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護衛対象はキケンな男の娘 短編

真相3

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「休む? 学校をか?」

 浅間課長の問いに御器所が頷く。

「昨夜、女装仲間に送別会を開いてもらったんで出かけたら、帰りに偶然小山に会ってしまいバレたと思って落ち込んでる、もう合わせる顔がないと部屋に閉じこもっていると矢島から連絡がありました。だからもう警護は終わりだ小山、お疲れさん」

 お前は用済みだと言わんばかりの言い方にハジメはカチンときた。

「しかしそうなると予定変更となるのか」

鶴舞課長の言葉に、御器所は首を降る。

「休みはするが交換留学には行ってもらいます。だから問題ないでしょう」

「鶴舞課長、予定とはなんです。小山だけでなく私にも隠し事をしてるんですか」

浅間課長は少々腹立ちげに問いかける。

「あ、いや、そうではなくて、組対課こちらのコトだったので言わなかっただけです。──そう睨まないでください、夏生くんが渡米してから話すつもりでしたから、──話しますから極秘でお願いしますよ、小山もだ」

まだ裏があるのかと思いながらハジメは頷いた。

「殺害予告の警護という名目で、組対課我々は江分利組を調べている。犯人特定のため──ではなく、江分利組を潰すためだ」

「え?!」

ハジメが驚く。

「東光西土会に那盧擊会ってのがあるのは知ってるか」

「はい」

「さすがにこっちは知ってたか。東光西土会で最大の武闘派組織だからな、下部組織も多数あるうえ、よその組としょっちゅう小競り合いをしてるし、あろうことか那盧擊会内部でも抗争しているくらいだ」

「警察学校で習いました。昭和の大抗争──暴力団同士の覇権争いで一般人も巻き込まれて何人も死人が出たと」

「そうだ。そして現東光西土会の会長の呼びかけで那盧擊会包囲網を組織し、暴力団同盟対那盧擊会となりようやく弱体化、当時の那盧擊会会長を逮捕して代替わりして手打ちとなり、今の東光西土会の母体ができたわけだ」

鶴舞課長の言葉を御器所が引き継ぐ。

「弱体化したとはいえ武闘派なのは変わらない、小競り合いの通報を受けて現場に行くと、大抵那盧擊会の下っ端だからな。そんな奴等の縄張りシマにだ、あろうことか江分利組の奴等は例のお好み焼き屋を出店しはじめたんだよ」

頭を掻きながら吐き捨てるように言う御器所の言葉には、憎しみがこもっていた。

「江分利組は真っ当な商売だと言い張るが、那盧擊の下っ端には絶好のチャンスだ。下手すれば抗争の火種になりかねん、だからその前に江分利組を潰す。そのために今は下準備中なんだ、秘密裏にな」
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