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護衛対象はキケンな男の娘 短編

立案

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 領事館、大使館内はその国の領土扱いとなり、国内にある外国といってよい。つまりそこに入れば外国に行ったことになるというわけだ。

「たしかにそうだけど……そんなに簡単にやれるの」

ハジメの質問にケイが答える。

「まあ普通は無理よね。面識ない者がいきなり行って泊めて下さいなんて言っても門前払いが当たり前よ」

「じゃあどうするのよ」

「面識がある者が久しぶりに行って泊めて下さいとお願いすればいいのよ、ね、葵」

「え、私? いないわよ知り合いなんて」

「少しは父親の経歴に興味持ちなさい、一時期アメリカに研修に行ってたでしょうが」

「それくらいは覚えているけど……」

「上昇志向のあんたの父親が、有望株と縁を持つのは想像できるでしょ。その有望株は現在日本で領事館勤務です」

「ちょ、なんでケイがそんなこと知ってるのよ」

「たまたまよ。千秋がアメリカで五年くらい働いてたでしょ、その時に得た情報」

「ああ──千秋のついでに知った情報か。なるほどね。でも、うーん……」

「なによ、まだ父親と仲悪いの」

「それはさすがに解消してるけど、……さっきおねだりカード切っちゃったのよ、二枚目はちょっと使いづらくて……」

「何枚でも使えばいいじゃない」

「それ以外にも管轄以外の横槍になるのよ、今は夏生くんを県警本部に連れて行くという方針なの、それを領事館に保護させるというのは、かなりの強権行使になっちゃうしねぇ。ハジメなら意味解るでしょ」

 階級社会であると同時に縦割り社会でもある組織なのは、ハジメは痛いほど解るので頷いた。
 とはいえ、ケイのアイデアは自分の考えと同じだったので、そちらをやりたいという気持ちもある。

「誰かいないの? そういう方針変更できそうな人脈とか持ってないの?」

 ケイからの質問にハジメも葵も考えたが、思いつかなかった。が、天は自らを助くものを助けるという言葉通り、それに該当する人物がやってくる。ハジメのスマホに着信があった。

「もしもし、小山か? 今どの辺だ」

「先輩?! どうしたんです」

「坊ちゃんの護送についていくように課長命令があったんで合流する──ああ見つけた、そっちに行く」

 高速道路の路肩に停まったキャラバンを一台のパトカーが通り過ぎて十メートルほど前に路肩停車して、黒スーツでリーゼント頭の男が下りてくる。

 三人は顔を見合わせて、アレだと思いあった。

「グッドタイミングよ。これがドラマとか小説だったら御都合主義と思われるくらいのね」

 葵はそう言うと、御器所巡査部長というこの獲物をどう転がしてやろうかという顔をした。
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