佐野千秋 エクセリオン社のジャンヌダルクと呼ばれた女

藤井ことなり

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護衛対象はキケンな男の娘 短編

格闘家の血筋

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 夏生を車内に避難させるべきか迷ったが、パトカーは走行不可能状態になるまで大破してるし大型ダンプは横っ腹に食い込んだままだ。ダンプ運転手は逃走、新たに来たワンボックスカーはパトカーの鼻面に止められている。

 そこから下りてきた男たちは六人、全員マスクをして格好はばらばらだが、カタギじゃない雰囲気をまとっていた。

「夏生くんはあたしとパトカーの間にいなさい。巡査、意識ある? あったら無線で状態報告、応援要請」

「り、了解」

──よかった、意識はあるみたいね。でもドアを潰されてるから出られそうもない、援護のあてはできないか──

 ハジメはジャケットを脱いで夏生に被せると、じっとしているように伝え、そのまま構えに入った。

下りてきた六人は、おのおのナイフやスタンガンを持って一斉にハジメ達に襲いかかった。

「破っ!」

 瞬時に見極めたハジメは、届く獲物の順番に合わせて手首にジャブを打ち込んで迎撃する。

 二人ほどナイフを落としたので、すぐにパトカーの下に蹴り入れると構えに戻る。男たちは予想外の反撃にあったのだろう、攻撃を躊躇して膠着状態となった。

 ハジメの家は代々武道もしくは格闘技をやる脳筋……いや格闘家系である。祖父母にいたっては、どっちがプロポーズするかでもめて、河原で決闘して決めたという逸話が残っているほどだ。

 物心ついたときから、技を教えられたり体力作りなどであやされたハジメは、ある意味格闘家の申し子ともいえる。

「一撃……必中……必殺」

 そう小声で呟く。集中するための言霊だ。そして武道の心得のある祖母からの教えを思い返す。
 ──なにかあったら逃げなさい、わざわざ戦う必要はないわ。でもどうしても戦わなければならない時は、最悪の事態を考えて最善の方法を取るのよ──、と。

 最悪の事態、それは無手(武器無し)で武装した集団を相手にすること。

 夏生を護るため逃げ出すことはできない。そして武装した六人に囲まれている。今がその時だと覚悟を決めたハジメは、警察官から格闘家、いや、武道家として意識を切り換えた。

「何をしている、早く拉致ってこい」

 ワンボックスカーの中から声がとんできた。どうやら運転手が主犯らしい。

──拉致ってこい? 殺すのが目的じゃない? スタンガンはそれのためか──

 じりじりと近づく男たちにハジメはさらに意識を研ぎ澄ませる。目で威嚇しながら警戒していると、ひとり足りないことに気がついた。

「おねえさん後ろ」

 大破したパトカーに隠れて後ろからスタンガン男が手を伸ばしたところだった。
 夏生の助言で振り向くと、その手首を掴み捻りあげる。
 たまらずスタンガンを落とした男を合気でそばに寄せてみぞおちに一撃を入れる。

「がはぁ」

男は腹を押さえながらのたうち回る、どうみても行動不能となった。

──あと五人──
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