111 / 177
イノベーションするぞー
ユーリの肢体
しおりを挟む
「──というわけで、こっちに来たんだよ」
天蓋ベッドで仰向けに寝そべりながら聞くユーリに、昨日今日の話をし終わるとそのままの姿勢で小声で質問される。
「ふむ、ということはそのデンワとやらで今は話しているんだな」
「ああ。カイマ襲撃事件のとき、ここに一年くらい居ただろ。その時に仕込んでおいた根と蔓をデンワツタにしたんだ」
「……これは話ししかできないのか」
「ああ。王宮は他人のウチだからな、あんまりやり過ぎないように──」
「クッキー」
ユーリの口調が鋭く変わった。なんか気に障ったかな。
「このベッドは趣味が悪いと思わないか」
「そんなこと……」
ハッとした。ユーリが何に気がついたか分かってしまった。やばい、誤魔化さなくては。
「どうした」
「あ、いや、そんなことは知らないと言いかけたんだ」
「ほ~おぅ、知らないのか。よくそれでこのベッドにデンワツタを持ってこれたな」
「ほ、ほら、オレってユーリの気配が分かるからさ、見当をつけて伸ばしてみたんだよ。当たったろ、ユーリが好きだから分かるんだよ」
「ほ~おぅ、つまり見えていないんだな」
「もちろんだとも」
努めて平静を装って話してる、バレてない、バレてないよな。
「今夜は少々汗ばむな」
そう言ったかと思うと、ユーリは寝具をはねのけ、ワンピースの寝間着の裾をひざ上までまくり上げ、首もとから肩をのぞかせる。
「衣ずれの音がするけど、どうかしたの」
見えてない、オレは見えてない。バレないように見ていない。
「寝る前に身体をほぐすんだが、少々物足りないのでもう少しやろうとな」
「そ、そうなんだ」
「はぁ~あん、ん……と、あん、あん、あん」
吐息だよな、喘ぎ声じゃないよな。どんなセクシーポーズ……じゃなくてあられもない格好をしているんだ──
「はあん……と、う、う~ん……おっと、はしたなくもおしりが見えてしまった。寝間着が邪魔だな、いっそ脱いでしまうか」
「ユーリ、なにしてんの」
「べつに見えてないんだからいいだろ。それじゃ脱ぐとしようかな」
──衣ずれの音が想像を刺激する、もう限界だ、このまま嘘をつき続ける方が辛い。
「──すいませんでしたぁ、見えてます、見えてますからもう許してくださいぃ」
「まったく。素直にそう言えばいいのに。隠したということは、寝間着に着替えるところを見たんだな」
「すいません、本当に、本当に、たまたまなんですぅ。あまりに綺麗だったので、見惚れてしまいましたぁ、他意はないんです、許してくださいぃぃぃ」
精霊体のままだけど、土下座の姿勢で謝り続けた。
「クッキーはそういうの興味が無いと思ってたがな」
そうなんだけどさ──
精霊体となったオレには、肉体の生理による性的欲求というものがない。
ゆえにユーリ相手に性交したいとは思わないが、代わりにというかなんというか、綺麗なもの美しいものを見たい聴きたいという欲求が強くなっている気がする。
そのことを正直にユーリに伝えると、無反応だった。怒っているのかな。
「……クッキー」
「はい」
「そんなに綺麗だったのか……」
さっきとはうらはらに、モジモジとした感じで訊かれる。
ここはやはり正直に言うべきだろう、もうユーリに嘘をつきたくない。
「うん、綺麗だった。
ちょうどこちらに背を向けて、下着を脱いでいるところで、すこし前屈みだったから髪が前に垂れ下がっていたので、白い肌の背中が飛び込んできた。
ハッとした。
うなじから足首までの白さに、とても女性的な曲線美、そしてその後の身体をほぐすための動きで横から見えたよく熟れた果実のような乳房の丸みも美しかった。さらには……」
「もういい、もういいから」
ベッドの上で、真っ赤になった顔を両手で隠しながら足をジタバタしているのが見えた。
「クッキー、正直であれば良いというものではないぞ。まったく」
「まだいい足りないんだけど」
「もういいと言ってるだろ。のぞき見したのは許してやるから、もう黙ってくれ」
「うん、わかった」
とりあえず許してもらって、ホッとした。
「ところでクッキーは今、何処にいるんだ」
「カーキ=ツバタの外にある生け垣にいる。ほら、トテップ族のカイマが魔法を使って王宮に侵入したことがあったろう。それで、城壁に限定対魔術結界が張られることになったから、入れないんだ」
「クッキーなら入れるんじゃないのか」
「そりゃ無理すればね。けど問題をおこしに来たんじゃないんだ。デンワツタとカメラツタを仕込んどいてなんだけど、いちおう礼儀はまもりたい」
「ふむ、となるとマリオネットが使えるまでは、そのままということか。ならば続けて私が交渉をするしかないな」
「すまないが頼むよ」
「まあこうやって相談できるだけ助かるよ。あとは顔が見れるといいな。モニタとやらは付けられないのか」
「うーんと、ちょっと時間がかかるけどできるよ。やっておこうか」
「ああ、やっておいてくれ。じゃあ、昨日今日の出来事を伝えるとしようか」
ユーリはギルドのこと、エルザ女王との会食、城内の様子そしてアンナ王女からの申し出を断ったことを話してくれた。
──え? 援助を断ったの?!
