15 / 60
あげは紅ははかないらしい
その3
しおりを挟む
そんなあたしとは対照的に、究は難しそうな顔をして観ている。
「ピーマンの量が完璧だ、この赤色を引き立てる最高の緑の数。なんて食欲を沸き立てるんだろう」
「そう思うんなら早く食べなよ。冷めたらもったいないよ」
「あ、いや……」
「あ、そうか。ねこ舌だったっけ」
とはいえ、冷めすぎたら美味しくないと思ったのか、フォークを取り食べはじめた。
表面とか端っこの冷めはじめた辺りのパスタを選びながら巻きつけ、赤い塊にして口に放り込む。
それを味わうというよりは、調べるとか確かめるように咀嚼する。とても美味しそうに食べているとは思えない。
しかしその直後、まるで自分がねこ舌だったのを忘れたかのように、すごい勢いで食べはじめた。
「ちょ、ちょっと究、あんた大丈夫?」
そんな気づかいが無駄なように、あっという間に食べ終えてしまった。
「すごい、なにも考えられなかった。ただ食べたいとしか思えなかった」
と、くやしそうに言う。
美味しいもの食べて、悔しがるなんてヤツがいるかよ。
そしてそれを嬉しそうに見ている、はっちゃん。
かわいい。
トレーを抱きしめながらくねくねするその姿は、計算でやっているのかとツッコミたくなるくらい、かわいい。
空になった鉄板を下げると、絶妙なタイミングでコーヒーが差し出される。
アイボリーの厚手のコーヒーカップとソーサー。その中に黒と琥珀の中間みたいな色の香しい液体。
ザ・コーヒーという感じだ。
いつもなら砂糖とミルクを入れて飲むのだけど、究と同じようにブラックで飲んでみる事にした。
あ、美味し
水でも、ジュースでも、お茶でもなく、ナポリタンの後はコーヒーに決まってるじゃん、と言いたくなるくらい合う。
ふと究を見ると、また悔しそうに飲んでいる。
はいはい美味しいのね、それなら笑顔で飲めよ。
「どうだい、うちのコーヒーは?」
キッチンから出てきたマスターが、微笑みながら尋ねる。
人当たりは良さそうだけど、こだわるところはこだわるよ、そんなイメージの見た目だ。
「コーヒーもナポリタンも美味しかったです。今度、友達を連れてきていいですか」
「もちろんどうぞ。そっちは彼氏さんかな」
「ちがいます、究はあたしの彼氏じゃなくて、はっ……」
おっと、2人はまだお付き合い確定じゃなかったっけ、余計な事を言うところだった。そう思いながら、はっちゃんを見る。
しかし、手遅れだったようだ。
その目線で、マスターは察してしまったようだ。
「……舞、こちらの方はお友達じゃないのかい」
「青草先輩はぁ 友達っていうかぁ」
はっちゃんのもじもじした姿をみて、マスターのこめかみに血管が浮き上がった。
「ピーマンの量が完璧だ、この赤色を引き立てる最高の緑の数。なんて食欲を沸き立てるんだろう」
「そう思うんなら早く食べなよ。冷めたらもったいないよ」
「あ、いや……」
「あ、そうか。ねこ舌だったっけ」
とはいえ、冷めすぎたら美味しくないと思ったのか、フォークを取り食べはじめた。
表面とか端っこの冷めはじめた辺りのパスタを選びながら巻きつけ、赤い塊にして口に放り込む。
それを味わうというよりは、調べるとか確かめるように咀嚼する。とても美味しそうに食べているとは思えない。
しかしその直後、まるで自分がねこ舌だったのを忘れたかのように、すごい勢いで食べはじめた。
「ちょ、ちょっと究、あんた大丈夫?」
そんな気づかいが無駄なように、あっという間に食べ終えてしまった。
「すごい、なにも考えられなかった。ただ食べたいとしか思えなかった」
と、くやしそうに言う。
美味しいもの食べて、悔しがるなんてヤツがいるかよ。
そしてそれを嬉しそうに見ている、はっちゃん。
かわいい。
トレーを抱きしめながらくねくねするその姿は、計算でやっているのかとツッコミたくなるくらい、かわいい。
空になった鉄板を下げると、絶妙なタイミングでコーヒーが差し出される。
アイボリーの厚手のコーヒーカップとソーサー。その中に黒と琥珀の中間みたいな色の香しい液体。
ザ・コーヒーという感じだ。
いつもなら砂糖とミルクを入れて飲むのだけど、究と同じようにブラックで飲んでみる事にした。
あ、美味し
水でも、ジュースでも、お茶でもなく、ナポリタンの後はコーヒーに決まってるじゃん、と言いたくなるくらい合う。
ふと究を見ると、また悔しそうに飲んでいる。
はいはい美味しいのね、それなら笑顔で飲めよ。
「どうだい、うちのコーヒーは?」
キッチンから出てきたマスターが、微笑みながら尋ねる。
人当たりは良さそうだけど、こだわるところはこだわるよ、そんなイメージの見た目だ。
