316 / 322
護衛対象はキケンな男の娘 短編
ゲームオーバー
しおりを挟む
──葵による江分利夏生という少年のプレゼンテーションは成功をおさめた。
ヤングマフィアやジャパニーズマフィアが欲しがるほどの才能というのなら、バックアップしてみようと言ってくれたのだ。
「パパ、その役目はボクにやらせてくれないか」
「いいのかジェイク」
「もちろん。ちょうど帰国するところだし、ナツキのバックアップはボクがするよ」
トーマスの息子はジェイクというらしい。二十代半ばくらいで刈り上げた金髪と爽やかな笑顔が印象的な好青年だ。
その後、ケイにより加工編集された動画がタクマの殺人請負サイトに投稿されると、ゲームオーバーのためこの依頼は無効になったと表示され、すぐさまサイトは閉鎖された。
盗聴アプリを削除したあと夏生は矢島に連絡、予定通り出発するので用意をしておくように言う。
葵は父と学校に連絡して、夏生の無事を伝える。
そしてハジメは……、今日一日で九人を相手した疲労とずっと食事をしていない空腹が一気に襲ってきて、ひと通りの報告のあと眠りこけてしまったのだった。
※ ※ ※ ※ ※
三人が一泊した翌朝の土曜日、御器所と矢島が夏生の荷物を領事館に持ってきて、中身を確認をすると全員(夏生、ハジメ、葵、御器所、矢島、ジェイク)でセントレアへと向かう。
外交官ナンバーのセダンにジェイク、夏生、葵が乗り、後続の覆面パトカーにはハジメと御器所がのる。
「タクヤはどうなりましたか」
「まだ逃走中だ。スープラを捕まえたときにはもう乗ってなかった、途中で降りて逃げたらしい」
「手下を盾にするなんて卑怯なヤツ」
「──それがどうも、そうでもないらしい」
「どういう意味です」
「タクヤが手下を盾にして逃げたんじゃなくて、手下が盾になって逃したみたいなんだ。捕まった連中は口を揃えて、自分のことよりタクヤのことを心配していると報告があった」
「そんなバカな」
ハジメからすれば、夏生を騙し脅し命を狙い、カナやリキヤをはじめとする手下を見捨てて逃げた卑怯者としかうつらない。そんなヤツを守ろうとするのが信じられなかった。
「ときどきいるんだよ、ヒトを魅了する才能っていうのかな、タクヤもそういうヤツかもしれないな」
何事もなくセントレアに着き、搭乗手続きを済ませ、搭乗待合室でお別れの挨拶をする。
「色々あったけど、無事に行けそうね。立派な数学者になってね」
「おねーさま気が早い、まだ交換留学に行くだけだよ」
「そのまま移住するんじゃなかったの」
「うん、そのつもりだったけど……なんかね、逃げちゃいけないと思ったの。おねーさまの逃げずに戦う姿を見たせいかな? それと大人って悪いヒトばかりじゃないって、葵先生たちを見てそうも思ったから」
「そう。それじゃサヨナラじゃなくて、行ってらっしゃい、と言わせてもらうわ」
「うん、行ってきます。帰ったらまた会ってくれますか」
「ふつーに会いに来てくれたらね」
ヤングマフィアやジャパニーズマフィアが欲しがるほどの才能というのなら、バックアップしてみようと言ってくれたのだ。
「パパ、その役目はボクにやらせてくれないか」
「いいのかジェイク」
「もちろん。ちょうど帰国するところだし、ナツキのバックアップはボクがするよ」
トーマスの息子はジェイクというらしい。二十代半ばくらいで刈り上げた金髪と爽やかな笑顔が印象的な好青年だ。
その後、ケイにより加工編集された動画がタクマの殺人請負サイトに投稿されると、ゲームオーバーのためこの依頼は無効になったと表示され、すぐさまサイトは閉鎖された。
盗聴アプリを削除したあと夏生は矢島に連絡、予定通り出発するので用意をしておくように言う。
葵は父と学校に連絡して、夏生の無事を伝える。
そしてハジメは……、今日一日で九人を相手した疲労とずっと食事をしていない空腹が一気に襲ってきて、ひと通りの報告のあと眠りこけてしまったのだった。
※ ※ ※ ※ ※
三人が一泊した翌朝の土曜日、御器所と矢島が夏生の荷物を領事館に持ってきて、中身を確認をすると全員(夏生、ハジメ、葵、御器所、矢島、ジェイク)でセントレアへと向かう。
外交官ナンバーのセダンにジェイク、夏生、葵が乗り、後続の覆面パトカーにはハジメと御器所がのる。
「タクヤはどうなりましたか」
「まだ逃走中だ。スープラを捕まえたときにはもう乗ってなかった、途中で降りて逃げたらしい」
「手下を盾にするなんて卑怯なヤツ」
「──それがどうも、そうでもないらしい」
「どういう意味です」
「タクヤが手下を盾にして逃げたんじゃなくて、手下が盾になって逃したみたいなんだ。捕まった連中は口を揃えて、自分のことよりタクヤのことを心配していると報告があった」
「そんなバカな」
