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カーキ=ツバタ王国編

その3

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「まず、その男を世界樹と呼んでいたが、あの森はそいつの能力ちからなのか」

エルザ女王は少し間を空けてから、その通りだとこたえる。

「ならば、世界樹とどうやって本当だと分かったのだ、まさか仲間達をどうにかしたからとでも言うまいな」

今度もエルザ女王は間を空ける。

(アイツ頭いいな)

(なにが)

(ひとつの問いかけに、ふたつの質問を盛り込んでいる。それに気づいたから、エルザ女王はなかなか話せないんだ)

(へえ、やるじゃん)

まったくだ。情報を得るためとはいえ、敵陣に一人で乗り込んで、失敗しても機転をきかせて人質をとり、さらにこの状況の中で対等以上の交渉をする。

大胆にして剛胆、なおかつ知恵もまわる。まるでユーリみたいだな。

そのユーリは、さっきからオレのふくらはぎを、皆に見えないようにコツコツと蹴っている。

ハ・ナ・レ・ロ

というのは分かっているのだが、今はちょっとなあ……

「そちらの方が世界樹様というのは、女神フレイヤ様の娘であるバルキリー様の名に誓って本当だと言えます。なにしろバルキリー様達はそれを見ていたのですから」

「そういえばそちらは女神信仰であったな。なるほど、信用しよう」

「ではこちらの番ですね。なぜトテップ族として、もしくはダークボトムズとして我が国を襲ったのです」

エルザ女王もふたつの質問を盛り込んて問いかける。さすがだな。

「それに答えるには、質問の権利以外のもので返してもらいたい」

「それは」

「この国の城壁を出るまで手出しをしないという約束だ。もちろんこの娘はそれまで人質で、城壁を出たら離してやる」

「きさまぁ」

ゾフィ隊長が腰の短剣に手をかけて、今にも斬りかかりそうになるが、それをエルザ女王が片手で抑える。

「いいでしょう、その分納得のいく説明をしてくれたらの話ですが」

「ああ、我も大地の女神ユリアナの名に誓って約束を守ろう」

「では、こちらも女神フレイヤ様の名に誓って約束を守りましょう。よろしいですね世界樹様」

念を押すエルザ女王に、ああとオレは答える。
そしてアディを抑えている右手はそのままで、そっと左手をユーリの方に後ろ手におくる。
ユーリはその手を左手で掴み、親指でオレの手のひらに丸をかいた。
エルザ女王の意図は伝わったようだ。

「いいだろう。まず今回の事はダークボトムズとは関係無い、トテップ族の事情でやったことだ」
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