5 / 177
カーキ=ツバタ王国編
その3
しおりを挟む世界樹の枝から創られたこの躯体は、これまた世界樹に生った実を取り込むことにより、一時的に本体と同じ能力を使える。
木の実を飲み込み、凝縮された[世界樹の生命力]を躯体のすみずみまでいき渡らせる。
これで[世界樹の森]にある全ての植物の能力を使えるようになるのだ。
衣服が破れないように手首の部分から、蔓を生やし伸ばし、鞭のようにカイマを叩く。ユーリの真似だ。
「ギェェェ」
痛み、は動物の行動を萎縮させる。それは人であろうが獣であろうが一緒なのに、なのにコイツらは違った。
まるで痛みを感じない、いや、感じるけど止まらないという感じだ。
オレはようやくカイマ達を観察することができはじめた。
「なんだコイツ、コウモリ人間なのか」
前世で観てた特撮ヒーロー物に出てくる怪人のような姿だった。
頭からオニのような角、目は瞑っている、耳は比較的大きめ、口は人と同じくらい。体格も人並みだ。
体毛は少なく、衣服らしき物は腰の辺りに巻かれている布だけで、足は裸足で人と同じ。
一番の特徴は、脇の下から肘まで生えているコウモリのような翼だろう。
獣人族は何度か見たが、このタイプは初めてだった。
襲ってくる姿には知性を感じられない、人の形をした野生動物、しかも凶暴系だとしか言いようがない。
「クッキー、ユーリ、みんな避難したわよー」
アディの言葉に、オレはコイツらを追っ払うから捕まえるに目的を変えた。
「ユーリ、コイツを捕まえるからしばらく2つ相手にしてくれ」
ユーリは黙って頷くと、怪魔2つを相手にする。
妙だな、やはりユーリの様子が変だ。気にはなるがとりあえず捕獲だ。オレはカイマに向かって蔓を伸ばす。
さっきと違うのは、叩く為でなく捕まえるのが目当てなので、カイマに巻き付ける。
足首から胴体、それからバタバタさせている羽根というか腕に巻きつけて、ようやくおとなしくなった。
あと2つ。
この様子を見て逃げられるかと心配したが、そんなことはなかった。そしてオレはようやく気がついた、コイツらはユーリを襲うのが目的になっていると。
「させるか」
オレは1つ、そしてもう1つも蔓でがんじがらめにして捕獲した。やれやれなんとか終わったか。しかしそれで終わらなかった、ユーリが鞭の握りに仕込んであるナイフをとりだしたのだ。
「お、おい、ユーリ」
オレの言葉を聞くことなく、普段は獲物を仕留める時に使うナイフを、カイマの胸に突き刺す。
「ユーリ、止めるんだ、ユーリッ! 」
オレの止める言葉を聞くこともなく、ユーリは他のカイマも続けて刺し、すでに死んでいるのに何度も何度もカイマ達を刺し続けていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
31
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる