたオレが不思議だっただろう。何をしていたか説明して、後援部隊が向かっていることを伝えた。
「はは、やっぱり便利ですなこれ」
そこにスピーカーツタがやってきて、アディが報告する。
「クッキー、あいつら森のはずれに放り出してきたわよ」
「ちゃんと生きて出しただろうな」
「出るまでは生きていたわよ。はずれまで来たら思いっきり投げ飛ばしてやったから、その先は知らないけどさ」
──生きてるといいな。
「それよりアディ、またしばらくカーキ=ツバタに行ってくる。サポートにそうだな、上級ドライアドをひとりつけてほしい」
「アタシじゃダメなの」
「帝国の本隊が三日後に来るらしい。万が一のときはアディに頼るしかないだろ」
「うーん、しょうがないわね。誰を連れていく?」
誰と言われても区別がつかない。
アディはつくらしいが、この先を考えると名前でもつけた方がいいかな。
「アディ、上級ドライアド達に名前をつけていいかな」
「うん、いいわよ。あのコ達も喜ぶんじゃない」
モーリに事情を説明してマリオネットをイスに座らせて、スピーカーツタを握ると精霊体となり本体に意識を戻す。
精霊界のアディの部屋に行くと、すでにアディと上級ドライアドが並んで待っていた。
「話は聞いてるな。じゃあ名前をつけるから──」
こうして八人の上級ドライアドは、ヒトハ、フタハ、ミツハ、ヨツハ、イツハ、ムツハ、ナノハ、ヤツハと名付けられた。
名前持ちになったらなにか変化があるかと思ったが、何にも無し。ちょっとがっかり。
「じゃあ、ヒトハ、一足先にカーキ=ツバタの生け垣に行っててくれ。オレはマリオネットで向うから遅れていく」
「わかりました、お父様」
「お、お父様?!」
にっこり笑うと、ヒトハは自分の担当ドライアドを連れてカーキ=ツバタに向かっていった。
「お父様ねぇ」
※ ※ ※ ※ ※
今度は地下のペッターのところだ。
テレビに自分を映してスピーカーツタで話しかける。
イスに座ってぼ~っとしている。珍しいな、いつもは何かしら作っているのに。
「どうしたペッター? どこか悪いのか」
「いや、ライブラリの映像を全部観終わったんで、色々とアイデアを練っていた」
ええ?! あれ全部観終わったの?! 不眠不休で観ても三年くらいかかる量を?!
「そりゃ疲れるだろうけど、よくこの短時間で観れたなぁ」
「ストーリーはすっ飛ばした。念じたら早送りできたんで、それをやってモノ作りに役立ちそうなところだけ観た」
ああそういうこと。それなら納得だよ。
「そんな状態ならいつもの精神接続はやめて口頭で伝えるな。三日後に帝国本隊が来ることになった。連絡用に四号機をカーキ=ツバタ王国に置きっぱなしになると思う。だから壱号機か弐号機を使えるようにしておいてくれないか」
「三日でか。うーん……わかった、やってみる」
「頼むよ。それじゃ行ってくる」
※ ※ ※ ※ ※
全員に指示をしたところでマリオネットに戻り、モーリに挨拶して、とっぷりと日の暮れた闇夜をカーキ=ツバタへと走り出す。
ポケットには世界樹の実を五つある。
王国までの直線街道にでると、そのひとつを食べて超加速で駆け出す。
街道の両端に植えられた街路樹は、世界樹本体と根で繋がっている。
なので、はるか先まで状況が分かるので全力で走れる。この分なら朝には着くだろう。
半分近くまで来たところで、どこかの商隊が夜営しているのが感じられた。
「もしかすると後援部隊かな」
違うにしろ怪しまれるわけにはいかないから、減速して手前で歩く速度に落とす。
火の明かりが見える。やはり夜営か。
見張りも立ってるし、間違いなさそうだな。話しかけてみるか。
近寄ってみると、見張りが気がつき槍を構えられる。
「止まれ、何者だ」
「ぜひ、ぜひ、お願いします。これがあれば王国の指示を仰ぎやすくなります」
興奮気味に了解をもらえた。
本当になら、精霊体時のオレと連絡してべんりさをアピールする予定だったが、いきなり王国にいるユーリと連絡してデモンストレーションをしてしまった。ま、結果オーライだ。
「しかしあと三日か。どうしたものか」
今からカーキ=ツバタに向うとして、今のオレなら朝までに着くだろう。それから根回しを頼んだユーリと合流して女王を説得してデンワツタを設置、それから戻って、迎え入れの用意か。
「間に合うかな」
悩んでいると、ユーリから通信が入った。モーリのところにあるデンワツタでなくオレに直接だ。
「どうしたユーリ」
「さっき言い忘れたが、援助隊はすでにそちらに向かっている。今日のお昼に出立したから、明日の朝か昼あたりに着くだろう。後援のプランはもうできているらしい」
「それは助かるな。デンワツタの話はしたかい」
「まだだ、さすがに言えないからな」
「やはりオレが行って説明と許可が必要か、わかったありがとう」
モーリからすれば、突然ひとり言を言いはじめたオレが不思議だっただろう。何をしていたか説明して、後援部隊が向かっていることを伝えた。
「はは、やっぱり便利ですなこれ」
そこにスピーカーツタがやってきて、アディが報告する。
「クッキー、あいつら森のはずれに放り出してきたわよ」
「ちゃんと生きて出しただろうな」
「出るまでは生きていたわよ。はずれまで来たら思いっきり投げ飛ばしてやったから、その先は知らないけどさ」
──生きてるといいな。
「それよりアディ、またしばらくカーキ=ツバタに行ってくる。サポートにそうだな、上級ドライアドをひとりつけてほしい」
「アタシじゃダメなの」
「帝国の本隊が三日後に来るらしい。万が一のときはアディに頼るしかないだろ」
「うーん、しょうがないわね。誰を連れていく?」
誰と言われても区別がつかない。
アディはつくらしいが、この先を考えると名前でもつけた方がいいかな。
「アディ、上級ドライアド達に名前をつけていいかな」
「うん、いいわよ。あのコ達も喜ぶんじゃない」
モーリに事情を説明してマリオネットをイスに座らせて、スピーカーツタを握ると精霊体となり本体に意識を戻す。
精霊界のアディの部屋に行くと、すでにアディと上級ドライアドが並んで待っていた。
「話は聞いてるな。じゃあ名前をつけるから──」
こうして八人の上級ドライアドは、ヒトハ、フタハ、ミツハ、ヨツハ、イツハ、ムツハ、ナノハ、ヤツハと名付けられた。
名前持ちになったらなにか変化があるかと思ったが、何にも無し。ちょっとがっかり。
「じゃあ、ヒトハ、一足先にカーキ=ツバタの生け垣に行っててくれ。オレはマリオネットで向うから遅れていく」
「わかりました、お父様」
「お、お父様?!」
にっこり笑うと、ヒトハは自分の担当ドライアドを連れてカーキ=ツバタに向かっていった。
「お父様ねぇ」
※ ※ ※ ※ ※
今度は地下のペッターのところだ。
テレビに自分を映してスピーカーツタで話しかける。
イスに座ってぼ~っとしている。珍しいな、いつもは何かしら作っているのに。
「どうしたペッター? どこか悪いのか」
「いや、ライブラリの映像を全部観終わったんで、色々とアイデアを練っていた」
ええ?! あれ全部観終わったの?! 不眠不休で観ても三年くらいかかる量を?!
「そりゃ疲れるだろうけど、よくこの短時間で観れたなぁ」
「ストーリーはすっ飛ばした。念じたら早送りできたんで、それをやってモノ作りに役立ちそうなところだけ観た」
ああそういうこと。それなら納得だよ。
「そんな状態ならいつもの精神接続はやめて口頭で伝えるな。三日後に帝国本隊が来ることになった。連絡用に四号機をカーキ=ツバタ王国に置きっぱなしになると思う。だから壱号機か弐号機を使えるようにしておいてくれないか」
「三日でか。うーん……わかった、やってみる」
「頼むよ。それじゃ行ってくる」
※ ※ ※ ※ ※
全員に指示をしたところでマリオネットに戻り、モーリに挨拶して、とっぷりと日の暮れた闇夜をカーキ=ツバタへと走り出す。
ポケットには世界樹の実を五つある。
王国までの直線街道にでると、そのひとつを食べて超加速で駆け出す。
街道の両端に植えられた街路樹は、世界樹本体と根で繋がっている。
なので、はるか先まで状況が分かるので全力で走れる。この分なら朝には着くだろう。
半分近くまで来たところで、どこかの商隊が夜営しているのが感じられた。
「もしかすると後援部隊かな」
違うにしろ怪しまれるわけにはいかないから、減速して手前で歩く速度に落とす。
火の明かりが見える。やはり夜営か。
見張りも立ってるし、間違いなさそうだな。話しかけてみるか。
近寄ってみると、見張りが気がつき槍を構えられる。
「止まれ、何者だ」
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