44 / 177
カーキ=ツバタ王国編
その9
しおりを挟む
エルザ女王の傍らにいるアンナ王女のもとにゾフィ隊長が行くと、侍従長がオレ達を席まで案内し、挨拶をして部屋を出ていく。
それを見終えてから、あらためてオレはエルザ女王に謝罪をした。
「エルザ女王、あらためまして世界樹であることを隠していたことを御詫び申し上げます」
「こちらこそカイマの仲間と疑い、申し訳ありませぬ」
社交辞令の謝罪が済むと互いに席に着き、本題に入った。
「いない間に何があったか、お教えねがいますか」
この問いにはゾフィ隊長が答えてくれた。
「世界樹様を東城壁向こうに案内した後、我々は各個で城壁上と内側のカイマと戦いになりました。
次々と来るカイマ相手に、終りなき戦いを覚悟していましたが、途中からまったく来なくなったので、私が飛んで確認しに行くと、城壁外側が森というか林というか、とにかく木々に囲まれていて、それにカイマ達が吸い寄せられるように向かっていくのを見ました。
ああ、これが世界樹様の言っていた事なんだと思い、それを衛兵達に伝えに飛び回り、その後女王陛下に伝えると親衛隊は全員広場に戻り、城内のカイマを制圧。それを確認されて、バルキリー様達に御還り願いました」
続けてエルザ女王が言う。
「おかげで助かりました。それにユーリ殿が無防備のわたくしを護っていただき、それだけでも感謝に絶えません」
「女王陛下は気丈にも続けて指揮を取り、城内の全ての安全を確かめたところで、朝がきて平和が戻ったのが昨日の話です」
「被害は」
「家屋損壊が30棟、衛兵が13人死亡、重傷220人、軽傷113人、国民の男が70人死亡、重軽傷が多数、女の被害は無しというところです」
「……そんなに……」
「我が国は城内での殺生を禁止しているのが仇になった。しかしヤツ等の目的が女を拐うことだというのなら、じゅうぶんな成果だろう。それに昨夜は被害は無かったんだ」
「それなのに軍務大臣が、我が国は専守防衛なのだから被害が出たのだ、早急に兵士を募り攻撃用の軍隊を創るべきだと息巻いているのよ」
「アンナ、口を慎みなさい。世界樹様に俗な話をするものではありません」
「しかしお母様、いえ女王陛下、この国が軍隊を持たないのは建国からの伝統ではありませぬか。それなのに……」
カーキ=ツバタ王国は建国100年のまだ若い国であるし、位置的にも戦略の価値のない国でもある。
今回、カイマが襲来するまでの100年、他国との戦争なんて無かったのだろう。もしあったら世界樹の森を必ず通る筈だから気づかない筈がないからな。
「この国はあくまで国民を護る為に存在する国なのです。軍隊など持ちませんよ」
カイマ達から国民を護る、それがカーキ=ツバタ王国の存在意義なのだろう。
それを見終えてから、あらためてオレはエルザ女王に謝罪をした。
「エルザ女王、あらためまして世界樹であることを隠していたことを御詫び申し上げます」
「こちらこそカイマの仲間と疑い、申し訳ありませぬ」
社交辞令の謝罪が済むと互いに席に着き、本題に入った。
「いない間に何があったか、お教えねがいますか」
この問いにはゾフィ隊長が答えてくれた。
「世界樹様を東城壁向こうに案内した後、我々は各個で城壁上と内側のカイマと戦いになりました。
次々と来るカイマ相手に、終りなき戦いを覚悟していましたが、途中からまったく来なくなったので、私が飛んで確認しに行くと、城壁外側が森というか林というか、とにかく木々に囲まれていて、それにカイマ達が吸い寄せられるように向かっていくのを見ました。
ああ、これが世界樹様の言っていた事なんだと思い、それを衛兵達に伝えに飛び回り、その後女王陛下に伝えると親衛隊は全員広場に戻り、城内のカイマを制圧。それを確認されて、バルキリー様達に御還り願いました」
続けてエルザ女王が言う。
「おかげで助かりました。それにユーリ殿が無防備のわたくしを護っていただき、それだけでも感謝に絶えません」
「女王陛下は気丈にも続けて指揮を取り、城内の全ての安全を確かめたところで、朝がきて平和が戻ったのが昨日の話です」
「被害は」
「家屋損壊が30棟、衛兵が13人死亡、重傷220人、軽傷113人、国民の男が70人死亡、重軽傷が多数、女の被害は無しというところです」
「……そんなに……」
「我が国は城内での殺生を禁止しているのが仇になった。しかしヤツ等の目的が女を拐うことだというのなら、じゅうぶんな成果だろう。それに昨夜は被害は無かったんだ」
「それなのに軍務大臣が、我が国は専守防衛なのだから被害が出たのだ、早急に兵士を募り攻撃用の軍隊を創るべきだと息巻いているのよ」
「アンナ、口を慎みなさい。世界樹様に俗な話をするものではありません」
「しかしお母様、いえ女王陛下、この国が軍隊を持たないのは建国からの伝統ではありませぬか。それなのに……」
カーキ=ツバタ王国は建国100年のまだ若い国であるし、位置的にも戦略の価値のない国でもある。
今回、カイマが襲来するまでの100年、他国との戦争なんて無かったのだろう。もしあったら世界樹の森を必ず通る筈だから気づかない筈がないからな。
「この国はあくまで国民を護る為に存在する国なのです。軍隊など持ちませんよ」
カイマ達から国民を護る、それがカーキ=ツバタ王国の存在意義なのだろう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる