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変動的不等辺三角形はじまる メグミ編

その3

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 少なくとも一緒に食べることには観念した僕は、部屋に入るとカバンからお弁当を取り出してひろげる。
 蓮池さんもお弁当を机に置くと、給湯室に行きお茶を淹れる準備をする。

 先ほどから彼女を小悪魔と表現しているが、けっして意地悪な性格ではない。むしろかいがいしく世話を焼くようないいコだ。そう思ってしまうのは悪戯っぽく笑う癖のせいだろうか。

 軽いウェーブがかかる天パでショートヘアのせいでもあるし、南国を思わせる顔立ちのせいかもしれないし、少し浅黒い肌のせいかもしれないし、美恵より背が低くて可愛らしい振る舞いをするせいかもしれない。

「なに見てるんですか、美恵みたいにナイスバディじゃないからじろじろ見ないでください」

 性格も謙虚だと思う。

「まあそんな美恵の身体を楽しんでいるんでしょうけど、昨夜とか」

 こういうところだろうな思ってしまうのは。小悪魔というよりはオヤジという感じだが。

 淹れてもらったお茶を受け取ると、お互いお弁当のフタを開けていただきますをする。

「ふーん、鶏の照り焼きにブロッコリーの素揚げ、プチトマトにニンジンのグラッセ、それにおにぎり三つか。相変わらず美味そうよね」

「蓮池さんは毎回お弁当の感想を言うけど、君のだって美味しそうじゃないか」

 女性らしい小ぶりの容れ物に、ふりかけをトッピングしたご飯にミートボールと茹でたブロッコリーとフィッシュフライが彩り良く入っていた。

「私のは美恵のを参考にしているからですよ、あのコやりくり上手でしょ」

「そうだな」

 学生時代ひとり暮らし、正確には一時期恵二郎とふたり暮らししていたから多少の料理はできるし知っている。おそらく具材から察するに昨夜のシチューの残りで作ったのだろう。

「お兄さんとふたり暮らししていた時、貧乏──じゃなかった、経済的に苦労してたからやりくりする家事が身についたんですって」

「そうなんだ。じゃあ裁縫もその頃身につけたのかな」

「どうでしょうね。お針子さんまだ続いてますか」

「ああ、おかげでひと部屋占領されているよ」

「へえ、今回は続いてますね。昔は仕事を転々としてたのに」

「そうなの」

「お兄さんに迷惑かけたくないから高校卒業してすぐに就職したんですけど、すぐ辞めちゃって、仕事をコロコロ変えてたんですよ」

 当たり前といえば当たり前なんだが、この場にいない共通の知り合いというのは話題になりやすい。
 美恵のトリセツはこういう時に教えてもらえる、だから僕たちはいい具合に暮らしていけてるのだろう。
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