佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

タクヤ逃走

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「すべて鎧武のタクヤによる犯行だというのか」

「まだ身元確認はしていませんが、そのように話していました」

「──今、報告があった。自称タクヤ他三名の身柄確保、車両もおさえた。もう大丈夫だ」

 車内に安堵の空気が流れる。これでもう狙われることないだろう、助かったと。

 パトカーの編隊も少しづつ本来の業務に戻っていき、封鎖された高速道路も片側車線が流れるようになってきた。それを見ながら白バイ警官と話し込んでる葵と、希望を取り戻した夏生にも視線をうつす。

──ああ、これだったな。あたしが警察官になったのは。この空気をまもるためだったな──

 ここしばらくの警察への不満はあったが、よく考えたらペアを組んだヤツのせいだけだったのに気がつく。助けてくれた同僚達に心の中で感謝し敬礼した。

その時である。

 クラクションが後方から聴こえたのでそちらに注意すると、パトカー隊のあたりが騒がしくなった。
 裸視3・0の視力がその騒ぎの理由を知らせる、さっきのスープラが戻ってきて、捕まったはずのタクヤが乗り込むところだった。

「な、なんで」

「どうしたのハジメ」

 急に大声を出したハジメに、葵が驚く。

「タクヤが逃げた、二人とも気をつけて!!」

 それだけ言うと、ハジメは夏生に覆いかぶさり、姿を隠す。
 最悪の事態、タクヤはクルマごと突っ込んできて夏生を殺そうとする、それを想定しての行動だった。

 しかしそれはなく、スープラは急スピードで通り過ぎていき、手薄になった検問を突破して東片端JCTを左に、小牧方面へと逃走していく。

「あのヤロウ!!」

 葵と話していた白バイ警官は、そう言い捨てるとバイクに乗りサイレンを鳴らしながら追いかけていく。ハジメも本部にかけなおして状況を課長に伝える。

「こちらでも確認した。タクヤ以外の三名が盾となり逃したらしい、緊急配備の命令は下っている」

「全員で逃げたのではなく、タクヤだけを逃したのですか」

「ああ。まるで示し合わせたように、突然暴れだしたそうだ。とりあえずお前たちは本部に来い、今度は護衛をつけてやるから」

 通話を切り、状況を二人に説明すると、ともに顔が険しくなる。

「──まあそれが最善かな。他に手はないし……」

そう考えているとき、葵のスマホに着信がある。ケイからだった。

「あ、葵? 入金確認したわよ。それで今は何処あたりなの」

「ちょっとまってケイ、状況が変わったの」

葵は手短に現状を話す。

「ふーん、それじゃあ本部に行くのは得策じゃないわねー」
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