5 / 69
長いプロローグとなるイブの夜
その2
しおりを挟む
その後、班だけの新年会や小さな打ち上げ、花見などに蓮池さんは美恵を連れて来るようになり、班のみんなも好印象を持って受け入れてくれた。
そして僕とも蓮池さんと三人で会い、食事や飲みに行ったりもした。
関係が進んだのは今年のゴールデンウィーク、大型連休の初日だったと思う。
休みに入る前に得意先の接待でかなり遅くまで飲んで、くたくたになって帰宅して眠り込んだ翌日、班のみんなとバーベキューに行く約束を忘れて寝坊してしまったのだ。
「班長、班長、居ないんですか」
ドアを叩く音と呼び鈴で目を覚まし、痛む頭をおさえながら開けると、そこには蓮池さんと美恵がいた。
「きゃ、なんて格好をしるんですか」
スーツを脱いだまでは覚えていたけど、どうやらそのまま寝てしまったらしく、ずり落ちかけた下着姿を二人にさらけ出しているのに気づくまでだいぶかかった。
「あ、ああ、ごめん。それでなんで二人とも……」
「忘れちゃったんですか、今日は班のみんなと……」
言われて思い出した。あわてて普段着に着替えて財布とスマホを持って一緒に出ていく。
すでに他の三人が準備をしているバーベキュー場へ蓮池さんの運転で向かう。
「大丈夫ですか」
後部座席で美恵と二人で座り、眠気と戦いながら大丈夫とこたえる。だがしかしやはり眠気には勝てず、いつの間にか美恵に寄りかかって眠ってしまっていた。
班のみんなと合流して遅ればせながらパーティーを開始したのだが、やはり眠かったので木陰で休ませてもらう。その間、美恵が気を配ってみんなに甲斐甲斐しく世話をしている姿をまどろみながら見ていた。
お開きとなり、また蓮池さんに送ってもらう帰り道、隣に座っている美恵から今度掃除にいっていいですかと耳元に囁かれて、ありがたいなと応えたのは覚えている。なぜなら翌日に掃除道具一式を持って美恵がやってきたからだ。
正直困惑したが、帰ってもらうのもなんだから当たり障りない所を掃除してもらい、御礼として食事をご馳走して帰ってもらったが、翌日もやって来た。
「また来たの」
「ごめんなさい、どうしても気になって」
そんなに汚かったかなと思いながらもまた掃除してもらい、ご馳走する。そしてまた翌日も、そのまた翌日もやってきた。
「なんかもうさ、掃除道具置いてったら」
毎日一緒に食事しながら話しているうちにそう言ってしまい、掃除道具だけでなく美恵本人も置くようになって今に至るわけだ。
「なんか最後の方端折ってない」
恵二郎が不満そうに言うが、デザートもコーヒーも済んだあとだ。はやく帰って美恵の誤解を解きたい。
「はやく帰りたいからな、それじゃ先に行くぞ」
席を立った僕に、恵二郎があと一つだけ教えてと訊いてくる。
「結婚するつもりなの」
そして僕とも蓮池さんと三人で会い、食事や飲みに行ったりもした。
関係が進んだのは今年のゴールデンウィーク、大型連休の初日だったと思う。
休みに入る前に得意先の接待でかなり遅くまで飲んで、くたくたになって帰宅して眠り込んだ翌日、班のみんなとバーベキューに行く約束を忘れて寝坊してしまったのだ。
「班長、班長、居ないんですか」
ドアを叩く音と呼び鈴で目を覚まし、痛む頭をおさえながら開けると、そこには蓮池さんと美恵がいた。
「きゃ、なんて格好をしるんですか」
スーツを脱いだまでは覚えていたけど、どうやらそのまま寝てしまったらしく、ずり落ちかけた下着姿を二人にさらけ出しているのに気づくまでだいぶかかった。
「あ、ああ、ごめん。それでなんで二人とも……」
「忘れちゃったんですか、今日は班のみんなと……」
言われて思い出した。あわてて普段着に着替えて財布とスマホを持って一緒に出ていく。
すでに他の三人が準備をしているバーベキュー場へ蓮池さんの運転で向かう。
「大丈夫ですか」
後部座席で美恵と二人で座り、眠気と戦いながら大丈夫とこたえる。だがしかしやはり眠気には勝てず、いつの間にか美恵に寄りかかって眠ってしまっていた。
班のみんなと合流して遅ればせながらパーティーを開始したのだが、やはり眠かったので木陰で休ませてもらう。その間、美恵が気を配ってみんなに甲斐甲斐しく世話をしている姿をまどろみながら見ていた。
お開きとなり、また蓮池さんに送ってもらう帰り道、隣に座っている美恵から今度掃除にいっていいですかと耳元に囁かれて、ありがたいなと応えたのは覚えている。なぜなら翌日に掃除道具一式を持って美恵がやってきたからだ。
正直困惑したが、帰ってもらうのもなんだから当たり障りない所を掃除してもらい、御礼として食事をご馳走して帰ってもらったが、翌日もやって来た。
「また来たの」
「ごめんなさい、どうしても気になって」
そんなに汚かったかなと思いながらもまた掃除してもらい、ご馳走する。そしてまた翌日も、そのまた翌日もやってきた。
「なんかもうさ、掃除道具置いてったら」
毎日一緒に食事しながら話しているうちにそう言ってしまい、掃除道具だけでなく美恵本人も置くようになって今に至るわけだ。
「なんか最後の方端折ってない」
恵二郎が不満そうに言うが、デザートもコーヒーも済んだあとだ。はやく帰って美恵の誤解を解きたい。
「はやく帰りたいからな、それじゃ先に行くぞ」
席を立った僕に、恵二郎があと一つだけ教えてと訊いてくる。
「結婚するつもりなの」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!
杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」
ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。
シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。
ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。
シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。
ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。
ブランディーヌは敗けを認めるしかない。
だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。
「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」
正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。
これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。
だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。
だから彼女はコリンヌに問うた。
「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね?
では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」
そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺!
◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。
◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結!
アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。
小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。
◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破!
アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
[完結]思い出せませんので
シマ
恋愛
「早急にサインして返却する事」
父親から届いた手紙には婚約解消の書類と共に、その一言だけが書かれていた。
同じ学園で学び一年後には卒業早々、入籍し式を挙げるはずだったのに。急になぜ?訳が分からない。
直接会って訳を聞かねば
注)女性が怪我してます。苦手な方は回避でお願いします。
男性視点
四話完結済み。毎日、一話更新
お兄ちゃんが私にぐいぐいエッチな事を迫って来て困るんですけど!?
さいとう みさき
恋愛
私は琴吹(ことぶき)、高校生一年生。
私には再婚して血の繋がらない 二つ年上の兄がいる。
見た目は、まあ正直、好みなんだけど……
「好きな人が出来た! すまんが琴吹、練習台になってくれ!!」
そう言ってお兄ちゃんは私に協力を要請するのだけど、何処で仕入れた知識だかエッチな事ばかりしてこようとする。
「お兄ちゃんのばかぁっ! 女の子にいきなりそんな事しちゃダメだってばッ!!」
はぁ、見た目は好みなのにこのバカ兄は目的の為に偏った知識で女の子に接して来ようとする。
こんなんじゃ絶対にフラれる!
仕方ない、この私がお兄ちゃんを教育してやろーじゃないの!
実はお兄ちゃん好きな義妹が奮闘する物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる