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読み切り 王女の帰還

カイアの失態 その5

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「く、来るな、コイツがどうなってもいいのか」

 カイアに恐怖したメザワが、モーリを盾にして喉元にナイフを突きつける。だが、カイアは歩みを止めず近づいてくる。

「こ、この」

縅すつもりでモーリの腕を刺そうとしたが、いつの間にかナイフが手元から消えていた。

「な、なんで」

「兎脚活蹴術がひとつ、裂空脚」

カイアがそう言い放つと、メザワの胸にへこみができるがそして一瞬の間をおいて後ろに吹っ飛んでいく。

「ふぐぅあっ」

たまたまあった木にぶつかり、メザワは気を失いその場に倒れる。するとモーリに巻きついてたムチが同じようにほどける。

「大丈夫かモーリ」

「大丈夫です。どうやら気を失うと能力は使えなくなるようですな」

それを聞いてカイアは振り返り黒い玉を見るが、それはそのままだった。

「あれは」

「先程の話が本当なら、メザワの魔力が切れるか離れないと解呪出来ないんじゃないでしょうか」

「それなら」

メザワにとどめをさそうとするカイアを、ふたたびモーリが押し止める。

「待った待った、カイアさん、コイツを殺してしまうとアンナ王女様が助けられないかもしれないんです、玉の色が違うんですよ、何かあるかも知れない」

言われてようやく我を取り戻したカイアは、自分がどんな失態をしたかようやく理解した。

「ど、どうしよう、護衛すべきアンナを、わたしは、わたしは、」

「落ち着いてカイアさん。まずはメザワの言っている事が正しいか試してみましょう」



 数分後、黒い玉から開放されたティア達とともにカイアが戻ってきた。

「うまくいきましたか」

「ああ、モーリの言う通り玉を持ってメザワから離れたらティア姉達は解呪されたよ」

「申し訳ない、あのようなワナに引っ掛かるとは……」

耳を垂らし落ち込むティアとダイナ、そしてカイア。

「モーリ、アンナだけは、赤い玉だけはどんなに離れても解呪されなかった」

「そうですか、とりあえず生かしておいて良かったですな」

 同じ失敗をしないように今度は後ろ手に縛って、それをさらに木に縛り付けてある。
 モーリはメザワに近寄ると、頬を張り叩き起す。

「う、う~ん」

「起きろよメザワ、お仕置きの時間だぞ」

モーリはふたりとも隠れてと囁くと、ティアとダイナは姿を隠した。

「メザワ、お前また嘘をついたな。お前からどれだけ離れても閉鎖空間は解呪されなかったぞ、おかげでカイアは怒り心頭だ。私もお前に殺されかけたからな、今度はもう止めない、カイアになぶり殺されな」

モーリの言葉にメザワは意識を取り戻す、目の前には先程の怒りに満ちたカイアが立っていた。

「ひぃぃぃ、う、嘘じゃねえよ、あれは俺から離れれば解呪されるんだ本当だ、試したことあるんだ、何もないところで目の届くぎりぎりのところくらいで解呪されたんだ、本当だ」

「だがこの通り、ここに赤い玉のままあるじゃないか」

「そ、それはとっておきなんだ、俺の魔力であって魔力じゃないんだよ」

「どういう意味だ」

「赤いヘイサクウカンは雇い主のモノなんだよ、レントとか言ってたな、その能力で俺にも使える陽になっているんだ」

「つまりどういう事だ」

「だからそれを解呪できるのは雇い主だけで、俺には出来ないんだよ」

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