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読み切り 王女の帰還

カイアの失態 その6

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「雇い主にはどうやって会えるんだ」

「し、知らない……、本当だ、本当だってば、この仕事だって代理人としか会ってないんだ、そいつ等も誰かの指示を受けていたようだし……」

モーリは少し考えて、ふと思い出し質問する。

「定期便が攫った獣人を引き取りに来ると言ってたな、それはいつ何処に来るんだ」

「あ、明日の夜、泉から東にある広い場所に。目印は夜になると光る花が群生するところ」

モーリは確認してと囁くと、そのあとしばらく無言でメザワを睨み続ける。

「モーリ、どうやら本当のことらしいぞ」

そう言いながらカイアはメザワに近づく。恐怖に引きつるメザワに少しだけ気の毒に思いながら、モーリはそこから離れる。

「や。やめろ、やめてくれ、本当だ、嘘じゃない、勘弁してくれ、お願いします、助けてくださいぃぃぃ」

半狂乱で泣き叫ぶメザワにカイアは蔑むように言う。

「メザワ、そこまで言うなら勘弁してやろう。もうお前には用済みだ」

「じゃ、じゃあ」

「わたしはな。こっちは用があるらしいぞ」

カイアが顎で指すと、そこには場所を確認して帰ってきたティアとダイナが立っていた。

「ひぃぃぃ、嘘つき、騙しやがったなぁぁぁ」

「なんの事だ、赤い玉が解呪されてないとは言ったが黒い玉はしてないとは言ってないぞ」

してやったりという感じで言い返すと、カイアは下がり、代わりにティア達がメザワの前に立ちはだかる。

「よくも恥をかかせてくれたな」

「お前も同じ目にあわせてやる」

そう言うと、ティアがメザワの顔に高速の蹴りを無数に入れる。顔にどんどん足痕が刻まれる。そしてダイナに代わると気合いとともに全力で回し蹴りをメザワにみまった。

「ふぎゃぁぁぁ」

ロープは引き千切れ、メザワは虚空の彼方へと吹っ飛んでいく。

「……死んだんじゃないですか」

「手加減した……つもりだ」

手加減してあれかと、モーリはため息をつくのだった。



 メザワは片づいたが獣人が攫われるという事件とアンナの救出がまだできてない。4人はこれからの事を話し合う。

「やはり相手の本拠地に潜り込むしかないですね」

「どうやって、というかやり方は一つしかない。明日の夜来るという定期便を見つからない様に追いかけるしかないだろう」

「それだと拠点には着くかもしれないけど、中にはどうやって潜り込む」

「わたしがやる」

3人はカイアを見る。

「私のせいでアンナが閉じ込められたんだ、責任を取りたい」

ずっと赤い玉を離さないカイアを見ていて、3人は責任を感じているのは分かっていた。決意は固いようだった。
それを踏まえて話し合った結果、モーリがメザワに化けてカイアを捕獲したことにして内側から探り、ティアとダイナはあとを追いかけることによって外側から探ることにした。

 次の夜、鎖で繋がれたカイアとそれを持つメザワことモーリが荷馬車と接触すると、なんとかふたりとも乗り込み、謎の相手の拠点へと向かう。そのあとをティア達が追いかける。



 そして今、カイアは奴隷オークションの舞台袖で売られるところになっていたのだ。

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