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イノベーションするぞー
精霊ナメんな!!
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予定では水戸黄門のように、「ひかぇひかえぇ、この方をどなたと心得る、次期世界樹候補クチキ・ユグドラシル・シゲル様であらせられるぞ、ひかぇ」とか展開になるはずだったのに、現実はボロクソに言われてアディがキレるという展開になってしまった。
触手ツタをじつに上手くつかい、使者達を引き千切らんばかりの勢いのアディを止める。
「アディ、やめないか」
「知らないわよこんなヤツら、神霊族の信徒ってみんな精霊をバカにするから大っキライ」
「やめろって言ってるんだ、ここでそれをやったら馬車が汚れるだろう」
「じゃあ外ならいいのね」
それを聞いて、使者達は慌てふためく。
窓から入った触手ツタは離れて、扉からふたりを外に出そうとする。
「ま、待ってくれ、やめてくれ」
手首から先が自由だったので出口の壁に掴まり、必死に抵抗するが、数本の太い触手ツタはものともせず引きずり出そうとする。
「う、うわあゝああぁぁぁ!!!!」
「た、たすけてくれぇぇぇ!!!!」
アディ、本気で怒ってるな。どうしよう。
モーリがその時、大声で怒鳴る。
「使者様、ここが精霊の国だとおわかりいただけましたか! 認めぬとそのまま怒りを買いますぞ!!」
青ざめて必死の形相だった使者達は、一瞬苦い顔をしたが、すぐに認める認めると哀願した。
「アディ、聞いたか、もう止めるんだ」
「いやよクッキー、コイツら赦せない」
「殺すな、あとが面倒だ、せめて森の外に放り出せ」
「──わかったわよ、放り出せばいいのね」
「その前に──使者殿、訊きたいことがある」
「な、なんだ」
ぞんざいな物言いに、触手ツタが締めつける。
「うぎゃあぁぁ、な、なんでございましょうか」
半泣きになった使者に近づき訊ねる。
「本隊はいつ頃ここに来るんだ」
「だ、だいたい三日後くらいかと」
「──わかった。あらためていう、ユグドラシル樹立国は貴国の訪問を丁重に御迎えすると伝えてくれ」
「う、承った」
使者の返事を聞くと、オレは応接スペースにある荷物をまとめて使者達に背負わす。
「ウマも南のはずれに連れていくから安心してくれ」
「な、それはどういう……」
使者が言い終わる前に、触手ツタは彼らの身体をビーチボールみたいに放り上げて、リレーでトスしていく。悲鳴がだんだん遠くなっていった。
「心臓マヒにならなきゃ、生きて森のはずれに着くだろう」
見送りながらそんなひとり言を呟いたあと、オレはモーリに体を向けた。
「さて、モーリ、説明してもらおうか。アイツ等は何しに来たのか? 精霊をなぜ下にみるのか?」
モーリが座るように促すと、あらためてハーブ茶を淹れてから対面に座る。
「帝国の使者は昼過ぎにやってきました。自らの身分を言ったあと、ここを徴収するから出ていくように言われました」
「それで」
「他国を勝手に徴収するなと突っぱねたら、絡んできましてね、話し合い──にはなりませんでしたね。最初から難癖をつけるつもりのようでしたから」
「そこにオレが来たのか。ジャマをしてしまったかな」
「いえいえ、どちらにしろ同じ結果になってたでしょう。精霊の国と言っても信じてもらえませんでしたから。むしろこれで心底信じたでしょう」
「それならいいが……。となると、連中が精霊を下にみる言い方が気になるな。モーリもそのようだったが」
先程のことを思い出して睨みつける。モーリは困った顔をして考え込む。
「なんと説明していいのやら……。私はカーキ=ツバタの国民ですから女神族の信徒です。ですが精霊族を軽んじてはいません。なぜなら生きとし生けるものには精霊が宿っていることを知っているからです」
話しながら此方の反応を伺うのが、逆に気に障る。どうやらオレはけっこうイラついてるらしい。
「ですからなんというか……ヒトは精霊を大事にしてますが、そのぅ、神霊族がですねぇ」
「歯切れが悪いな、つまり神霊族が精霊族を下にみている、だから信徒も下にみているということか」
「まあそうです」
「モーリもなのか」
「まさか。旅先では神霊族より精霊族を崇めるところもありますからね、立場上は女神族信徒ですが、だからといって精霊を下にみません。そんなことしたら商売にならない」
モーリらしい言葉に、ささくれだった気持ちが少しやわらいだ。
「信じよう。となるとだ、三日後に来る本隊をどう迎えるかが問題だな」
──どうやらくどくど説明する必要なく、本来の目的ができるようだな。
オレは立ち上がると、触手ツタを一本呼び寄せて、それをデンワツタに加工する。そしてそのままユーリにつなげる。
「もしもし、ユーリかい。──ああ、今はモーリの馬車にいる。早く伝えたいことができたんで──いやテレビもつけるけどさ、今はそれより大変なことができたんだよ」
