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読み切り 王女の帰還

カイアの失態 その4

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「ウサギ族だと、どこだ、どこで捕まえたんだ」

「この先にある泉の近くだ。たまたま罠を仕掛けているところに通ったから、こいつぁ運が良いと捕まえたんだ」

「だせ、それを出せ」

カイアがメザワを揺さぶると、黒外套のポケットから黒い玉が出てきた。2つある。
 それを手に取り覗き込むと、首と手足を鎖で繋がれているティアとダイナが見えた。

「きっさまあああ、出せ、今すぐこれからふたりを出せ」

黒い玉を2つ片手で持ち、空いた片手でメザワの襟首を掴み、振り回す様に揺さぶる。
 がくがくしていたメザワがが急ににやりと笑う。

枝分かれの手ワーム

メザワがそう言うと、身体に巻き付いてたロープがほどけて、代わりにカイアに巻きつく。

「な、何だこれは」

「ははは、マヌケめ。俺の特異魔力は縄状の物に俺の血を染み込ませると自在に操れるんだよ。お前が殴ったから鼻血が出たろう、それがロープに垂れて染み込んだから、操れるようになったのさ」

「カイアを離しなさい」

アンナがメザワの黒外套を掴まえるが、それを脱ぎ捨てて後ろに下がられ距離を取られる。

「おおっと、王女様だっけ。こいつぁ大物だ、とっておきのを出してやるよ」

そう言うと、腰に付けた小型鞄から赤い玉を取り出す。

「こいつぁ特製のヘイサクウカンだよ、拘束ロック

メザワがそう唱えると、アンナの身体が赤い玉に吸い込まれていく。

「アンナ、アンナアァァァ」

カイアが叫んだが時すでに遅く、アンナは捉えられてしまった。

「ふふん、少々困った状態だったが終わりよければすべてよしだ。獣人3つと、どこの国の王女かしらんがそれが手に入ったんだからな。あとは……」

身構えているモーリをじろりと見ると、メザワは先程の鞄からナイフを取り出す。

「すまねぇな、ヘイサクウカンはあと1個しかねぇんだ。このウサギに使わねぇといけねぇんでな。枝分かれの手ワーム

メザワのムチが生き物のように動き出し、モーリに巻きついた。動きを封じられモーリはバランスを崩してその場に倒れる。

「ひと思いに楽にしてやるよ」

「く、くそっ」

懸命にもがくモーリにメザワが近寄りナイフを振りかざすその時だった。

「うおおおぉぉぉ」

雄叫びとともに何かが引き千切れる音を、メザワの背後から聞こえた。振り向くとそこには燃えるような赤い目をしたカイアが仁王立ちしていた。

「ば、ばかな、俺が操っているロープを引き千切っただと。ありえない、あれは暴れ馬でさえ拘束できるんだぞ」

メザワはもう一度枝分かれの手ワームを唱え、自前のムチをすべてカイアに襲わせる。

「はぁあっ」

カイアの気合いとともに無数のムチは宙空で破裂したようにバラバラになる。

「ひぃ、な、なんだ、何が起きたんだ」

ウサギ族の獣人であるカイアの脚力は尋常では無い。

 そもそも草食動物系のウサギ族がなぜ獣人同盟のナンバー3にいるのかというと、現在の族長であるカイア達の父ケンが多産系である種族の特徴を活かし、連携のとれた集団戦法を編み出して他の種族に勝利してきたからである。
 さらにはヒト族と交流を持ち、技を取り入れて一人ひとりの戦力を上げたからでもある。
 戦士であるカイアも技を身につけている、ウサギ族の長所、脚力を最大限活かした技法、兎脚活蹴術を。
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