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読み切り 王女の帰還
オークション その4
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ティア、ダイナ、モーリは繋がれたままカイアのもとに連れてこられると、4人とも鎖を解かれた。そのまま使用人達は下がっていく。
「どういうつもりだ」
「なに、余興だよ。どんなに頑張ってもガロゥは帝国に勝てないということを皆に知らしめようというな」
ガレノ公爵と対峙するカイアに、モーリが小声で話しかける。
「すいませんカイアさん、どういう訳か我々のことを知られていまして、大人しく捕まらないとカイアさんを殺すと脅されて仕方なく捕まりました」
「ティア姉、ダイナ姉」
「モーリ殿が真っ先に捕まり、わたしらも逃げそこなった。まるでこちらの手の内をすべて知られているみたいだ」
くそっ、と思いながらカイアはガレノ公爵を睨みつける。
いったい何がどうなっているんだ、アンナ王女を助ける目的でここまで来たのに、助けるどころか全員が虜になっているなんて。
優雅に笑みをたたえているガレノ公爵に、カイアは嫌悪の気持ちがわいた。
「話し合いは終わったかね。どうやらすべてが知られているのに納得がいかないようだね。余興の前にそのあたりをスッキリさせてやろう」
ガレノ公爵はそう言うと、メルルを繋いだ鎖とは別の鎖を引く。すると後ろに隠れていた別の獣人がおずおずと出てきた。
「……ライ……」
来る途中たまたま一緒にになった、ネコ獣人のライであった。
「どうして……」
カイアの問いかけに、ライは俯いて応えない。そのやりとりを見てガレノ公爵はあざ笑う。
「代わりに教えてやろう。このネコはな、我が身可愛さにお前を売ったんだよ。お前が王女であることを密告して、条件の良いところに自分を売って欲しいとな」
「ライ……、あんた、わたしのこと知ってたの」
「……」
「知らなかったそうだよ。選別したあと入れられた檻でお前たちのことを知っている獣人がいたそうだ。だが公用商人語を話せなかった。そこでこのネコが間に入って取引を持ちかけてきた訳だ」
「──ごめんなさいカイア、ゆるして、ゆるして……」
怯えきり、自分のした事への後悔、嫌悪、自責を感じながら泣き崩れるライ。
カイアは両の拳を握り締め、目をつむり苦悶の表情をするが、……ライを責めなかった。
「……ライ、気にするな」
誰だって死にたくない、酷い目にあいたくない、家族や愛する人ならともかく、たまたまふた言み言話しただけの間柄だ。責めるに値しないとカイアは自分に言い聞かせた。
「ふん」
予想に反したので面白くないとばかりに、ガレノ公爵はライの鎖を無造作に引っ張り、カイアの前に出す。
「ネコよ、密告して助かろうとした卑しさには虫酸が走るな。ウサギよ、お前の代わりに罰を与えてやろう」
そう言うと、ガレノ公爵は神罰と唱える。
「ぐ、ふぐぅ……、い、息が……」
鎖の先にあるライに着けられた首輪が青白い光に包まれている。それに合わせてライがもがき苦しみ暴れ出す。
「ま、待て、やめろっ」
カイアが弾けるように走り出し、ライの鎖を外そうとするが、掴む直前に体当たりをくらい弾き戻される。倒れそうになったが、後方一回転をして立て直し、体当たりしてきた相手を見てまさかと驚く。メルルだった。
「どういうつもりだ」
「なに、余興だよ。どんなに頑張ってもガロゥは帝国に勝てないということを皆に知らしめようというな」
ガレノ公爵と対峙するカイアに、モーリが小声で話しかける。
「すいませんカイアさん、どういう訳か我々のことを知られていまして、大人しく捕まらないとカイアさんを殺すと脅されて仕方なく捕まりました」
「ティア姉、ダイナ姉」
「モーリ殿が真っ先に捕まり、わたしらも逃げそこなった。まるでこちらの手の内をすべて知られているみたいだ」
くそっ、と思いながらカイアはガレノ公爵を睨みつける。
いったい何がどうなっているんだ、アンナ王女を助ける目的でここまで来たのに、助けるどころか全員が虜になっているなんて。
優雅に笑みをたたえているガレノ公爵に、カイアは嫌悪の気持ちがわいた。
「話し合いは終わったかね。どうやらすべてが知られているのに納得がいかないようだね。余興の前にそのあたりをスッキリさせてやろう」
ガレノ公爵はそう言うと、メルルを繋いだ鎖とは別の鎖を引く。すると後ろに隠れていた別の獣人がおずおずと出てきた。
「……ライ……」
来る途中たまたま一緒にになった、ネコ獣人のライであった。
「どうして……」
カイアの問いかけに、ライは俯いて応えない。そのやりとりを見てガレノ公爵はあざ笑う。
「代わりに教えてやろう。このネコはな、我が身可愛さにお前を売ったんだよ。お前が王女であることを密告して、条件の良いところに自分を売って欲しいとな」
「ライ……、あんた、わたしのこと知ってたの」
「……」
「知らなかったそうだよ。選別したあと入れられた檻でお前たちのことを知っている獣人がいたそうだ。だが公用商人語を話せなかった。そこでこのネコが間に入って取引を持ちかけてきた訳だ」
「──ごめんなさいカイア、ゆるして、ゆるして……」
怯えきり、自分のした事への後悔、嫌悪、自責を感じながら泣き崩れるライ。
カイアは両の拳を握り締め、目をつむり苦悶の表情をするが、……ライを責めなかった。
「……ライ、気にするな」
誰だって死にたくない、酷い目にあいたくない、家族や愛する人ならともかく、たまたまふた言み言話しただけの間柄だ。責めるに値しないとカイアは自分に言い聞かせた。
「ふん」
予想に反したので面白くないとばかりに、ガレノ公爵はライの鎖を無造作に引っ張り、カイアの前に出す。
「ネコよ、密告して助かろうとした卑しさには虫酸が走るな。ウサギよ、お前の代わりに罰を与えてやろう」
そう言うと、ガレノ公爵は神罰と唱える。
「ぐ、ふぐぅ……、い、息が……」
鎖の先にあるライに着けられた首輪が青白い光に包まれている。それに合わせてライがもがき苦しみ暴れ出す。
「ま、待て、やめろっ」
カイアが弾けるように走り出し、ライの鎖を外そうとするが、掴む直前に体当たりをくらい弾き戻される。倒れそうになったが、後方一回転をして立て直し、体当たりしてきた相手を見てまさかと驚く。メルルだった。
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