帝国の本隊が三日後に来ることと、すぐに王国に向うことを伝えて通話を切ると、モーリにこれがどういうものかを説明した。
「まさかウソでしょ?! 遠く離れたカーキ=ツバタと繋がっているなんて」
いい反応してくれるなぁ。
触手ツタをじつに上手くつかい、使者達を引き千切らんばかりの勢いのアディを止める。
「アディ、やめないか」
「知らないわよこんなヤツら、神霊族の信徒ってみんな精霊をバカにするから大っキライ」
「やめろって言ってるんだ、ここでそれをやったら馬車が汚れるだろう」
「じゃあ外ならいいのね」
それを聞いて、使者達は慌てふためく。
窓から入った触手ツタは離れて、扉からふたりを外に出そうとする。
「ま、待ってくれ、やめてくれ」
手首から先が自由だったので出口の壁に掴まり、必死に抵抗するが、数本の太い触手ツタはものともせず引きずり出そうとする。
「う、うわあゝああぁぁぁ!!!!」
「た、たすけてくれぇぇぇ!!!!」
アディ、本気で怒ってるな。どうしよう。
モーリがその時、大声で怒鳴る。
「使者様、ここが精霊の国だとおわかりいただけましたか! 認めぬとそのまま怒りを買いますぞ!!」
青ざめて必死の形相だった使者達は、一瞬苦い顔をしたが、すぐに認める認めると哀願した。
「アディ、聞いたか、もう止めるんだ」
「いやよクッキー、コイツら赦せない」
「殺すな、あとが面倒だ、せめて森の外に放り出せ」
「──わかったわよ、放り出せばいいのね」
「その前に──使者殿、訊きたいことがある」
「な、なんだ」
ぞんざいな物言いに、触手ツタが締めつける。
「うぎゃあぁぁ、な、なんでございましょうか」
半泣きになった使者に近づき訊ねる。
「本隊はいつ頃ここに来るんだ」
「だ、だいたい三日後くらいかと」
「──わかった。あらためていう、ユグドラシル樹立国は貴国の訪問を丁重に御迎えすると伝えてくれ」
「う、承った」
使者の返事を聞くと、オレは応接スペースにある荷物をまとめて使者達に背負わす。
「ウマも南のはずれに連れていくから安心してくれ」
「な、それはどういう……」
使者が言い終わる前に、触手ツタは彼らの身体をビーチボールみたいに放り上げて、リレーでトスしていく。悲鳴がだんだん遠くなっていった。
「心臓マヒにならなきゃ、生きて森のはずれに着くだろう」
見送りながらそんなひとり言を呟いたあと、オレはモーリに体を向けた。
「さて、モーリ、説明してもらおうか。アイツ等は何しに来たのか? 精霊をなぜ下にみるのか?」
モーリが座るように促すと、あらためてハーブ茶を淹れてから対面に座る。
「帝国の使者は昼過ぎにやってきました。自らの身分を言ったあと、ここを徴収するから出ていくように言われました」
「それで」
「他国を勝手に徴収するなと突っぱねたら、絡んできましてね、話し合い──にはなりませんでしたね。最初から難癖をつけるつもりのようでしたから」
「そこにオレが来たのか。ジャマをしてしまったかな」
「いえいえ、どちらにしろ同じ結果になってたでしょう。精霊の国と言っても信じてもらえませんでしたから。むしろこれで心底信じたでしょう」
「それならいいが……。となると、連中が精霊を下にみる言い方が気になるな。モーリもそのようだったが」
先程のことを思い出して睨みつける。モーリは困った顔をして考え込む。
「なんと説明していいのやら……。私はカーキ=ツバタの国民ですから女神族の信徒です。ですが精霊族を軽んじてはいません。なぜなら生きとし生けるものには精霊が宿っていることを知っているからです」
話しながら此方の反応を伺うのが、逆に気に障る。どうやらオレはけっこうイラついてるらしい。
「ですからなんというか……ヒトは精霊を大事にしてますが、そのぅ、神霊族がですねぇ」
「歯切れが悪いな、つまり神霊族が精霊族を下にみている、だから信徒も下にみているということか」
「まあそうです」
「モーリもなのか」
「まさか。旅先では神霊族より精霊族を崇めるところもありますからね、立場上は女神族信徒ですが、だからといって精霊を下にみません。そんなことしたら商売にならない」
モーリらしい言葉に、ささくれだった気持ちが少しやわらいだ。
「信じよう。となるとだ、三日後に来る本隊をどう迎えるかが問題だな」
──どうやらくどくど説明する必要なく、本来の目的ができるようだな。
オレは立ち上がると、触手ツタを一本呼び寄せて、それをデンワツタに加工する。そしてそのままユーリにつなげる。
「もしもし、ユーリかい。──ああ、今はモーリの馬車にいる。早く伝えたいことができたんで──いやテレビもつけるけどさ、今はそれより大変なことができたんだよ」
帝国の本隊が三日後に来ることと、すぐに王国に向うことを伝えて通話を切ると、モーリにこれがどういうものかを説明した。
「まさかウソでしょ?! 遠く離れたカーキ=ツバタと繋がっているなんて」
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