佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

ハジメの予感 (完)

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 葵は続けて言う。

「本来なら自分が夏生くんのヒーローになる予定だった。それで惚れ直してもらうつもりだった。手段はともかくとしてね。だけどその役はハジメに取られたのよ、だからあのときカーチェイスで執拗にジャマしたんだと思う」

「いやいやいや、こっちは仕事でやったんでそんな理由で恨まれても──大体やり方が間違ってるわよ、おかしいよ」

「たぶんだけど──幼児性が残っているのかもね。児童心理学は聞きかじり程度だから断言できないけど、思い通りにいかなかったら当たり散らすところなんかそうじゃない」

「ガキってこと」

「ただのガキでは片付けられないわ。リキヤくん達の忠誠心からすると、知力と魅力があり面倒見がよい人柄、それでいて非常識な行動力をあわせ持つ……」

 ひょっとしたら将来、裏社会でひとかどの人物になるかも知れない、葵はそう思ったがその言葉は飲み込んだ。あくまでも想像だからだ。

「どしたの」

途中で言うのをやめた葵にハジメは不思議がる。

「……だからわざわざハジメに会いに来たのか」

「あたしに?」

「夏生くんが、タクヤくんをフッたって言ったの思い出したの。ハジメは恋敵でもあったのよ。もし夏生くんがまだ日本にいたらまだまだ追いかけ回してたかもね、よくもオレの好きなヒト奪ったなー、って」

「そんな子供みたいな──ガキだったわね。それじゃ手を出さないってのは、やっぱりウソなんだ」

「ううん、これを見て」

 葵はスマホを見せる。そこにはカチューシャを被り幸せいっぱいの笑顔ではしゃいでいる夏生が写っていた。場所はどうやらあの夢の国らしい。

「ジェイクのインスタ。夏生くんの画像ばかりよ」

葵からスマホを受け取り、サムネを見る。確かにどれも笑顔ばかりだ。

「ここを見て」

英語ばかりの中、日本語のコメントが一つあった。

[あたしは今、しあわせです。日本のおねーさま達、ありがとう]

「これって……あたし達のことかな」

「たぶんね。おそらくこれを見てタクヤくんはハジメを許した、けど自分の予定をジャマのは面白くない、だから嫌がらせみたいなことを言いに来た、そんなとこかな。
 オレのエモノってハジメを脅すような言い方だけど、裏を返せば他の人に手出しさせないってことだからね」

「面倒くさいヤツねぇ、ややこしいのはキライなのよ」

スマホを返しながらもハジメの脳裏には直感がよぎる。

──いつかタクヤはあたしの前に現れる──

と。



ーー 了 ーー
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みんなの感想(1件)

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2021.08.02 藤井ことなり

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m(;∇;)m

解除

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