佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

ゴイvsユカ

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「あのさ、そんな命令してどうすんのよ。もうこのビルは警察に包囲されてるのよ、下の連中も捕まって逃げ場は無いのよ」

「さあな。あとはコイツ等と話してくれ、じゃあな」

「ち、ちょっと」

「もういいよ千秋。簡単な話じゃない、このコ達を倒せば終わりなんでしょ」

「そういうこったよハジメちゃん。俺ひとりでやるつもりだったが、コイツ等もつき合うってんでな。相手してもらうぞ」

「ややこしいのはキライなのよ。さっさとやりましょうか」

 ハジメはジャケットを脱いで千秋に渡すと構えをとる。
 受け取ったジャケットを葵に渡して千秋も構える。

「何してんのよ千秋」

「ユカだって言ってるでしょ、アマゾネス。ひとりもらうわよ」

「あたしを御指名なのよ、引っ込んでなさいよ」

「今日、戦いっぱなしなんでしょ。拳、傷めてるんじゃない」

「大した事無いわよ」

「やっぱり。葵、ハンカチ持ってたらハジメに渡してバンテージ代わりにしてあげて」

「だから」

ハジメの言葉を無視して千秋はリーダーに話しかける。

「リーダーさん。ハジメにこだわってるのは女に兵隊を倒されたことなんだよね? だったら私も対象にならない? 下で五人倒してきたわよ」

「お前か。タクヤさんから、もうひとり変な女がいるって言ってたのは」

「紅のユカよ。今回だけね」

「いいだろう。おい、相手してやれ」

 実行チームのひとりが隊服を脱ぎ、ノースリーブ姿になる。肩から腕にかけての筋肉は隆起して迫力があった。
 前に出て構えをとる。

「デトロイトスタイル、ボクシングかな」

 そう言いながら千秋も前に出て半身態勢で構え油断なく残った二人にも気を配る。
 しかたなくハジメは下がるが、同じく油断しない。ノリでタイマン勝負にはなっているが、ルールに則る必要はないからだ。ハジメ達はそれをよく知っている。

「おねーさま、あたしのハンカチを使って」

夏生がポケットからファンシーな柄のハンカチを取り出すと手渡す。

「ありがと。じゃあ手に巻いてしばってくれるかな」

 右手に夏生のハンカチ、左手に葵のハンカチをつけてもらい、ハジメは最後の戦闘態勢を整える。



「いけっ!!」

リーダーの合図で兵隊が千秋に襲いかかる。一気に間合いに踏み込んで左フックと右ストレートのワン・ツーをくり出す、千秋はそれらを躱すが反撃のタイミングをもらえなかった。

「なるほど、下の連中とは段違いね」

千秋の言葉にリーダーが答える。

「ウチのチームは定期的に試合をしてランキングを決めてる。この二人は二位と五位だ」

「私が相手しているのはどっち?」

「……五位だ」

リーダーに聞いたつもりが、目の前の相手に答えられる。

「ゴイちゃんね」

今度は千秋から前に出る。ゴイは迎え撃とうとするが、間合い手前で千秋は軌道を変えフェイントをかける、ゴイは態勢を崩さずすぐに急所をガード、その上を千秋の蹴りがヒットする。そしてすぐに間合いをとる。

攻めあぐねてる千秋にハジメが野次をとばす。

「代わろうかー、千秋ー」

「ユカだってーの。ったく物覚えの悪いヤツ」

 しかたなく千秋は握ってた拳をひらいてぶらぶらさせる。そして構えを解いて無造作にゴイに近づく。
 ゴイは間合いに入ったところで右ミドルキックを放つが、それを千秋は柔らかく受け止め、そのまま上に持ち上げる。
 さすがにこらえきれないゴイは倒れる、すかさず千秋は左脚の上に乗り、右足のアキレス腱を極める。

「うっ、ぎゃあぁあぁ」

たまらずゴイは逃げ出そうとして暴れる。
千秋はわざと極め技を放して逃がすと、ゴイは起き上がるためについ背中を見せてしまう。すかさず千秋は馬乗りになり首に絞め技をかけて、ゴイを失神させた。

「なかなか強かったわよ」
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