天蓋ベッドで仰向けに寝そべりながら聞くユーリに、昨日今日の話をし終わるとそのままの姿勢で小声で質問される。
「ふむ、ということはそのデンワとやらで今は話しているんだな」
「ああ。カイマ襲撃事件のとき、ここに一年くらい居ただろ。その時に仕込んでおいた根と蔓をデンワツタにしたんだ」
「……これは話ししかできないのか」
「ああ。王宮は他人のウチだからな、あんまりやり過ぎないように──」
「クッキー」
ユーリの口調が鋭く変わった。なんか気に障ったかな。
「このベッドは趣味が悪いと思わないか」
「そんなこと……」
ハッとした。ユーリが何に気がついたか分かってしまった。やばい、誤魔化さなくては。
「どうした」
「あ、いや、そんなことは知らないと言いかけたんだ」
「ほ~おぅ、知らないのか。よくそれでこのベッドにデンワツタを持ってこれたな」
「ほ、ほら、オレってユーリの気配が分かるからさ、見当をつけて伸ばしてみたんだよ。当たったろ、ユーリが好きだから分かるんだよ」
「ほ~おぅ、つまり見えていないんだな」
「もちろんだとも」
努めて平静を装って話してる、バレてない、バレてないよな。
「今夜は少々汗ばむな」
そう言ったかと思うと、ユーリは寝具をはねのけ、ワンピースの寝間着の裾をひざ上までまくり上げ、首もとから肩をのぞかせる。
「衣ずれの音がするけど、どうかしたの」
見えてない、オレは見えてない。バレないように見ていない。
「寝る前に身体をほぐすんだが、少々物足りないのでもう少しやろうとな」
「そ、そうなんだ」
「はぁ~あん、ん……と、あん、あん、あん」
吐息だよな、喘ぎ声じゃないよな。どんなセクシーポーズ……じゃなくてあられもない格好をしているんだ──
「はあん……と、う、う~ん……おっと、はしたなくもおしりが見えてしまった。寝間着が邪魔だな、いっそ脱いでしまうか」
「ユーリ、なにしてんの」
「べつに見えてないんだからいいだろ。それじゃ脱ぐとしようかな」
──衣ずれの音が想像を刺激する、もう限界だ、このまま嘘をつき続ける方が辛い。
「──すいませんでしたぁ、見えてます、見えてますからもう許してくださいぃ」
「まったく。素直にそう言えばいいのに。隠したということは、寝間着に着替えるところを見たんだな」
「すいません、本当に、本当に、たまたまなんですぅ。あまりに綺麗だったので、見惚れてしまいましたぁ、他意はないんです、許してくださいぃぃぃ」
精霊体のままだけど、土下座の姿勢で謝り続けた。
「クッキーはそういうの興味が無いと思ってたがな」
そうなんだけどさ──
精霊体となったオレには、肉体の生理による性的欲求というものがない。
ゆえにユーリ相手に性交したいとは思わないが、代わりにというかなんというか、綺麗なもの美しいものを見たい聴きたいという欲求が強くなっている気がする。
そのことを正直にユーリに伝えると、無反応だった。怒っているのかな。
「……クッキー」
「はい」
「そんなに綺麗だったのか……」
さっきとはうらはらに、モジモジとした感じで訊かれる。
ここはやはり正直に言うべきだろう、もうユーリに嘘をつきたくない。
「うん、綺麗だった。
ちょうどこちらに背を向けて、下着を脱いでいるところで、すこし前屈みだったから髪が前に垂れ下がっていたので、白い肌の背中が飛び込んできた。
ハッとした。
うなじから足首までの白さに、とても女性的な曲線美、そしてその後の身体をほぐすための動きで横から見えたよく熟れた果実のような乳房の丸みも美しかった。さらには……」
「もういい、もういいから」
ベッドの上で、真っ赤になった顔を両手で隠しながら足をジタバタしているのが見えた。
「クッキー、正直であれば良いというものではないぞ。まったく」
「まだいい足りないんだけど」
「もういいと言ってるだろ。のぞき見したのは許してやるから、もう黙ってくれ」
「うん、わかった」
とりあえず許してもらって、ホッとした。
「ところでクッキーは今、何処にいるんだ」
「カーキ=ツバタの外にある生け垣にいる。ほら、トテップ族のカイマが魔法を使って王宮に侵入したことがあったろう。それで、城壁に限定対魔術結界が張られることになったから、入れないんだ」
「クッキーなら入れるんじゃないのか」
「そりゃ無理すればね。けど問題をおこしに来たんじゃないんだ。デンワツタとカメラツタを仕込んどいてなんだけど、いちおう礼儀はまもりたい」
「ふむ、となるとマリオネットが使えるまでは、そのままということか。ならば続けて私が交渉をするしかないな」
「すまないが頼むよ」
「まあこうやって相談できるだけ助かるよ。あとは顔が見れるといいな。モニタとやらは付けられないのか」
「うーんと、ちょっと時間がかかるけどできるよ。やっておこうか」
「ああ、やっておいてくれ。じゃあ、昨日今日の出来事を伝えるとしようか」
ユーリはギルドのこと、エルザ女王との会食、城内の様子そしてアンナ王女からの申し出を断ったことを話してくれた。
──え? 援助を断ったの?!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる