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護衛対象はキケンな男の娘 短編

鎧武

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「ガイム……」

 オウム返しに呟くと、夏生がその言葉に反応した。

「夏生くん、知ってるの」

「う、ううん……」

「知ってるのね、鎧武とどういう関係なの」

「関係なんて無いよ、ただ知ってはいる……」

 さらに追求しようとしたが、通話中の御器所からの話が続く。

「もしもし、どうした小山、なんかあったのか」

「は、いえ、何でもありません」

「そうか。鎧武について何か知ってるか?」

「いえ、少年課に移ってまだ日が浅いもので」

「所轄の少年係によると、危険視しているチームらしい。どこにもケツをもたずにリーダーのタクヤというやつになってから、有望な若いヤツを引き入れて勢力拡大しているって話だ」

「武闘派ですか」

「いや、そこが変わっててな。得意分野が秀でた色んなヤツを集めているらしい、まるで独自の社会か国をつくるようにな」

──得意分野に秀でたヤツ──

思わず夏生を見返した。

 新洲崎JCTから環状線に入る。このまま進み明道町JCTから丸の内で降りる予定だ。
 互いの状況を伝えあったあと通話をきる。ハジメはすぐに夏生に問いただした。

「夏生くん、鎧武について知ってること教えて。どうやらこの件に関わっているらしいの」

「タクヤが?」

「知ってるのね、どういう関係なの」

「し、知らない、知らない」

 頭を抱えて振り回すその姿に、軽くキレたハジメは腕を掴んでその動きを止める。

「いい加減にしなさい、逃げ回っても何の解決にもならないのよ」

「知らないってば! アタシはおネエさんみたいに強くないモン、逆らっても叩かれて、いうこときくまで折檻されて、逃げても連れ戻されてまた叩かれて……、もう何したってムダなのよぉ」

 リストカットの痕の痛々しさが夏生の言葉を重くさせた。さすがにハジメは言葉につまる。葵に助けを求めるように見るが、その後ろ姿から何も言えないのが伝わった。

 名古屋の乗り口を通り過ぎる。ハイエースはまだついてくるが、何かをしてくる様子はないので左車線をずっと走ってる。このまま逃げ切れると確信した。

 だが予想は裏切られる。

 名古屋から黒塗りばかりの集団、セダンタイプが二台、スポーツカータイプが一台が乗り込んで、追いかけてきたのだ。
 先程から追ってくるハイエースと同じカラーリングだった。

スープラA70型三代目とレクサスESじゃん、なんなのあのアンバランス」

 葵が驚いたように言ってると、スープラが加速してあっという間に右車線から追い抜き、ウインカーも点けずに前に割り込む。
 慌てて右車線に移るが、今度は右車線に移る。どうやら走行妨害をされているらしい。
 ふたたび左車線に移るがやはり前を抑えられる、後ろから来たレクサスの一台が右車線を進み並走すると、助手席側の窓が下がった。
 
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