あげは紅は ◯◯らしい

藤井ことなり

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あげは紅ははかないらしい

その8

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 あとはまかせて、部屋に戻り明日の準備をする。
スマホをチェックすると、メールと通話の着信歴があった。
タカコとビトーちゃんからだった。

タカコからのメールは、

[生徒会への要請 サクラチル]

という文面だった。電報か。
もうひとつ、ビトーちゃんからのメールをみる。

[こんばんは、あげは様
今日も1日素敵な日でしたね。あなたに会えることは毎日の楽しみです。
舞ちゃんの家には迷わずに行けました。あげは様の道案内地図が良かったからですね。ありがとうございます。
道中、ムトーちゃんが心強く私を守ってくれて、安全で安心して到着いたしました。

 舞ちゃんのお父さんに挨拶すると、最初はそれはそれはとても恐かったのですが、お父さんの声で、部屋から出てきた舞ちゃんの説得のお陰で、話すことを許してくれて、無事会えました。

 可愛い後輩の舞ちゃんのコトですが、悲しんでいました。自分のせいであげは先輩と青草先輩に迷惑かけてしまったと、涙をぽろぽろとさせながら、しきりに後悔していました。

あたし達は、そんなこと無いよと慰めようとしましたが、あたしももらい泣きしていまい、そんな2人をムトーちゃんが包み込むように抱きしめてくれました。

早く学校に行きたいそうです、みんなに会いたいそうです。

なんとかしてあげたいですね。]

さすが文芸部という文面だが、要点をまとめてほしいな。結局なんともなってないじゃない。

しかしそうか、両方ともダメだったか。細かいところを訊きたいな。

時間はまだ大丈夫だな。電話してみるか。

「あげは、入るわよ」

ノックのあと、おそらくシャワーを浴びてジャージに着替えたであろう、さんごちゃんが入ってきた。

「ジャマしちゃったかな」

「ううん、明日でもいいことだから大丈夫よ。生徒会、ダメだったって」

「あらそう、頑張ってね」

素っ気なく言うと、布団に潜り込んでいく。
ゆっくり話をしたくもあったが、お互い明日があるし、早寝するべきだろう。
あたしは明かりを消すと、寝る体勢に入った。

「さっきの続きだけどね」

さんごちゃんが、暗闇のなかから呟く。

「大学時代に、友達の家業がつぶれそうになったの。それでそのコが大学生でありながら立て直して、今は経営者なのよ」

「すごいね」

「そう、すごいのよ。私も相談にのったし、手伝いもしたの。その時にね、経営も悪くないなぁって思って、就職の時、面接官その話をしたの」

「それで今の仕事になったんだ」

「あげは、もうすぐ世の中に出ることになる。でもその前にいろんな事を経験しなさい。遊んで、友達をつくって、自分と話し合いなさい」

それだけ言うと、さんごちゃんは夢の世界へと落ちていった。

寝る前に頭使うようなこと言うなよ、あたしはなかなか寝つけなかった。
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