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カーキ=ツバタ王国編

その3

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「モーリとやら、[100年後の災厄]というのは、あくまでも伝説だ。そなたのした事はなんの根拠もない流言であるぞ」

文官の言葉にモーリは言い返そうとしたが、有無を言わさない語気で文官は言葉を続ける。

「なるほど確かに獣人が飛来してきた。モーリの言う通り東の村も襲われたとしよう。だがそれらを結びつけるのは、些か早計ではないか」

確かにそうだ、それを結びつける根拠は無い。

「お恐れながら、それならば何故普段聞いたことの無い鐘が鳴ったのでしょう。あれは災厄があった時の鳴らし方ではないのですか」

「確認をとったが、あれは見張り当番であった新兵が慌てて鳴らしたのが原因であった。つまりは関係ない」

「そんな」

「納得したか。では次に客人の3人に訊く。旅人だと言うが、我国には如何様な理由で参ったのだ」

文官の矛先はこちらに向いた。さて、なんて答えよう。ビキニアーマーを見に来ました、で通じるかな。ここは無難にユーリの目的である道具の仕入れに来たがいいかな。

「あたし達はビキニアーマーを見に来たの」

うん、さすがアディ。打てば響くように無思考で答えるのね。

「ビキニアーマー? とは? 」

おや、意外にも文官は知らなかったか。あまり街に出ないのかな。

モーリが手を上げ発言の許可をもらうと、今街中で流行っている衣装の類いだと説明した。

「そんなものが流行っているのか。お前達は何処から来たのだ」

「ここから西に3日歩いたところの森よ」

「森? どこかの国か村ではないのか」

「そんなとこ住むわけないじゃん、あたし達は森でないと生きていけないんだから」

「狩人というのはそういうものなのか。まあそんな生活をしてたら、そういうものも見たくなるんだろうな」

どこかずれている会話を、オレはドキドキしながら聞いていた。とりあえず成立したようだ。

文官は次にユーリに問いかける。カイマを仕留めた張本人だからな当然だ。

「エルフよ、お前があの獣人を殺害したそうだな。何故そこまでした。この国の中では殺生は重罪だと知らなかったのか」

ユーリはうつ向いて黙ったままだった。文官は声を荒げる。

「聞こえんのか、エルフ! 何故殺したのか訊いている! 」

それでもユーリは答えない。文官がさらに詰問しようとしたが、オレが割って入った。

「発言をさせてください」

こんな台詞、転生して初めて言ったな。とりあえずここは下手に出た方が良さそうだしな。
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