あげは紅は ◯◯らしい

藤井ことなり

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あげは紅ははかないらしい

その2

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 教室に入ると、シューガールが揃っていた。
あらためてビトーちゃん達に話を訊くと、はっちゃん自身は転校したくない、けどお父さんがもう行くなと言っているそうだ。

「なんなのよ、そのオヤジ。娘の人生にでしゃばるんじゃないわよ。そのコもそのコよ、いつまでも親の顔色を伺っているんじゃないわよ」

自分の席でネイルの手入れをしながら、憮然とするカトーちゃんに、ビトーちゃんが言い返す。

「舞ちゃんは優しいから…、お父さんが自分を想っているから、言えないの…」

「もう高校生でしょう、自分の意見くらい伝えなさいよ。ビトーちゃんは先輩なんだから、そう導いてあげなくちゃ」

「ビトーちゃんは、ちゃんと励ましてましたわよ。責めないでください」

「ムトーちゃんは甘やかせ過ぎ。今はいいけど、ビトーちゃんだって、いずれは独りになるかも知れないのよ、あなたいつまでも傍に居るつもりなの」

「ビトーちゃんが望むなら、そうします」

ムトーちゃんの凛とした返事に、ビトーちゃんは頬を赤らめる。

「やれもしないこと言わないでよ」

立ち上がり、ムトーちゃん詰め寄る。2人とも同じくらい背が高いから、座っていたあたし達はこの頂上決戦を見上げるかたちになる。

「カトーちゃん、落ち着いてよ。うちらの頭脳担当なんだから。ムトーちゃんも。いつも沈着冷静なあんたがどうしたの」

タカコの言葉も2人の耳に入らない。

かたや巴御前の如く凛々しい日本美人、かたや大人しめではあるが、怖いもの知らずのギャル美人。
正反対に見えるが、気の強いところは似ている。
 
にらみ合いが続き、あわや取っ組みあいがはじまるかという時に、予鈴が鳴った。

ビトーちゃんが無理矢理引っ張って、ムトーちゃんをとなりの教室に連れていく。その間もにらみ合ったままだった。

いやな空気になってきたな。本当に早く何とかしなくっちゃ。

「カトーちゃ~ん」

おそるおそる話しかけてみる。

「なに」

席に戻り前を見たまんま振り返りもせず、ムスッとした声で答えがくる。

「手っ取り早く片付けるなら、どうしたらいいと思う」

しばし無言の後、相変わらず背を向けたまま答える。

「その1年生のスカートをずり下げたヤツを、切腹か張りつけにする」

「もう少し穏やかに」

「その1年坊主を、くそオヤジの前に連れ出して土下座させればいいじゃん。目に見える決着が欲しいのよ」

「あー、そういうことか。でもどこのクラスのコか覚えてないなー」

「なにも当事者でなくてもいいのよ、テキトーなヤツを人身御供にすればすむわよ」

いや、それはまた新たな火種ができるのではないだろうか。

「別案はございませんでしょうか」

またしばらく無言であったが、今度はこちらを向いて話してくれた。

「このパンチラブームの火付け役を、分かりやすく厳重注意すればいいんじゃない」
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