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護衛対象はキケンな男の娘 短編
賞金3億円
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──中村区方面に軽快に走り出すワンボックスカー。運転手は葵で、ハジメは助手席に座っていた。
「どこに行くか分かってるの」
「夏生くんの家でしょ」
「なんで分かるのよ」
「書類持ったままだし、関わるなと言われても警護の任務を外されたわけじゃないでしょ? それに今回の件を担当するにあたり色々と調べたから家の場所も知ってるわよ」
相変わらず察しがいいなとハジメは思った。
──千秋が政治家向けだと言ったけど、たしかにそうかもね──
「いつものスポーツカーはどうしたの」
「今朝から車検。だからサードカーの出番」
「セカンドじゃないの」
「それはオフロード仕様だから、学校に乗ってけないでしょ」
「……ひょっとしてお金持ちなの」
「違うわよ、カーマニア。給料はほとんどクルマに注ぎ込んでいるわ。──話題を変えようとしてるところ悪いんだけど、夏生くんがどうなってるか教えてくれる?」
見透かされてる。やっぱり警察に向いてないのかなと自己嫌悪におちいる。
黙っていると、葵のスマホが鳴る。
ハンズフリーで応答すると、蛍からだった。
「おはようケイ、どうしたの」
「おはよ、あのさぁ、ゆうべの少年Aって江分利組の息子のコトかな」
「……どうしてそう思うの」
「あー、やっぱりそうか。今、そのコの家が大変なことになってるのよ」
「どういうこと?」
「襲撃にあったってネットニュースで流れているの。それで動画サイト投稿者が複数ライブ中継しているんだけど、その中で気になるURLが貼り付けられてるのよね」
「何が気になるの」
「どのライブ中継にも複数回コメントで出てくるんで、用心して開いてみたら闇サイトの殺人請負サイトにとんだわ」
「「え?!」」
「ん? 誰かいるの?」
「ああ、私は今運転中で、隣にハジメがいるわ」
「あ、そうなの。それならちょうどいいか。ハジメ、聴こえてる?」
「うん。で、そのサイトがどうしたの?」
「運転中ならかいつまんで話すわね。要約すると誰でもいいから早い者勝ちで江分利夏生を国内にいるうちに殺したら三億円あげるって依頼がトップにきてるの」
ふたりは絶句した。
殺人予告は狂言だったはず、なのに本当にあった? なぜ?
先に口を開いたのは葵だった。
「ケイ、悪いんだけどそれもっと調べられるかな」
「──関わりたくないなぁ。江分利組という暴力団にも闇サイトにもさ」
「──そう」
通話を切ったあと、しばらく車内は沈黙が支配した。
沈黙を破ったのは──カーナビだった。
ポーン、まもなく目的地に到着します
なにがどうなっているか分からない、だが、何かをしなければならない──それだけはハジメにも分かっていた──。
「どこに行くか分かってるの」
「夏生くんの家でしょ」
「なんで分かるのよ」
「書類持ったままだし、関わるなと言われても警護の任務を外されたわけじゃないでしょ? それに今回の件を担当するにあたり色々と調べたから家の場所も知ってるわよ」
相変わらず察しがいいなとハジメは思った。
──千秋が政治家向けだと言ったけど、たしかにそうかもね──
「いつものスポーツカーはどうしたの」
「今朝から車検。だからサードカーの出番」
「セカンドじゃないの」
「それはオフロード仕様だから、学校に乗ってけないでしょ」
「……ひょっとしてお金持ちなの」
「違うわよ、カーマニア。給料はほとんどクルマに注ぎ込んでいるわ。──話題を変えようとしてるところ悪いんだけど、夏生くんがどうなってるか教えてくれる?」
見透かされてる。やっぱり警察に向いてないのかなと自己嫌悪におちいる。
黙っていると、葵のスマホが鳴る。
ハンズフリーで応答すると、蛍からだった。
「おはようケイ、どうしたの」
「おはよ、あのさぁ、ゆうべの少年Aって江分利組の息子のコトかな」
「……どうしてそう思うの」
「あー、やっぱりそうか。今、そのコの家が大変なことになってるのよ」
「どういうこと?」
「襲撃にあったってネットニュースで流れているの。それで動画サイト投稿者が複数ライブ中継しているんだけど、その中で気になるURLが貼り付けられてるのよね」
「何が気になるの」
「どのライブ中継にも複数回コメントで出てくるんで、用心して開いてみたら闇サイトの殺人請負サイトにとんだわ」
「「え?!」」
「ん? 誰かいるの?」
「ああ、私は今運転中で、隣にハジメがいるわ」
「あ、そうなの。それならちょうどいいか。ハジメ、聴こえてる?」
「うん。で、そのサイトがどうしたの?」
「運転中ならかいつまんで話すわね。要約すると誰でもいいから早い者勝ちで江分利夏生を国内にいるうちに殺したら三億円あげるって依頼がトップにきてるの」
ふたりは絶句した。
殺人予告は狂言だったはず、なのに本当にあった? なぜ?
先に口を開いたのは葵だった。
「ケイ、悪いんだけどそれもっと調べられるかな」
「──関わりたくないなぁ。江分利組という暴力団にも闇サイトにもさ」
「──そう」
通話を切ったあと、しばらく車内は沈黙が支配した。
沈黙を破ったのは──カーナビだった。
ポーン、まもなく目的地に到着します
なにがどうなっているか分からない、だが、何かをしなければならない──それだけはハジメにも分かっていた──。
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