ハジメからすれば、夏生を騙し脅し命を狙い、カナやリキヤをはじめとする手下を見捨てて逃げた卑怯者としかうつらない。そんなヤツを守ろうとするのが信じられなかった。
「ときどきいるんだよ、ヒトを魅了する才能っていうのかな、タクヤもそういうヤツかもしれないな」
何事もなくセントレアに着き、搭乗手続きを済ませ、搭乗待合室でお別れの挨拶をする。
「色々あったけど、無事に行けそうね。立派な数学者になってね」
「おねーさま気が早い、まだ交換留学に行くだけだよ」
「そのまま移住するんじゃなかったの」
「うん、そのつもりだったけど……なんかね、逃げちゃいけないと思ったの。おねーさまの逃げずに戦う姿を見たせいかな? それと大人って悪いヒトばかりじゃないって、葵先生たちを見てそうも思ったから」
「そう。それじゃサヨナラじゃなくて、行ってらっしゃい、と言わせてもらうわ」
「うん、行ってきます。帰ったらまた会ってくれますか」
「ふつーに会いに来てくれたらね」
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
黒龍の神嫁は溺愛から逃げられない
めがねあざらし
BL
「神嫁は……お前です」
村の神嫁選びで神託が告げたのは、美しい娘ではなく青年・長(なが)だった。
戸惑いながらも黒龍の神・橡(つるばみ)に嫁ぐことになった長は、神域で不思議な日々を過ごしていく。
穏やかな橡との生活に次第に心を許し始める長だったが、ある日を境に彼の姿が消えてしまう――。
夢の中で響く声と、失われた記憶が導く、神と人の恋の物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
『イケメンイスラエル大使館員と古代ユダヤの「アーク探し」の5日間の某国特殊部隊相手の大激戦!なっちゃん恋愛小説シリーズ第1弾!』
あらお☆ひろ
キャラ文芸
「なつ&陽菜コンビ」にニコニコ商店街・ニコニコプロレスのメンバーが再集結の第1弾!
もちろん、「なっちゃん」の恋愛小説シリーズ第1弾でもあります!
ニコニコ商店街・ニコニコポロレスのメンバーが再集結。
稀世・三郎夫婦に3歳になったひまわりに直とまりあ。
もちろん夏子&陽菜のコンビも健在。
今作の主人公は「夏子」?
淡路島イザナギ神社で知り合ったイケメン大使館員の「MK」も加わり10人の旅が始まる。
ホテルの庭で偶然拾った二つの「古代ユダヤ支族の紋章の入った指輪」をきっかけに、古来ユダヤの巫女と化した夏子は「部屋荒らし」、「ひったくり」そして「追跡」と謎の外人に追われる!
古代ユダヤの支族が日本に持ち込んだとされる「ソロモンの秘宝」と「アーク(聖櫃)」に入れられた「三種の神器」の隠し場所を夏子のお告げと客観的歴史事実を基に淡路、徳島、京都、長野、能登、伊勢とアークの追跡が始まる。
もちろん最後はお決まりの「ドンパチ」の格闘戦!
アークと夏子とMKの恋の行方をお時間のある人はゆるーく一緒に見守ってあげてください!
では、よろひこー (⋈◍>◡<◍)。✧♡!
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ハピネスカット-葵-
えんびあゆ
キャラ文芸
美容室「ハピネスカット」を舞台に、人々を幸せにするためのカットを得意とする美容師・藤井葵が、訪れるお客様の髪を切りながら心に寄り添い、悩みを解消し新しい一歩を踏み出す手助けをしていく物語。
お客様の個性を大切にしたカットは単なる外見の変化にとどまらず、心の内側にも変化をもたらします。
人生の分岐点に立つ若者、再出発を誓う大人、悩める親子...多様な人々の物語が、葵の手を通じてつながっていく群像劇。
時に笑い、たまに泣いて、稀に怒ったり。
髪を切るその瞬間に、人が持つ新しい自分への期待や勇気を紡ぐ心温まるストーリー。
―――新しい髪型、新しい物語。葵が紡ぐ、幸せのカットはまだまだ続く。
30歳、魔法使いになりました。
本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に酔って帰った鞍馬花凛。
『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出した花凛が魔法を唱えると……。
そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。
そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、本家当主から思わぬ事実を知らされる……。
ゆっくり更新です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる