上 下
34 / 69
変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その5

しおりを挟む
「そんなふうに見える」

「うん、なんか嬉しそう」

 プロジェクトを任された事のせいかな、それほどとは感じてなかったけど、どうやら気がつかないうちに気が高揚していたようだ。

「じつはね……」

そのことを美恵に話すと、大いに喜んでくれた。

「すごいじゃない圭一郎さん、会社を任されるなんて」

「おいおい飛躍し過ぎだよ、新基軸のプロトタイプを任されただけなんだから。落ち着いてくれよ」

 先日の件以来、美恵の思い込み暴走が激しくなっている気がする。なるだけ正確に事実を伝える工夫をしないといけないかもしれない。

「そういうわけでまだ先の事だけど忙しくなるかもしれない。その時はまた言うからね」

「うん、わかった」

「美恵の方は変わりないかい」

「う~んと、あたしも未定の予定が入ってきてる」

「というと」

「衣装を納めに行ったとき師匠からまた仕事を頼まれたんだけど、モデルさんも衣装も決まってないんだ」

「なんだそりゃ」

「よくわかんない。師匠の昔からの知り合いからの依頼なんだって」

 そう言って、一口サイズにしたハンバーグを口にしてからご飯を食べる美恵。話から察するに美恵を予約確保したいんじゃないだろうかと思う。

「ま、圭一郎さんと一緒でその時になったら言うわ」

「なんのキャラを作るか分かったら教えてくれ、予習したいから」

 もうイブの夜ようなことはゴメンだからな。そうなったとき用に対処を備えなくては。




 ──そして仕事納めと会社の忘年会が終わった翌日のニ十九日の夕方、駅前の居酒屋かたやぶり店長の一階にある六人座れる掘りごたつ席で、僕はまた途方にくれていた。

 班の納会で集まったのは、渋い顔をしている冨田さん、眉間にシワを寄せている蓮池さん、呆気にとられている玉野くん、大喜びの北今くん、……そして空気を読まずはしゃいでいるわが弟、恵二郎がなぜかいる……。

「班長、誰ですアレ」

隣に座っている蓮池さんから小声で訊いてくるが、どう答えていいか分からなかった。すると恵二郎が自己紹介をはじめる。

「はじめまして~、大須のコスプレ喫茶[レディ・クイーン]から来ましたメグミックスですー、本当は二次会からのサプライズ参加の予定だったんだけど待ち合わせ時間間違えちゃって、一次会から参加することになりましたー」

──よくもまあスラスラと嘘八百言えるもんだな、本当は勝手についてきただけのくせに。

「え、ということは班長のサプライズなんてすか」

北今くんが目を輝かせながら訊いてくるので、まあなとしか答えられなかった。と、同時に隣からおどろおどろしいオーラを感じてチラリと見る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

コンプレックス

悠生ゆう
恋愛
創作百合。 新入社員・野崎満月23歳の指導担当となった先輩は、無口で不愛想な矢沢陽20歳だった。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...