上 下
321 / 322
護衛対象はキケンな男の娘 短編

理論と直感

しおりを挟む
「──リキヤくんは無戸籍、タクヤくんもそうかもしれない、カナさんは父親からの性暴力を受けてた、他のコも家庭に問題ありの場合が多いわね」

「うん……。末端の連中はグレているだけなのが多いけど、幹部とか側近クラスになると……」

 ハジメの言葉を聞いたあと、葵は考えをまとめようとうろうろして、突然止まるとスマホを取り出してツイツイと何かを探す。そしてそれが見つかったようで、目を閉じて仰ぎながら呟く。

「……うん、……けど……しかし……ならば……ハジメ」

突然名前を呼ばれて驚く。

「ハジメからみてタクヤくんはいい人? 悪い人?」

「悪い人に決ってるじゃん」

「なら言い方を変えるわ。タクヤくんはいい人じゃない? 悪い人じゃない?」

「……」

「考えないで。直感でこたえて」

「あのね……怒るかもしれないけど……悪い人じゃないって感じるの……」

 詐欺、恐喝、殺人未遂、誘拐未遂、これだけやれば十分[悪いヤツ]なのに、ハジメはそう感じてしまったのだった。

「──怒らないわ。なぜなら私も同じ推論に達したから。
 この考えに至ったとき自信が持てなかったわ。でもハジメの直感と同じだったから、はっきりわかったの」

「あたしの直感なんてアテにならないわよ」

「そのまんまならね。例えて言うなら山の中で迷ったとするでしょ? 私は周囲の情報を分析して助かる道を探すんだけど、ハジメは直感で方向を当てるのよ。
 今回の件だって、セントレアに向かうように言ったでしょ? 手段としては足りないけど解決の方向としては当ってたじゃない。私はハジメの直感を信じてるの」

「アテになんないと思うけど。で、結論はなに?」

「あのね、タクヤくんは夏生くんを救おうとしたんじゃないかな」

「なんでそうなるのよ」

「私達はあとから気づいたけど、タクヤくんは夏生くんがDVを受けてたの知ってたと思うの。カナさん経由でね。
で、家庭に問題のあるコ達を救いたいというのが彼の行動原理だと思うの」

「そんなことないでしょ。それじゃ命を狙う意味がない」

「仮定として、ハジメがいなかった場合よ。殺人予告があった、外から殴り込みがあり本当だと思わせる、今度は身内に襲われて、警察もしくは隠れ家に行くことになる、そして外で誘拐となる。この場合、警察や組の連中は犯人は誰だと考えるの」

「そりゃあ、殺人請負サイトの連中だよね。でも、それが意味はあるの?」

「もちろん。それがあるから警察は江分利家に家宅捜索できるんじゃない。そして多分、夏生くんにDVの証言をさせるか証拠をネットに流して公の場で組やお父さん、組長を非難の的にして救おうとしたんじゃないかな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない

めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」 村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。 戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。 穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。 夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』

あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾! もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります! ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。 稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。 もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。 今作の主人公は「夏子」? 淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。 ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる! 古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。 もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦! アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください! では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

30歳、魔法使いになりました。

本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に酔って帰った鞍馬花凛。 『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出した花凛が魔法を唱えると……。 そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。 そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、本家当主から思わぬ事実を知らされる……。 ゆっくり更新です。

皇帝の寵妃は謎解きよりも料理がしたい〜小料理屋を営んでいたら妃に命じられて溺愛されています〜

空岡
キャラ文芸
後宮×契約結婚×溺愛×料理×ミステリー 町の外れには、絶品のカリーを出す小料理屋がある。 小料理屋を営む月花は、世界各国を回って料理を学び、さらに絶対味覚がある。しかも、月花の味覚は無味無臭の毒すらわかるという特別なものだった。 月花はひょんなことから皇帝に出会い、それを理由に美人の位をさずけられる。 後宮にあがった月花だが、 「なに、そう構えるな。形だけの皇后だ。ソナタが毒の謎を解いた暁には、廃妃にして、そっと逃がす」 皇帝はどうやら、皇帝の生誕の宴で起きた、毒の事件を月花に解き明かして欲しいらしく―― 飾りの妃からやがて皇后へ。しかし、飾りのはずが、どうも皇帝は月花を溺愛しているようで――? これは、月花と皇帝の、食をめぐる謎解きの物語だ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...