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爆誕精霊仕様ビキニアーマー編

その2

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 階段を昇り地上に出て、日射しを浴びながら伸びをする。
 マリオネットだからその必要はないのだが、人間だった頃のクセが抜けない。それになんとなく気持ちが整理される。王国で手に入れた衣服も本当は必要ないのだが、今後知的種族と会う機会が多くなりそうなので身につけている。

 ふり返り上を仰ぎ見る。そこには目を見張らんばかりに育った巨木が空高くそびえ立っていた。オレの本体である世界樹だ。
そしてその真横に、同じくらいの巨大樹が切り倒されていた。

「いちど切り倒された時はどうなるかと思ったけど、なんとか元のサイズまで成長できたな」

 その時のことを思うと感慨深いが、今はモーリのところに行かなくては。
 世界樹周辺近辺、聖域である通称[世界樹庭園]の周りを囲む、結界がわりの茨や毒草を自分の能力でどかすと、普通の森に出る。そこから東に向かい森の外周にある街道まで出て、その脇にある大型馬車に着き、扉をノックする。

「モーリ、いるかい」

すぐに扉が開き、商人風体で小太りの中年男性が招き入れる。

「ようこそクッキーさん、お待ちしておりました」

「ユーリから聞いたけど、何かあったのかい」

「本国からの定期連絡が先ほど参りまして、帝国から使節が来るそうです。その際に、ここに寄る道筋を選ぶとの連絡がありました」

「理由は聞いているかい」

「帝国の意向なので、そこまでは」

 モーリはかぶりを振るが、想像はついている。この森を視察したいのだろう。

「モーリは何か指令とか受けているのかい」

 応接間で対面の椅子に座わりモーリは頭を振る。

「今のところは何も。まあ私はクッキーさん担当ですから、なにかあるのなら本国から応援が来るでしょう。本来私はしがない旅商人なんですから」

 森で採れた薬草を煮出したお茶モドキを飲みながら、のんびりとこたえる。その姿に少々苦笑した。
 いつぞや一緒に牢屋に入れられた時も、落ち着いた態度をとっていたのを思い出す。

 思い返せば、モーリとの出会いが運命の分岐点だったかもしれない。彼の娘で女王陛下親衛隊長のゾフィいわく、父はトラブルメーカーでいつも旅先から仕入れ物と問題を持ち帰ってくる。だそうだが案外本当にそうかもしれない。

 自称しがない旅商人モーリの、現在の肩書はカーキ=ツバタ王国から[ユグドラシル樹立国]に送られた大使である。
 任命したのはカーキ=ツバタ王国の5代目女王、エルザ=クワハラ=カーキツバタ。
 どんな人物かというと、ひと言で言うと下世話な言い方で申し訳ないが、喰えない女、である。

 彼女はオレを国王とし、世界樹の森を[ユグドラシル樹立国]と認め、連盟国となった事を親交のある各国に報せた。
 正直、ヒト族の決めた事に興味は無かったが、あとあとになってエルザ女王の目論見に気がつく。

 南の海洋帝国こと海神ファスティトカロン帝国、北の遊牧民連合国家ノマド、そして西の獣人族盟主連盟ガロゥ、そのどの国もカーキ=ツバタ王国に侵攻するには森を通らなくてはならない、つまり連盟国としては、カーキ=ツバタ王国を守らなくてはならないのだ。

 そして東の山脈にある洞穴から繋がる闇地底の民ダークボトムズに関しては、オレの個人的な理由で地上への侵攻を防がなくてはならない。
 つまり、世界樹候補たるオレが、ヒト族の一国を守るかたちになっているのだ。エルザ女王が喰えない女と評価する理由はお分かりいただけただろうか。

「帝国が来るのはいつ頃か分かるかい」

「そうですね、はっきりとは分かりませんが、正使が我が国に来て了承の返事をしたまでを聞いてますので、今度は日にちを決める正使が来て了承する返事をしてから動くでしょう。帝国と王国の往復は馬を使っても20日はかかるでしょうから、予想外に早く進む事態であってもまだ10日は先でしょうね」

 それが本当なら10日の余裕はあるな。その間なら本体に籠っていられるか。

「モーリ、じつはしばらく出かけることになったんだ。10日後なら戻ってきていると思うけど、姿を見かけなくても気にしないでほしい」

「はあ、わかりました。その間、なにかあった場合はどうすればいいですか」

「そうだな───ユーリに相談してもらうしかないか」

 アディは論外だし、ペッターは地下から出られない以上、ユーリしかいない。これだけしかいないのに、よく国なんて名乗ったもんだよ。いや、名付けられたもんだよ。

 モーリとの打ち合わせも終わり、しばらく森というか外界と接触を切るから、見て回ることにした。

 しかし育ったよなぁ。転生したばかりのことが嘘のようだ。あの頃は砂漠で枯れそうになってた苗木だったもんな。
 200年、いろんな出会いと別れもあったっけ、時計もなく追われることもなかったから、そんなに経っているとは思わなかった。

 転生したばかりの頃は、ただの悪夢だと思ってたもんなぁ……。

 
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