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爆誕精霊仕様ビキニアーマー編
その4
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──百五十年前、つまり転生してから五十年後、オレはオアシスを創り上げていた。
砂と藻類と適度な水分を混ぜ込み[土]をつくり、それに根を張りめぐらせて[‘地面]という底をつくる。
それをタジン鍋のように形成して、そこに水を張る。中央は成長して樹木となったオレだ。
枝葉を伸ばして水の蒸発を防ぎ、循環しやすくする。
ここまでは普通のオアシスっぽいんだけど、ひと工夫がある。じつは船形にして移動式にしたのだ。
ここの砂漠の砂はきめ細やかでしょっちゅう流砂が起きる。まるで砂の海のようなので砂海と名づけた。
また流砂に飲み込まれて地下にいかないために、船のように砂海を漂うようにしたのだ。
さらに自身をマストと帆がわりにして、風を受けて移動できるようにもなった、枝と葉を動かせるからな。
移動できるようになったおかげで点々とあるオアシスに寄っては、水分補給しつつ新しい植物と[融合]して使える能力を増やしていった。
それと同時に[地面]を増やしてオアシスを大きくしていく。
砂海に漂うオアシス、オレはこれを[ウキクサ]と名づけた。
熱い日射しも耐えられるくらい成長し、全長五十メートルくらいになった頃だった。
──発芽して五十年経ちました。下級ドライアドが上級ドライアドに昇格します。同時にパートナー契約がおこなわれます、キャラクター形成、分離、終了しました──
なんだなんだ、この事務的なメッセージは。この声は[融合]の時の声だな。
「うーん、やったぁ、上級になれたぁ。これからよろしくね」
え、誰、あなた?
「あなたのパートナーよ。ずっと五十年一緒だったでしょ、融合の手伝いをしてたじゃない」
──このときはじめて、夢ではなく異世界転生したことを認識したんだっけ。パニックしたよなぁ、まあ夢にしちゃ長いから薄々、もしかしたら、ひょっとしたらとは思ってたけど、ずっと独りだったから確認しようがなかったからなぁ──
パニックから落ち着いて、パートナーを名乗る存在に質問攻めをした。
パートナーはドライアドという樹木の精霊で、この世界(ミスマという名前だそうだ)では世界樹の端末だという。
この世界の自然を管理する役目が世界樹、ありとあらゆる精霊の頂点であると同時に全能の存在。
「あなたはそれの次期候補に選ばれたの」
全能の存在であるために定期的に自己再生する。その時の依代として選ばれたらしい。
もっと詳しく訊きたかったが、どうも情報に制限がかかっているらしく、答えられない質問には無言となる。
とりあえず分かったのは、[支配地域を増やすこと][枯れて死なないこと][死んでも元の世界に戻れないこと]の三つだけだった。
そして上級ドライアドには名前が無い。たとえていうなら、世界樹がメインサーバーとしたら、ドライアドは各端末にあるサポートAIというものらしい。
オレはアディという名前をつけた。ドライアドのアドをもじった単純な理由だが、わりと気に入ってる。
アディのサポートのおかげで、融合した植物の名前と特性を詳しく知ることができたので、基本能力が50%増加となった。
「今までは生き残るために生きてきたけど、他にやることもないし、支配地域を増やすをやるしかないか」
知的生物に転生したのなら他にもやることが見つけられたのかもしれないけど、樹木じゃそんなこともできない。与えられた目的をやるしかないか。
「それに話し相手ができたから、会話ができることは嬉しいな」
「今まで独り言だったもんね。よく精神崩壊しなかったわね」
「……夢だと思ってたからな」
さて、支配地域を増やすとなると、[ウキクサ]で砂海を漂っているわけにはいかないな。どこか砂海の端につけて、そこから支配地を増やさなければ。
当時の季節(季節があるんだこの世界)は冬っぽく、西風と北風がよく吹いていた。
陽当りのいい(砂海は良過ぎるんだが)南東部に行くのに好都合だったから、風を頼りに流されていく。そうして着いたのがココだった。
砂海の端は、浜ではなく岸だった。しかも入江みたいな三日月型だったので、[ウキクサ]を泊めるのにちょうどいい。
「ウキクサの機能を無くすのはもったいないな。この入江部分からいつでも切り離せるようにしておこう」
「いいんじゃない」
うん、返事があるって嬉しいな。
砂海の端だけあって岩ばかりの土地だったが、そこはそれ、地面造りのプロだから土地改良をまずははじめる。
根を伸ばし、入江付近の岩場を粉砕。あらためて根の力強さがあがったことに自ら驚く、こんなにパワーがあったんだ。
そしてわざと枯らした葉を、風まかせで砕けた岩場にまく。あとは水分補給して岩場を土地に変えたいんだが、近場に水源が無い。
とりあえず自前の湖から、手に入れた植物のひとつ[触手ツタ]を使って撒いた。
その後、地下水脈を探り当て(けっこう深く掘ったな)植物が育ちやすい環境を造りあげてオアシスを造りあげた。
「支配地域が増えたわよ。この調子でどんどん増やしていきましょ」
──こうして現在の[世界樹の森]ができたというわけだ。
砂と藻類と適度な水分を混ぜ込み[土]をつくり、それに根を張りめぐらせて[‘地面]という底をつくる。
それをタジン鍋のように形成して、そこに水を張る。中央は成長して樹木となったオレだ。
枝葉を伸ばして水の蒸発を防ぎ、循環しやすくする。
ここまでは普通のオアシスっぽいんだけど、ひと工夫がある。じつは船形にして移動式にしたのだ。
ここの砂漠の砂はきめ細やかでしょっちゅう流砂が起きる。まるで砂の海のようなので砂海と名づけた。
また流砂に飲み込まれて地下にいかないために、船のように砂海を漂うようにしたのだ。
さらに自身をマストと帆がわりにして、風を受けて移動できるようにもなった、枝と葉を動かせるからな。
移動できるようになったおかげで点々とあるオアシスに寄っては、水分補給しつつ新しい植物と[融合]して使える能力を増やしていった。
それと同時に[地面]を増やしてオアシスを大きくしていく。
砂海に漂うオアシス、オレはこれを[ウキクサ]と名づけた。
熱い日射しも耐えられるくらい成長し、全長五十メートルくらいになった頃だった。
──発芽して五十年経ちました。下級ドライアドが上級ドライアドに昇格します。同時にパートナー契約がおこなわれます、キャラクター形成、分離、終了しました──
なんだなんだ、この事務的なメッセージは。この声は[融合]の時の声だな。
「うーん、やったぁ、上級になれたぁ。これからよろしくね」
え、誰、あなた?
「あなたのパートナーよ。ずっと五十年一緒だったでしょ、融合の手伝いをしてたじゃない」
──このときはじめて、夢ではなく異世界転生したことを認識したんだっけ。パニックしたよなぁ、まあ夢にしちゃ長いから薄々、もしかしたら、ひょっとしたらとは思ってたけど、ずっと独りだったから確認しようがなかったからなぁ──
パニックから落ち着いて、パートナーを名乗る存在に質問攻めをした。
パートナーはドライアドという樹木の精霊で、この世界(ミスマという名前だそうだ)では世界樹の端末だという。
この世界の自然を管理する役目が世界樹、ありとあらゆる精霊の頂点であると同時に全能の存在。
「あなたはそれの次期候補に選ばれたの」
全能の存在であるために定期的に自己再生する。その時の依代として選ばれたらしい。
もっと詳しく訊きたかったが、どうも情報に制限がかかっているらしく、答えられない質問には無言となる。
とりあえず分かったのは、[支配地域を増やすこと][枯れて死なないこと][死んでも元の世界に戻れないこと]の三つだけだった。
そして上級ドライアドには名前が無い。たとえていうなら、世界樹がメインサーバーとしたら、ドライアドは各端末にあるサポートAIというものらしい。
オレはアディという名前をつけた。ドライアドのアドをもじった単純な理由だが、わりと気に入ってる。
アディのサポートのおかげで、融合した植物の名前と特性を詳しく知ることができたので、基本能力が50%増加となった。
「今までは生き残るために生きてきたけど、他にやることもないし、支配地域を増やすをやるしかないか」
知的生物に転生したのなら他にもやることが見つけられたのかもしれないけど、樹木じゃそんなこともできない。与えられた目的をやるしかないか。
「それに話し相手ができたから、会話ができることは嬉しいな」
「今まで独り言だったもんね。よく精神崩壊しなかったわね」
「……夢だと思ってたからな」
さて、支配地域を増やすとなると、[ウキクサ]で砂海を漂っているわけにはいかないな。どこか砂海の端につけて、そこから支配地を増やさなければ。
当時の季節(季節があるんだこの世界)は冬っぽく、西風と北風がよく吹いていた。
陽当りのいい(砂海は良過ぎるんだが)南東部に行くのに好都合だったから、風を頼りに流されていく。そうして着いたのがココだった。
砂海の端は、浜ではなく岸だった。しかも入江みたいな三日月型だったので、[ウキクサ]を泊めるのにちょうどいい。
「ウキクサの機能を無くすのはもったいないな。この入江部分からいつでも切り離せるようにしておこう」
「いいんじゃない」
うん、返事があるって嬉しいな。
砂海の端だけあって岩ばかりの土地だったが、そこはそれ、地面造りのプロだから土地改良をまずははじめる。
根を伸ばし、入江付近の岩場を粉砕。あらためて根の力強さがあがったことに自ら驚く、こんなにパワーがあったんだ。
そしてわざと枯らした葉を、風まかせで砕けた岩場にまく。あとは水分補給して岩場を土地に変えたいんだが、近場に水源が無い。
とりあえず自前の湖から、手に入れた植物のひとつ[触手ツタ]を使って撒いた。
その後、地下水脈を探り当て(けっこう深く掘ったな)植物が育ちやすい環境を造りあげてオアシスを造りあげた。
「支配地域が増えたわよ。この調子でどんどん増やしていきましょ」
──こうして現在の[世界樹の森]ができたというわけだ。
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