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読み切り 王女の帰還

亜人狩りその3

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 カイアの予想は当たったようで、建物の中は大きな倉庫があり、地下につづく階段もあった。
 そこを降りると、いくつかに区切られていた牢屋が並んでいて、すでに先客の獣人達がいた。いや、獣人だけでなく、エルフやゴブリンもいる。どうやら亜人ばかりのようだ。

 獣人狩りというよりは、亜人狩りというところか。帝国のやり方というか考え方はかわってないようだな。

 カイアは静かに怒っていた。いつもの彼女なら怒りに任せてすでに大暴れしているところだったが、我慢する。

「よぉし、ここに入れておけ」

「さっさと入れ、もたもたするな」

 使用人達のえらそうなというか見下した命令に、ぶん殴ってやりたい衝動にかられたが、大きく深呼吸して気を落ち着け、先に入ったライ達とともに牢屋に入る。
 鉄柵の出入り口を閉められ鍵をかけられる。それでも首輪をはじめとする縛めは外されなかった。よほど亜人達の能力に警戒しているのだろうか。

 カイアはとりあえずあたりを見回す。わりと広い牢屋だった。そして先客がいる。

「よう新入り。ってアタシらも連れてこられたばかりだけどな」

はすっぱな言い方で話しかけて先客を見る。どう見てもヒト族の幼女のようだった。亜人狙いじゃなかったのかとカイアは戸惑う。

「あんた、ヒト族なのかい」

「そう見えるかもしれないけど、亜人だよ。変身型なんだ。この格好じゃないと陸地じゃつらいんでな」

「陸地? 水棲型なのかい」

「まあな、あまり言いたくない。そっちは」

うながされてカイアは自己紹介をする。

「わたしはカイア、見ての通りウサギ族の獣人だ。領域なわばりにある川で水浴びしていたところを攫われてきた」

「はぁ?! その身体でか。そんな戦士みたいな身体で攫われるなんて、よっぽどの間抜けなんだな」

そう言うと幼女はケタケタと笑うので、カイアは憤慨したが、言い返さなかった。

「……あんた名前は」

「ああ言ってなかったね、名前はメルル。種族は言いたくないけど水棲型だよ」

「メルル、ここはどこら辺なのか知ってるかい」

「さあな。アタシも攫われたクチなんだ。場所は海神ファスティトカロン帝国領のひとつであるクラーケン公国だよ、そこの河でやられたんだ」

ふん、とばかりに面白くもなさそうにメルルはそっぽを向いた。

 メルル以外に4人居て、その亜人達も雌型のようだ。どうやらここだけか、もしくは全員が雌型で捕まったらしい。

「ここにはどのくらい居るんだい」

「来たばっかりだってば」

「どのくらい前に」

「よく分かんない。捕まってしばらくしたら身体が乾いてきたから人型になって、それからここに放り込まれて、どうなるんだろうと思ってたらあんたらが来たんだよ」

 となるとまだ1日経ってないし、話しぶりからすると寝てもいないようだから、近いところから来たとみていいなとカイアは判断する。

クラーケン公国、聞いたことないな。ということは戦争に参加していないのだろうか。いやしかし荷馬車の走った時間から考えると帝国の西側だろう、戦線に近いそんなところが参加しないなんてあり得るだろうか。
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