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護衛対象はキケンな男の娘 短編
タクヤの目的?!
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ハジメの無線に、所轄の応援が到着してビル周辺に非常線を張り終えたと入電があり、鎧武のハイエースと取り押さえたメンバーは全員逮捕したと連絡があった。
「これでもう万一拉致られても安心ね」
「ていうかさー、おかしくない」
千秋の言葉にケイがこたえる。
「何がよ」
「その前にイヤホンマイク、葵に渡して。葵はそれ付けてグループ通話にしといてね」
千秋はポケットから取り出して葵に渡して、それを付けるのを見てから、ケイに問い返す。
「で、何がおかしいの」
「ナッキーの殺害目的だったのに、いつの間にか拉致目的になってない? それとあれだけネットで情報流れているのに、襲ってくるの鎧武の連中ばかりじゃない」
言われてみればそうだった。たしかにおかしい。
「それと先回りされたこともそうだけど、行動もありえないのよね。闇金だの詐欺サイトをやるような連中が、警察やヤクザ相手に喧嘩売るような損する真似を平気でやるなんておかし過ぎるよね」
ケイの言葉に全員が確かにそうだと思ったが、夏生の反応だけがおかしかった。それに気づいたハジメがなにか心当たりあるのか訊ねる。
「あのね、その……もしかしたらなんだけど……」
「なに?」
「タクヤをフッた腹いせかもしれないの……」
「はい?」
夏生の言葉がハジメの脳に浸透するのに時間がかかったが、ようやく言ってる意味を受け入れると
「え、タクヤって女のコなの」
「ううん、男だよ」
「──夏生くん男のコだよね──ああ女のコと勘違いしてるのか」
「ううん、男だって知ってるよ」
「ええっとぉ」
あくまで受け入れないようにしているハジメにケイがとどめを刺す。
「BLね。ナッキーを手に入れるためにすべてを捨ててもかまわない、そういうことね。それならこのなりふり構わない行動も納得だわ、尊いわー」
思考の逃げ場が無くなったハジメは慌てて口を押さえる。また吐きそうになったのだ。それを見て千秋が呆れて言う。
「あんたまだトラウマなの? いい加減忘れなさいよ」
「うっさい、ほっといてよ」
「男なんていくらでもいるじゃない、初恋の人を男に寝盗られたなんてネタにして笑い話にしちゃいなよ。そんなんだからまだ処……」
「黙れフケセン!!」
「千秋、いい加減にしなさい。言い過ぎよ」
「──悪かったわよ」
葵にたしなめられて千秋はムスッとして黙り込む。
会話からコトを察した夏生は、自分がしてきたことを振り返り、ハジメがどんな思いをしていたかを理解する。
「お、おねーさま、じゃああたしのコト、嫌だったの?」
「ううん、そんなコトないわよ。気にしないで」
「やっぱり……。ゴメンなさい、迷惑かけてゴメンなさい」
「気にしなくていいわよ。──正直言うと、軟弱な男は苦手よ。でも夏生くんのおかげで見方が変わったの、だから感謝してるくらいよ」
「でも……」
「それに腹立つけど千秋の言うとおり、いつまでも気にしてられないからね。夏生くんはキッカケをくれたの、ありがとうね」
そう言うと、ハジメの方から夏生を抱きしめる。
義理でも嘘偽りでもなく、本心でやっている自然な行為だった。
「これでもう万一拉致られても安心ね」
「ていうかさー、おかしくない」
千秋の言葉にケイがこたえる。
「何がよ」
「その前にイヤホンマイク、葵に渡して。葵はそれ付けてグループ通話にしといてね」
千秋はポケットから取り出して葵に渡して、それを付けるのを見てから、ケイに問い返す。
「で、何がおかしいの」
「ナッキーの殺害目的だったのに、いつの間にか拉致目的になってない? それとあれだけネットで情報流れているのに、襲ってくるの鎧武の連中ばかりじゃない」
言われてみればそうだった。たしかにおかしい。
「それと先回りされたこともそうだけど、行動もありえないのよね。闇金だの詐欺サイトをやるような連中が、警察やヤクザ相手に喧嘩売るような損する真似を平気でやるなんておかし過ぎるよね」
ケイの言葉に全員が確かにそうだと思ったが、夏生の反応だけがおかしかった。それに気づいたハジメがなにか心当たりあるのか訊ねる。
「あのね、その……もしかしたらなんだけど……」
「なに?」
「タクヤをフッた腹いせかもしれないの……」
「はい?」
夏生の言葉がハジメの脳に浸透するのに時間がかかったが、ようやく言ってる意味を受け入れると
「え、タクヤって女のコなの」
「ううん、男だよ」
「──夏生くん男のコだよね──ああ女のコと勘違いしてるのか」
「ううん、男だって知ってるよ」
「ええっとぉ」
あくまで受け入れないようにしているハジメにケイがとどめを刺す。
「BLね。ナッキーを手に入れるためにすべてを捨ててもかまわない、そういうことね。それならこのなりふり構わない行動も納得だわ、尊いわー」
思考の逃げ場が無くなったハジメは慌てて口を押さえる。また吐きそうになったのだ。それを見て千秋が呆れて言う。
「あんたまだトラウマなの? いい加減忘れなさいよ」
「うっさい、ほっといてよ」
「男なんていくらでもいるじゃない、初恋の人を男に寝盗られたなんてネタにして笑い話にしちゃいなよ。そんなんだからまだ処……」
「黙れフケセン!!」
「千秋、いい加減にしなさい。言い過ぎよ」
「──悪かったわよ」
葵にたしなめられて千秋はムスッとして黙り込む。
会話からコトを察した夏生は、自分がしてきたことを振り返り、ハジメがどんな思いをしていたかを理解する。
「お、おねーさま、じゃああたしのコト、嫌だったの?」
「ううん、そんなコトないわよ。気にしないで」
「やっぱり……。ゴメンなさい、迷惑かけてゴメンなさい」
「気にしなくていいわよ。──正直言うと、軟弱な男は苦手よ。でも夏生くんのおかげで見方が変わったの、だから感謝してるくらいよ」
「でも……」
「それに腹立つけど千秋の言うとおり、いつまでも気にしてられないからね。夏生くんはキッカケをくれたの、ありがとうね」
そう言うと、ハジメの方から夏生を抱きしめる。
義理でも嘘偽りでもなく、本心でやっている自然な行為だった。
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