「コーヒーもナポリタンも美味しかったです。今度、友達を連れてきていいですか」
「もちろんどうぞ。そっちは彼氏さんかな」
「ちがいます、究はあたしの彼氏じゃなくて、はっ……」
おっと、2人はまだお付き合い確定じゃなかったっけ、余計な事を言うところだった。そう思いながら、はっちゃんを見る。
しかし、手遅れだったようだ。
その目線で、マスターは察してしまったようだ。
「……舞、こちらの方はお友達じゃないのかい」
「青草先輩はぁ 友達っていうかぁ」
はっちゃんのもじもじした姿をみて、マスターのこめかみに血管が浮き上がった。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
冬の水葬
束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。
凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。
高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。
美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた――
けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。
ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女
藤井ことなり
キャラ文芸
OLのサクセスストーリーです。
半年前、アメリカ本社で秘書をしていた主人公、佐野千秋(さの ちあき)
突然、日本支社の企画部企画3課の主任に異動してきたが、まわりには理由は知らされてなかった。
そして急にコンペの責任者となり、やったことの無い仕事に振り回される。
上司からの叱責、ライバル会社の妨害、そして次第に分かってきた自分の立場。
それが分かった時、千秋は反撃に出る!
社内、社外に仲間と協力者を増やしながら、立ち向かう千秋を楽しんでください。
キャラ文芸か大衆娯楽で迷い、大衆娯楽にしてましたが、大衆娯楽部門で1位になりましたので、そのままキャラ文芸コンテストにエントリーすることにしました。
同時エントリーの[あげは紅は はかないらしい]もよろしくお願いいたします。
表紙絵は絵師の森彗子さんの作品です
pixivで公開中
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
麻雀少女激闘戦記【牌神話】
彼方
キャラ文芸
この小説は読むことでもれなく『必ず』麻雀が強くなります。全人類誰もが必ずです。
麻雀を知っている、知らないは関係ありません。そのような事以前に必要となる『強さとは何か』『どうしたら強くなるか』を理解することができて、なおかつ読んでいくと強さが身に付くというストーリーなのです。
そういう力の魔法を込めて書いてあるので、麻雀が強くなりたい人はもちろんのこと、麻雀に興味がある人も、そうでない人も全員読むことをおすすめします。
大丈夫! 例外はありません。あなたも必ず強くなります! 私は麻雀界の魔術師。本物の魔法使いなので。
──そう、これは『あなた自身』が力を手に入れる物語。
彼方
◆◇◆◇
〜麻雀少女激闘戦記【牌神話】〜
──人はごく稀に神化するという。
ある仮説によれば全ての神々には元の姿があり、なんらかのきっかけで神へと姿を変えることがあるとか。
そして神は様々な所に現れる。それは麻雀界とて例外ではない。
この話は、麻雀の神とそれに深く関わった少女あるいは少年たちの熱い青春の物語。その大全である。
◆◇◆◇
もくじ
【メインストーリー】
一章 財前姉妹
二章 闇メン
三章 護りのミサト!
四章 スノウドロップ
伍章 ジンギ!
六章 あなた好みに切ってください
七章 コバヤシ君の日報
八章 カラスたちの戯れ
【サイドストーリー】
1.西団地のヒロイン
2.厳重注意!
3.約束
4.愛さん
5.相合傘
6.猫
7.木嶋秀樹の自慢話
【テーマソング】
戦場の足跡
【エンディングテーマ】
結果ロンhappy end
イラストはしろねこ。さん
海の見える家で……
梨香
キャラ文芸
祖母の突然の死で十五歳まで暮らした港町へ帰った智章は見知らぬ女子高校生と出会う。祖母の死とその女の子は何か関係があるのか? 祖母の死が切っ掛けになり、智章の特殊能力、実父、義理の父、そして奔放な母との関係などが浮き彫りになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる