あげは紅は ◯◯らしい

藤井ことなり

文字の大きさ
上 下
53 / 60
あげは紅ははかないらしい

その4

しおりを挟む
 生活指導室に入ると、あたしとオーツチは横並びにパイプ椅子に座り、事務机を挟んで向こうに葵先生が座る。

「で、何があったの?」

説明をどうするか考えあぐねていると、先にオーツチが口を開いた。

「紅が、僕の大事なモノを壊したので、それを咎めたら逆ギレされて、ズボンを脱がされました」

はあああ!!!

ブチ切れてぶん殴りかけたが、葵先生がそれを目で制して質問を続ける。

「大事なものというのは、何かしら」

それにはオーツチは答えられなかった。それはそうだろう、エンピツモドキとは何か? それは何をするものか? それで何をしたのか? 答えられる訳がない。
しかも証拠であるエンピツモドキも無いのだ。

「それはそのぅ」

「答えられないの」

「……」

 ここからのさんごちゃん、いや葵先生の尋問は凄まじかった。
黙って横で聞いていたが、代わりにゴメンなさい悪かったです赦してくださいと、言いたくなるような勢いでオーツチを追及する。

「な、何でもないです。何も持ってきませんでした。紅はなにも壊していません」

ついに音を上げ、今度は葵先生に泣かされるオーツチ。
まさか叔母と姪に泣かされたとは、夢にも思わないだろうな。


「つまり、紅さんにズボンを脱がされたけど、それには特に理由は無いのね」

「……はい」

葵先生は席を立ち、腕組をしながらうろうろすると、ため息をした後、オーツチに向かって話す。

「分かりました。あなたはもう戻ってよろしい。紅さん、あなたはそれについてこれから厳重注意をします」

葵先生の言葉にあたしは慌てふためる。さっきと同じことを今度はあたしが受けるのー

「そ、そんな」

「お黙りなさい」

ひっ、と思わず首をすくめる。昔、さんごちゃんの買ったばかりのクルマを傷つけた時を思い出した。
あの時と同じくらい恐い……

さっきまで泣いていたオーツチは、あたしが怒られると分かったら、ざまあみろみたいな顔でニタニタする。調子のいいヤツめ。

席を立ちさっさと部屋を出ていくオーツチを背中で感じると、あたしは葵先生に話しかけようとしたが、それを自分の口に人差し指を立てて止めた。

「んんん」

咳払いをすると、扉の向こうで慌てて離れていく足音が聴こえた。
どうやらオーツチが聞き耳を立てていたらしい。

「さて、これで大丈夫ね。あげは、いったい何があったの? さっきの大槌っていうコ、何を隠していたの?」

「それは、そのぅ」

「大丈夫よ、今は葵先生としてじゃなくて、さんごちゃんとして聞くから」

「なんでまた」

「あのコは嘘を言ってないのは判ったし、それでも言えないモノって何なのか興味があるからね、個人的好奇心。それと今後の事もあるから」

「今後の事?」

「そのうち分かるから、それは後で。さ、何があったか話して」

あたしは、信じられないと思うけどと前置きして、ここ数日の事と今日の昼休みに起きた事を話した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり
キャラ文芸
 OLのサクセスストーリーです。 半年前、アメリカ本社で秘書をしていた主人公、佐野千秋(さの ちあき) 突然、日本支社の企画部企画3課の主任に異動してきたが、まわりには理由は知らされてなかった。 そして急にコンペの責任者となり、やったことの無い仕事に振り回される。 上司からの叱責、ライバル会社の妨害、そして次第に分かってきた自分の立場。 それが分かった時、千秋は反撃に出る! 社内、社外に仲間と協力者を増やしながら、立ち向かう千秋を楽しんでください。 キャラ文芸か大衆娯楽で迷い、大衆娯楽にしてましたが、大衆娯楽部門で1位になりましたので、そのままキャラ文芸コンテストにエントリーすることにしました。 同時エントリーの[あげは紅は はかないらしい]もよろしくお願いいたします。 表紙絵は絵師の森彗子さんの作品です pixivで公開中

【完結】奔波の先に~井上聞多と伊藤俊輔~幕末から維新の物語

瑞野明青
歴史・時代
「奔波の先に~聞多と俊輔~」は、幕末から明治初期にかけての日本の歴史を描いた小説です。物語は、山口湯田温泉で生まれた志道聞多(後の井上馨)と、彼の盟友である伊藤俊輔(後の伊藤博文)を中心に展開します。二人は、尊王攘夷の思想に共鳴し、高杉晋作や桂小五郎といった同志と共に、幕末の動乱を駆け抜けます。そして、新しい国造りに向けて走り続ける姿が描かれています。 小説は、聞多と俊輔の出会いから始まり、彼らが長州藩の若き志士として成長し、幕府の圧制に立ち向かい、明治維新へと導くための奔走を続ける様子が描かれています。友情と信念を深めながら、国の行く末をより良くしていくために奮闘する二人の姿が、読者に感動を与えます。 この小説は、歴史的事実に基づきつつも、登場人物たちの内面の葛藤や、時代の変革に伴う人々の生活の変化など、幕末から明治にかけての日本の姿をリアルに描き出しています。読者は、この小説を通じて、日本の歴史の一端を垣間見ることができるでしょう。 Copilotによる要約

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...