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護衛対象はキケンな男の娘 短編

優先すべきは

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 鎧武実行チームのリーダーは巨躯の持ち主で、服装はやさぐれているが、顔つきは真摯というかまるで武士を連想させる。
 素肌の見える腕も腹も見事な筋肉だ。とてもグレている者が得られる体型ではなかった。

 ハジメはリーダーの構えから、自分と同じくファイタータイプでかなりの実力者と読み取った。

「どう見る、千秋」

 イヤホンマイクから質問が届く。葵のスマホカメラでずっと戦いを見ているケイからだった。

「正直言って──私と二人がかりで、やっといい勝負になるくらいだと思う」

「そんなに強いの」

「体格がハジメよりふたまわり大きいし、筋肉も見せかけのじゃなくて、ちゃんと鍛錬した者にしかつかないヤツだし、構えからも手練れだと分かるわ」

「え、じゃあヤバいじゃん。手助けしないと」

「うん、そうだけど……」

 千秋が口ごもったタイミングでエレベーターが到着し、御器所をはじめ数名の警察官がやってきた。

「全員動くな。暴行と誘拐未遂で逮捕する、このビルは包囲済みだ無駄な抵抗はするな」

 ひと通り言ったあと、御器所は現状を把握するのに混乱した。
 葵と夏生の側に覆面をしている女が立ち、鎧武らしき男たちが二人倒されている。そしてハジメが残ったひとりと対峙しているのだ。

「葵先生、いったいどうなっているんです」

「え~っとですね……」

 葵は手短に、ハジメと戦いために捕まるのを覚悟で待ち構えていた事を説明した。

「じゃあ倒れている二人は小山が。すげぇなアマゾネス」

 ひとりは千秋が倒したのだが、あとから面倒くさいことになりたくないので、このまま勘違いしてもらおうと葵と千秋は黙ることにした。

「で、こちらのマスクの方は?」

「あー、私的に雇ったガードマンです」

「どーもー、紅警備保障のユカと申しますー。このマスクは仕事着ですのでお気になさらずー」

「はあ、どうも……」

愛想よく挨拶する千秋に、胡散臭そうな目で御器所は見る。

「御器所部長、制圧準備整いました」

警察官からの報告に、御器所は意識をハジメ達に向ける。

「よし、小山、加勢するぞ」

その言葉にハジメは思わぬ言葉を返す。

「手出ししないでください、このコは本職が相手します」

「はぁ?! なに言ってんだ、逮捕が先決だろうが。かまわん、取り押さえろ」

御器所の号令で三人の警察官がリーダーに向かうが、そのあいだにハジメは立つとひとりの胸ぐらを掴み、背負投げで他の二人にぶつける。

「なにしてんだぁ小山ー」

「手出し無用!! と言ってるでしょうが!! あたしと戦いために逮捕される覚悟でここにいるんです、それに応えてやらなきゃこのコ達に悪いんですよ!!」
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