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爆誕精霊仕様ビキニアーマー編

その3

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 ──二百年前、オレは砂漠で発芽したばかりの苗木だった。

 当時のオレは、それが夢だと思っていた。なにせ殺されてもいないし、働き過ぎで過労でもなかったからだ。
 ただ、幼い時に父を、転生少し前に母親が亡くなって天涯孤独となり、つき合っていた相手にプロポーズしたが断られてはいた。
 世を儚んで自ら命を断ったわけでもない、ただそうだな、未練はなかったとは思う。

 ──シゲちゃん、嫌いじゃないけど……なんていうか面白味が無いっていうか居ても居なくてもいい感じていうか──

 そう言われたのがショックだった。
 退職して一年ほどいろいろ経験して見返してやろうと思って寝たのは覚えている。まさか異世界にくるとは思わなかったが……。

 夢だと思ってたもうひとつの理由は、その苗木を俯瞰で見ていたからだ。植物の観察みたいに外から見る、そんな感じだった。

 夜明け前に発芽して根をのばしたけど、砂漠なので水分が無い。水を求めてどんどん根をのばした。
 のばしてものばしてものばしてものばしてものばしてものばしてものばしてものばしてものばしても届かない。

 そうこうしているうちに朝日が射してきた。
 葉緑素に日射しがあたりチカラがわいてくる、諦めかけていた根をふたたびのばす。

だがしかし!!

キシャァァァァァァァ!!!!

日射しが!! 日射しが!! 日射しが!! キツすぎるぅぅぅぅ 石仮面被ってないのにぃぃぃ。

光合成はしたいが、これでは枯れてしまう。急いで水分を補給しなくては。

 根の先に水気の反応がある、あと少しだ、届け、届け、届け、とぉおどおおおおけぇぇぇぇ。

 葉の水分が蒸発しはじめる、萎れるどころか枯れはじめる、間に合えぇぇぇぇ。



 ──朝日が太陽となるころ、オレは根からの水分で全身を潤していた──

間に合ったぁ。

光合成と水分のおかげで生き延びているが、今度は養分がない。

 砂というのは養分が無い。あるのは土である。このままでは今度は餓死が待っている。ちょっと過酷過ぎないか、この夢?

 養分になるものは辺りに無し。

 餓死決定か?!

 その時、風が急に起こり砂が舞い上がり、辺り一帯が揺れた。

 よっしゃあ、さすが夢、ご都合主義だ、これで地面に変わるんだよね。でもちょっと風が強すぎない、これって……砂嵐だろ、サンドストームだろ!!

根本から千切れそうになった時、またしても異変が。

 ゴボッ

え?!

 ゴボッ ゴボッ ゴボッ ゴボゴボゴボゴボォ

り、流砂、流砂だと?!

 ちょっと待て、せっかくのばした根がズタズタに千切れるじゃないか、なんて夢だ、オレの精神状態はどうなってるんだ、フロイト先生、教えて下さい。

このさい、ユングでもアドラーでもいいからーー。




 たとえていうなら、小学生がグラウンドの真ん中に立っていて、グラウンド全体が落とし穴だったという感じだった。

 どうしようもないよね。

そして新しいステージは地下水脈。そこの岩の隙間に挟まっている。

さっきと真反対

さっきは水が無くて日射しが豊富

今度は日射しが無くて水が豊富

 水分は補給し放題だけど、光合成ができない。詰みか。
 だが終わらなかった。この夢、しぶといな。

 根が何かに反応した、そうしたら[融合]のイメージが出てきたのだ。何だそれ?
 とりあえずオーケーと思うと、水中でも養分が得られるようになった。なんで?

[藻類と融合したため、その能力を使えるようになりました]

説明ありがとう……って、誰よ?

 なんにしても生き延びれたのはありがたい。とはいえだ、このまま地下水脈に引っかかっているわけにはいかないな。なんか根腐れしそうだし。

 現状維持はいずれ死ぬ。水脈の流れにのってみるか、助かる見込みは無いがそうじゃない見込みもある。

 根に岩壁の藻類を絡ませ自重を増やしてから先っぽの根を意思で切る。
 激流に流され真っ暗な地下水脈をすすんでいく。このまま流されるだけなのか、やはり不安だ。

 ずっと横進行だったのに、突然流れが縦に変わった。何事!?

と思ったら、突然明るくなった、やったぁ、外だ、地表だ、そして砂漠だった……。またかよ。

 とはいえ地下水が噴き出したままだ、どうやらオアシスらしい。小さいながら草地と藪がある。
 水が溜まるということは下は粘土質か岩盤だろう、水溜まりの端までくると手に入れたばかりの能力[融合]で、届く範囲の植物の能力を手に入れた。



 オアシスの下は土だったので、水と養分と光合成ができ、しばらくのんびりできたが、安心できない状態なのは変わらない。急いで対策を練らなくては。

 問題点は、強すぎる日射し、栄養の無い砂地、少なすぎる水、流砂に砂嵐という変わりすぎる環境……植物にはキツすぎない?

 どうすればこの過酷すぎる環境で生き残れるのだろう、持っている知識を最大限に探し回った。
 小さなIT企業勤めだったから、システムエンジニア兼プログラマーをしていた。
 そのおかげで顧客のところにいって色々な知識を教えてもらい、広く浅く知っている。



 考えた結果、オレはオアシスをつくる事を決めたんだ──。
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